日本顎関節学会雑誌
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歯科矯正治療前後における変形性顎関節症患者の下顎頭および顎顔面骨格の形態変化
京面 伺吾小澤 奏野々山 大介小田 義仁末井 良和田口 明谷本 啓二丹根 一夫
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1997 年 9 巻 3 号 p. 541-553

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抄録

本研究では, 変形性顎関節症 (以下OA) 患者に対する歯科矯正治療後の下顎頭と顎顔面骨格の形態変化を明らかにすることを目的とした。
歯科矯正治療開始前に, 磁気共鳴映像法ならびに軸位補正側面X線断層撮影法検査によってOA (Wilkes分類のStage IV) と診断された女性6名 (平均年齢17歳2ヵ月) の10関節を対象とし, 下顎頭および顎顔面骨格の形態変化を比較検討した。その結果, 以下の所見が明らかとなった。
1. 初診時に見られた骨形態異常 (osteophyte; 5関節, flattening; 3関節, erosion; 2関節) のうち, erosionを呈した1関節がosteophyteへ変化していた。
2. Condylar ratioは10関節中8関節で減少を認め, 下顎頭の吸収による下顎枝の短小化が示唆された。
3. 顎顔面形態の比較では, 下顎下縁平面の開大, 下顎骨・オトガイ部の後退が認められたが, いずれもわずかな変化であった。また, 多くの症例で臼歯歯槽部高径のコントロールは良好になされていた。
以上のことから, OA患者に対する歯科矯正治療中においても, 下顎頭の吸収が進行する場合があることが示された。したがって, 歯科矯正治療にあたっては, これに起因する顎顔面骨格形態の変化に十分配慮した治療を行う必要のあることが強く示唆された。

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