【背景】早期胃癌に対する内視鏡治療の問題点として異時性多発癌の発生がある.今回,長期の経過観察をもとに,その発生リスクが永続的であるか否かについて検討した.
【方法】早期胃癌に対して内視鏡治療(EMR,ESD)を受けた234例を遡及的に検討した.経過観察期間は3.0-19.6年(中央値5.0年)で,40例に対し10年以上の経過観察を行った.また内視鏡治療後に発見された異時性病変が,治療前の内視鏡写真で認識可能であるか検討した.
【結果】30例(12.8%)に36個の異時性多発癌が認められた.治療から発見までの中央値は3.2年,最長9.7年であった.36個中8個(22.2%)は,内視鏡治療前の記録で存在が確認できた.異時性多発癌の累積発生率は10年を超えると上昇がみられなかった.
【結論】内視鏡治療後に残された胃粘膜は,異時性多発癌が好発する環境にあるとされてきたが,それは単に同時性多発胃癌が潜在しただけであるかもしれない.異時性多発癌の発生リスクは10年を超えて永続するものではないと予想される.
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