本稿では,継続的な授業改善に繋げることを目的とした韓国人現職日本語教師研修で行った2回の模擬授業の変化を量・質両面から分析し,現職教師研修の意義について検討した。量的分析では,授業改善のための反省材料を得るために開発されたS-T分析を行い,質的分析では学習者の自己表現に焦点を当て検討した。その結果,第1回の模擬授業では,過去の実践に依存する傾向が見られる等の原因により,受講教師の潜在的な力量が十分に発揮されていない状況であった。しかし,フィードバック時の模擬授業のビデオ視聴の他,「理想」を追求させることにより,受講教師の省察を促すことができ,第2回の模擬授業では大きく内容が変化した。実際の現場の状況が様々であることを考えると,単純に変化した結果を普遍化して是とすることはできない。しかし,模擬授業を中心とした主体的な授業改善の経験は,所属校での継続的な授業改善に貢献するものであると考える。