岩石鉱物鉱床学会誌
Online ISSN : 1883-0765
Print ISSN : 0021-4825
ISSN-L : 0021-4825
H2O-CO2混合流体中における方解石-石英の組合せの安定領域
正路 徹也
著者情報
ジャーナル フリー

1976 年 71 巻 12 号 p. 379-388

詳細
抄録

次の2つの反応,
(1) CaCO3+SiO2=CaSiO3+CO2
(2) Ca6Si6O17(OH)2=6CaSiO3+H2O
の平衡線の方程式をもとに, H2O-CO2混合流体中における次の反応
(3) 6CaCO3+6SiO2+H2O=Ca6Si6O17(OH)2+6CO2
の平衡線の方程式を計算した。
反応(2)の起きる温度としては約200°C (Gustafson, 1974)と約400°C(Buckner et al., 1960)という2つの報告がある。しかし, H2O-CO2混合流体中における方解石一石英の組合せの安定領域はそれらに無関係に決まる。方解石-石英の組合せが安定な混合流体中のCO2の量は, 400°Cで0.6 mole%以上, 300°Cで0.03 mole%以上である。これよりCO2の少い流体中では珪灰石またはゾノトラ石が安定となる。黄銅鉱や閃亜鉛鉱などの鉱石鉱物を伴うスカルン中に珪灰石やゾノトラ石が伴われることがほとんどないということは,上記の値が鉱石鉱物を伴うスカルンを生成する流体中のCO2量の下限を示しているものと考えられる。

著者関連情報
© 日本鉱物科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top