日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
NASHの腹腔鏡像
田中 直英森山 光彦
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2012 年 54 巻 4 号 p. 1435-1442

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抄録

現在,肝硬変・肝細胞癌の原因として,C型肝炎,B型肝炎の他に,非アルコール性脂肪性肝炎(Non Alcoholic Steato-Hepatitis:NASH)の存在がクローズアップされてきている.NASHの診断には,アルコール性肝障害を引き起こすほどのアルコールの摂取のないこと,さらに肝生検で,肝細胞の大滴性脂肪化,炎症性細胞浸潤,肝細胞の風船様腫大,マロリー小体,アルコール性肝障害様の線維化などの病理的所見がそろうことが重要であるとされている.NASHは,脂肪肝を基盤にして,フリーラジカルや各種炎症性サイトカインなどが加わり,上記の病理的所見を生じ,病態として,肝硬変,さらに肝細胞癌へと進展していく.そのため,NASHの腹腔鏡像は,その病期において異なる様相を呈する.
NASHの初期の肝表面像は,表面平滑で,辺縁の鈍化,一部陥凹を認め,白色紋理がみられる.やや進展すると陥凹が多く認められ,また細かい区域化が生じ,進展するものと思われる.初期においては,リンパ小水疱や赤色紋理などは,みられない.しかし炎症が強くなると赤色紋理もみられるようになる.肝硬変に進展すると2~3mm程度の小結節を呈するようになり,一部に黄色斑が観察されることもある.また進展とともに,徐々にリンパ小水疱等を生じるようになる.しかし,溝状陥凹などの他の疾患でみられるような所見は,みられない.
NASHは,肝表面像をみることにより,進展の程度を含め,より的確に診断ができるものと思われる.

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© 2012 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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