抄録
経鼻内視鏡は,通常径の経口内視鏡検査よりも被検者の苦痛が少なく,検査中の循環動態や酸素飽和度が安定しており,検査の受容度と安全性を重視する胃がん検診に相応しいものであろう.しかし,挿入時の鼻腔痛や,画質と操作性が通常径内視鏡より劣るという欠点も有しており,診断精度の評価もまだ十分とは言えない.そのため,各施設の実情に即した適切なインフォームド・コンセントと適応の決定が重要であり,決め細やかな前処置と熟達した内視鏡専門医による時間をかけた丹念な観察が求められる.
今後,経鼻内視鏡検査が内視鏡検診のという枠の中で定着するには,その診断精度が過去の内視鏡検診成績に遜色のないものであることを証明する必要がある.また,対策型検診として広く展開するには,多くの内視鏡専門医の養成と施設間格差の減少,厳格な精度管理が必須である.
前処置の煩雑さやその他方法論の多様性の解決については,ガイドラインの作成が待たれるところであり,画質や操作性の問題点は各メーカーの今後の開発努力に期待する.