日本顎関節学会雑誌
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腎性骨異栄養症患者の両側下顎頭に生じた高度変形症の1例
角南 次郎三好 憲裕
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1991 年 3 巻 2 号 p. 353-358

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抄録

腎性骨異栄養症患者の両側下顎頭に高度な変形を生じた1例を経験したので報告した。患者は44歳, 女性で右側顎関節部疼痛を主訴として当科を受診した。既往歴として慢性腎不全のため本院にて血液透析療法を受けており, 約4年5か月間の透析期間を有していた。現病歴として約3年前より氷を噛んで喉の渇きを癒すことを習慣としていた。全身的には右胸部痛, 右腰部痛, 右膝関節痛があり, 軽度の歩行障害を生じていた。口腔内は下顎が後退し, 閉口時に前歯部の開口を認めた。X線写真では両側下顎頭の著明な吸収像が認められた。臨床検査では腎不全と二次的な副甲状腺機能亢進症の特徴を示した。
治療として氷を噛む習慣をやめさせ, 硬い食物を咀嚼することを禁止して顎関節の安静を保つよう努めさせた。その結果, 約2週間で右側顎関節部の疼痛は消失した。
本症例が両側下顎頭に高度な変形を生じた理由として, 氷を噛じる習慣により顎関節に負荷が加わったことが考えられた。

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