日本顎関節学会雑誌
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上関節腔関節鏡視下剥離授動術後の顎関節腔二重造影断層所見
小林 馨近藤 寿郎今中 正浩湯浅 雅夫今村 俊彦柏原 広美山本 昭
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1991 年 3 巻 2 号 p. 327-335

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抄録

上関節腔関節鏡視下剥離授動術を施行した9症例, 9関節に, 術後の顎関節腔二重造影検査を行った。術後の臨床症状の効果判定はSandersらに準じた。術前術後の二重造影断層像と造影前の多層断層像から, 骨, 円板, 上関節腔の変化について検索した。
1) 術後の症状から著効 (開口度40mm以上, 疼痛なし) と判定された5関節において, 下顎頭の吸収性変化を3関節に, 関節結節の吸収性変化を3関節に認めた。疼痛の残存した有効および無効4関節には, 吸収性骨変化が見られず増生性変化を2関節に認めた。
2) 著効例の4関節に関節円板の形態変化が見られた。
3) 著効例は全例とも, 上関節腔内線維性癒着は術後に消失していた。しかし, 無効例では線維性癒着の残存を認めた。
4) 著効, 有効例では上関節腔の大きさが縮小化する傾向にあった。
上関節腔関節鏡視下剥離授動術によって, 顎関節部骨構造, 関節円板, 関節腔内病変, 上関節腔の大きさに変化が生じることが明らかとなった。そして, 術後成績が良好な例に吸収性骨変化, 円板形態変化, 線維性癒着の消失, 上関節腔の縮小の生じている傾向にあった。

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