2011 年 53 巻 8 号 p. 1991-2000
C.difficile腸炎(C.difficile colitis,以下CDC)の内視鏡像としては偽膜形成がよく知られているが,実際のCDCの内視鏡像は多彩である.偽膜のみにとらわれるとCDCの診断を誤る可能性がある.今回われわれはCDC 410例中,内視鏡像を検討できた21例において,偽膜群5例,アフタ群9例,その他7例を認めた.偽膜を伴わないアフタ様びらん(以下アフタ)のみを呈するCDCの報告は少なく,今回その意義について検討した.
アフタ群は偽膜群に比較して臨床症状が軽度で,炎症所見も軽かった.すなわちアフタ群はCDCのなかの軽症例であると考えられた.病歴からCDCの可能性がある場合,内視鏡像がアフタのみであったとしても嫌気性培養やC.difficileのトキシンも検査することが,その後の診断,治療に有用であると考えられた.