1991 年 3 巻 2 号 p. 336-344
顎関節円板は前方に転位するだけではなく, 内外側にも転位が生じ得ることは, これまでにも述べられ, 画像診断上明らかにされてきた。しかし, 顎関節円板側方転位の発現頻度や, 臨床症状については明らかにされているとはいえない。著者らは, 顎関節部MR検査を施行した症例について, 側方転位の発現頻度および画像所見と臨床所見との対比を行った。対象は, 1990年にMR検査を施行した138症例, 276関節で, このうち190関節では顎関節内障を疑う症状を有していた。
1) 顎関節円板側方転位を, 6症例 (4%), 6関節 (3%) に認めた。
2) 顎関節円板側方転位は, マルチスライス矢状断MR像からでも推定可能であった。
3) 前頭断MR撮像は, 矢状断像の撮像において顎関節円板前方転位の認められない症例に施行すれば良く, 顎関節円板側方転位の検出率に差は見られない。
4) 顎関節円板側方転位6関節に, クリヅクを認めたが, 前方転位例と異なる臨床症状は見られなかった。