抄録
症例は35歳の女性.自然分娩にて4,324gの女児を出産した.分娩時にはクリステレル圧出法による腹壁の圧迫が行われた.出産翌日より盲腸から上行結腸の巨大結腸症をきたし,拡張した腸管には全周性の粘膜障害を認めたため,内視鏡を用いて経肛門的にイレウス管を盲腸に留置した.減圧術は奏功し,第12病日の内視鏡検査では粘膜障害はほとんど消失していた.患者の盲腸は腹部中央部へと遊離した移動盲腸であり,盲腸が腹壁と子宮底との間に挟まれた状態でクリステレル圧出法による圧力が加えられ,巨大結腸症が発症したと推察された.移動盲腸とクリステレル圧出法による過度の外圧は,母体側の腸管障害のリスクになると考えられた.