抄録
直腸粘膜脱症候群(mucosal prolapsed syndrome,以下MPS)は,慢性の便秘や排便時の過度の「いきみ」などの機械的な刺激が原因で直腸の粘膜脱を起こす疾患である.治療法は確立していないが,排便習慣を正常化することが原則であり,病変自体を切除する外科的療法も有効なことが多いが,内視鏡的粘膜切除が有効であったとの報告はない.今回われわれは,隆起型MPSに対し,病変の一括切除と線維化を伴う瘢痕化の形成目的に内視鏡的粘膜下層剥離術(以下ESD)を行い臨床症状の改善を認めた2症例を経験した.隆起型MPSの治療法としてESDは,保存的に改善しない症例において低侵襲で有効な治療になりうると考えられた.