抄録
症例は71歳男性,黒色便と意識障害,ショック状態にて搬送された.内視鏡検査を行い,十二指腸球部前面に潰瘍病変と露出血管を認めた.クリッピングによる止血術を施行直後に視野が確保できないほどの噴出性出血となり,ショックを呈した.そこで血圧維持のため大動脈閉塞バルーン(intra-aortic balloon occlusion,IABO)挿入法を施行した.上半身の血圧維持と出血部の血流遮断効果にて,内視鏡視野が良好となったため止血術を再開,完遂させることに成功した.その後,出血部は膵癌による十二指腸浸潤と判明した.IABO挿入法が出血性ショックを伴う内視鏡的止血術の施行に際し,血圧の維持と同時に内視鏡的止血術の補助として有効であった症例を経験した.