1991 年 3 巻 2 号 p. 301-309
今回われわれは, 20歳時に某大学病院にて顎関節授動術をうけたが, 再度広範な骨性癒着をきたし全く開口不能であった顎関節強直症の1例を経験した。
症例は38歳の男性で, 小児期より開口障害があり20歳時に某大学病院にて左側顎関節授動術および顎変形に対する形態修正術 (腸骨移植) を受けたが, その後再発し全く開口不能となるも放置, 最近歯痛のため某歯科受診したが歯科治療不可能なため当科を紹介された。エックス線所見で左側下顎枝および側頭骨は完全に連続し内方は頭蓋底まで骨塊が認められ完全な骨性癒着の像を呈していた。治療としては, 術前にCT積畳法により作製した3次元顎模型で術式の検討と中間挿入物としての鋳造純チタンプレートの設計を行い, 手術は気切全麻下に低位顎関節授動術を施行し, 術後は当科作製の開口練習器による機能訓練を行ったところきわめて良好な結果が得られた。