抄録
本稿は,スポーツ留学生を対象としたライフストーリー研究である。スポーツ留学生は,学習への意欲も低く,学習言語としての日本語も身についていないことが課題とされている。また,大学スポーツ界全体で,アスリート学生のセカンドキャリア支援とどう向き合うかが大きな課題となっている。そこで,本研究では,調査協力者2名のライフストーリーから,セカンドキャリア支援と結びつけた日本語教育の可能性を検討する。調査協力者は韓国からのスポーツ留学生でそれぞれサッカー部,柔道部に所属しているが,セカンドキャリア形成へ向けて大学院進学の準備をしている。彼らの語りから,セカンドキャリアへ向けたひとりひとりの歩みのなかに日本語の学びを作り出していくことの重要性を指摘する。さらにそのための日本語教師の役割として,スポーツとは距離をおいてものごとを考える契機を与える「第三の他者」があることを主張する。