日本顎関節学会雑誌
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下顎運動および下顎位の変化に伴うサル側頭骨鱗部大脳面の力学的反応
覚道 健治杉村 忠敬木村 明祐白数 力也覚道 幸男
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1991 年 3 巻 2 号 p. 278-287

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抄録

下顎運動に伴って現われる顎関節部下顎窩上壁の力学的反応の特性を解明する目的で, サルに下顎運動を人為的に行わせて, 下顎窩上壁を構成する側頭骨鱗部大脳面部に生ずるひずみを三軸ストレインゲージ法で測定した。
関節結節上壁相当部 (A) においても下顎窩上壁相当部 (B) においても, 全ひずみ量は, 前突位では最大であり, ついで左方移動時, 右方移動時に小さくなり, 咬頭嵌合位では最小であった。
ひずみの性質もA点とB点とでは同じであるが, 前突位, 前突位からの開口運動時, 蝶番軸運動時, 右方移動時および左方移動時には, 下顎窩上壁の内側には伸展ひずみが, 外側には圧縮ひずみがこれに対して後方開閉運動時に外側に伸展ひずみ, 内側に圧緒ひずみが認められた。
主ひずみ量は, A点においてもB点においても前突位において最大であり, ついで左方移動時であった。ところが, 左方移動時以外の運動においては, 前突位からの開口運動時には (A) 点で, 右方移動時および前突位からの開口運動時には (B) 点において, とくに大きな主ひずみが認められた。
以上のことから, 下顎運動の経路および下顎位が変わるにつれて, 顎関節部の下顎窩上壁の骨は, 複雑に変形して力学的に対応していることが分かる。したがって, 関節円板のみならず, 顎関節を構成している骨にも同部に加わる力を緩衝する働きのあることが明らかになった。

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© 一般社団法人日本顎関節学会
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