日本顎関節学会雑誌
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10MHz高分解能探触子による顎関節内障の超音波診断
林 孝文伊藤 寿介松下 健小林 富貴子野村 修一
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1995 年 7 巻 2 号 p. 317-327

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抄録

1994年7月から12月までの間に, 顎関節症状を有する60症例に対し, 10MHz高分解能探触子による超音波断層撮影を施行した。
超音波断層画像上, 60症例120関節すべてに, 下顎頭外側極を覆う低エコー域を認めた。
低エコー域の厚みは, 0.2cm未満が33関節, 0.2cmが35関節, 0.3cm以上が52関節であった。
顎関節部のMRIをこのうち32症例64関節に施行し, その所見を比較した。
低エコー域の厚みが0.3cm以上であった30関節中全関節に, 0.2cmであった25関節中14関節に, 0.2cm未満であった9関節中4関節に, それぞれMRI上で関節円板位置異常を認めた。
また, 低エコー域の厚みが0.3cm以上であった27関節中20関節に, 0.2cmであった22関節中6関節に, 0.2cm未満であった9関節中2関節に, それぞれT2強調画像上で高信号域を認めた。
左右とも無症状でMRI上関節円板位置異常を認めないボランティア3名6関節では, 低エコー域の厚みはすべて0.2cm以下であった。
同一関節の超音波断層画像とMRIとの比較の結果, 低エコー域は関節包および外側靱帯に相当し, その厚みが0.3cmを越える場合には, 転位した関節円板と関節腔が含まれている可能性があるものと思われた。
今回の結果より, 10MHz高分解能探触子による超音波断層撮影は, 関節円板位置異常の検出精度はMRIに及ばないことが明らかとなった。しかし, 低エコー域の厚みが0.3cm以上の場合には, MRI上で認められる関節円板転位を示唆している可能性があるものと思われた。

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