1991 年 3 巻 2 号 p. 310-316
両側性下顎筋突起過形成の2症例を報告する。1例は17歳の男性で, 14歳時に開口障害を自覚した。他の1例は13歳男児で, 10歳時に異常に気づいた。2例とも顎関節症と診断され, 下顎筋突起過形成と正しく診断されるまでの数年間, 理学療法やスプリント療法を受けていた。口内法による筋突起切除術を行い, 良好な結果がえられた。
文献的検索では, 本疾患は現在までに49例が報告されているに過ぎず, しかもその大部分は19歳以下の男性に生じたものであった。本疾患の中には正しく診断されるまでに長期間を要しているものが少なくない。開口障害を有する患者を診察する場合には, 顎関節部のみに目を奪われることなく, 筋突起部にも目を配り, X線検査により筋突起腫大の有無を確認することが本疾患を正しく診断する上で極めて大切なことである。