抄録
症例は30代男性,Crohn病にて通院中であった.生物学的製剤を用いた治療で臨床的寛解状態を維持しており,粘膜治癒評価目的に経肛門的ダブルバルーン内視鏡検査を施行した.骨盤内回腸に瘢痕狭窄を認め,観察範囲内の粘膜治癒が得られていると診断した.口側腸管評価目的の逆行性小腸二重造影を施行中に,腸管外への造影剤漏出と,広範な肝内門脈ガスの出現を認めた.緊急手術により腸管穿孔に対して回腸部分切除を施行した.門脈ガス血症は特殊な治療を要さず自然経過で改善した.寛解と考えていたCrohn病の小腸二重造影時に穿孔を来たし,門脈ガス血症を併発した稀な症例と考え報告する.