症例は肺腺癌と診断された68歳男性.転移検索のための精査で膵頭部と膵体部に腫瘍を認めたため,膵管癌,肺癌膵転移を考えERCP,EUSを施行した.しかし診断はつかず,EUS-FNAを施行した.組織像でadenocarcinomaが同定されたが,原発巣,転移巣の診断はできず,thyroid transcription factor-1(TTF-1)による免疫染色を追加した.TTF-1が肺腺癌で陽性,各膵腫瘍でいずれも陰性となり,原発性肺癌,同時性多発浸潤性膵管癌の診断に至った.膵全摘術,2期的胸腔鏡補助下右上葉切除術を施行し,切除標本でも同様の診断となった.肺癌と膵癌の重複癌を術前に診断しえた貴重な症例であり,さらに膵癌が多発している稀な症例であった.