2023 年 21 巻 p. 241-261
本稿は,言語教育が実現を目指すべき学習者の「自律」について,再定義することを試みる。まず,言語教育研究における「自律」の扱われ方の問題点を指摘し,西洋近代思想史における人間観の変遷をふまえて学習者の「自律」とは何かを考える。そして,言語学習者の「自律」の捉え方についての筆者の見解として,「人権尊重」という観点から政治的「自律」を改めて定義し,ナラティブ・セラピーに基づく言語学習者の「自律」を実現する教育実践の可能性について論じる。さらに,筆者の行った学習者が自身にとっての日本語学習の必然性を考える自分史執筆及び対話活動の実践における事例を基に,その定義の妥当性を確認し,言語学習者の「自律」を実現する教育実践のあるべき方向性を示すことを目的とする。