2022 年 20 巻 p. 248-266
日本の外国人住民の数は年々増加している。しかし,現在の日本が多文化共生社会であるとは言い難い。大学で日本語教師養成を担当している筆者のゼミでは多文化共生と日本語教育をテーマにしており,多文化共生の文脈において,他人事を自分事として捉えられるようになることを目指している。そこで多文化共生の入口となるような「複言語・複文化脱出ゲーム」の制作と小中学校での実践を試みた。ゼミ生へのインタビュー調査の結果から,脱出ゲーム開発はアクティブラーニングやサービスラーニングの要素も含まれており,学生の主体的な学びを促すものとなっていた。しかし,理論の部分の学習が足りず,理論と実践とのつながりが明確ではなかったことが反省点となった。また,脱出ゲームに参加した小中学生に対するアンケート調査の結果からは,中国語・中国文化を他者と協働して楽しみながら学んでいたことがわかった。複言語・複文化脱出ゲームが他の言語や文化に対する理解を促し関心を持たせるツール,異文化理解の入口となり得ると言えるだろう。