日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
小腸炎症性疾患の最新の診断と治療
平田 一郎
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2011 年 53 巻 11 号 p. 3494-3509

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抄録
近年,カプセル内視鏡(CE),バルーン内視鏡(BE),CT-enterography,MRIなど診断機器の進歩により,小腸炎症性疾患の診断と治療も今までにない前進が見られるようになった.
CEは,小腸炎症性疾患の重症度(ルイス・スコアなど),治療への反応性や治療の妥当性などを評価することによりその治療方針の決定に有用である.CEはNSAID起因性小腸粘膜傷害の評価のみならず,欧米では小腸クローン病に対する診断においても,その有用性が報告されている.すなわち,小腸クローン病における潰瘍性病変の検出率は,CEの方が小腸X線造影検査や他の検査に比して高いと言われている.但し,本邦ではクローン病に対してCEは承認されていない.
BEは,主として小腸疾患の確定診断や治療目的(止血,バルーン拡張術など)に用いられるが,OGIBの顕性活動性出血例や小腸クローン病のmucosal healingの診断にも有用である.さらに,クローン病の小腸狭窄に対する内視鏡的バルーン拡張術も手術回避に一定の効果をあげている.
ただし,狭窄例や瘻孔形成例の診断に対するCEやBEの有用性は低く,むしろ小腸X線造影検査の方が優れていると思われる.CT-enterographyやMRIはこれを補完し,かつ腸壁の炎症評価にも寄与すると考えられるが検査法の一層の改良が必要である.
本稿ではこれら検査法の有用性と限界について文献レビューを中心に現状やトピックスを紹介し,あわせて症例の画像を提示する.
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© 2011 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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