日本顎関節学会雑誌
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陳旧性両側顎関節前方脱臼においてDautrey法を併用した1治験例
川上 哲司都築 正史匠原 悦雄高山 賢一森本 佳成杉村 正仁
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1995 年 7 巻 2 号 p. 339-344

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抄録

全身状態が重篤であり, 義歯未装着のため顎関節脱臼の発見が遅れ陳旧性となり, 観血的処置を要した無歯顎の陳旧性両側顎関節前方脱臼の1症例を経験したので報告する。
患者は, 64歳無歯顎の女性で, 他疾患として1991年6月某病院にて頭蓋内動静脈血管奇形の摘出術を受けた。その頃より両側性顎関節脱臼を繰り返し, その都度徒手整復を受けていた。同年12月退院したが翌年1月自宅にて転倒し下肢骨節のため再度入院, その後より義歯は未装着であり, 顎関節脱臼に気づかず放置されていた。同年6月義歯装着したところ不適合であったため近医歯科受診, 顎関節脱臼の精査のため当科紹介来院した。X線所見では, 両側下顎頭が関節結節の前上方へ逸脱しており, 初診時局所麻酔下で徒手整復を施行したが整復困難であった。全身麻酔下でも徒手整復は困難であり, 両側顎関節脱臼観血的整復術 (関節円板および結合組織の除去と外側翼突筋の一部切除) を行い整復可能となった。さらに習慣性脱臼の既往もあり, Dautrey法変法による関節結節形成術を施行した。術後総義歯新製と開口訓練を施行し, 術後16か月で開口度37mm, 体重も術前と比較し10kg増加し, 再脱臼・咀嚼障害および顎関節強直症をきたすことなく, ほぽ良好な顎機能が得られた。

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