日本顎関節学会雑誌
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咀嚼筋活動の左右差に関する臨床的評価
吉田 実野首 孝祠守光 隆長島 正山本 誠安井 栄喜多 誠一吉備 政仁奥野 善彦
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1992 年 4 巻 1 号 p. 59-72

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抄録

表面筋電図の分析パラメータとして筋活動の左右差を用いた報告があるが, 必ずしもその有効性についての検討はなされていない。そこで, まず臨床的に健康な有歯顎者における左右側側頭筋と咬筋を対象として, 1) 咬合接触の左右差を実験的に付与した場合, 2) 咬合力発揮側を意識的に変化させた場合について, これらが筋活動量の左右差に対してどのように影響を及ぼすかを検討した。その結果, タッピング運動時と最大咬みしめ時の筋活動量における左右差は, 咬合接触が左右均等な時の筋活動に比べて, 咬合接触の左右的な不均衡を付与した場合, 特に側頭筋において咬合接触側が優勢となる傾向が認められた。また, 咬みしめの場合では, 咬合接触の左右不均衡よりも被験者が咬合力を片側に発揮させようとする意識の影響の方が大きいことが示された。次に, 顎関節症患者30名を対象として, タッピング運動時の側頭筋の筋活動量の左右差についそも検討を行った。その結果, 顎関節症患者では, 対照者群よりも大きな左右差を示す者が認められたが, バイトプレーンの装着により左右均等な咬合接触を付与させることによって, 筋活動の左右差が大きく変化する者が認められ, 特に本症例においては対照者群の左右差に近似する傾向を示した。
以上のことから, 顎関節症患者においてタッピング運動時の筋活動の左右差をバイトプレーン装着前後で評価することによって, この左右差が咬合接触の左右的不均衡によるものか, あるいは筋機能の左右差によるものかを知り得る可能性が示唆された。

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