抄録
58歳男性.心房細動に対する抗血栓療法中に血便を伴う出血性ショックにて救急搬送された.腹部造影CT検査にて空腸からの出血が疑われ,緊急に経口小腸内視鏡検査を施行したところ上部空腸に2cm大の2型腫瘍を認めた.生検にて中~高分化型管状腺癌と診断され,小腸部分切除術及び周囲リンパ節郭清が施行された.術後3年の経過で再発を認めていない.小腸癌は稀な腫瘍であり,比較的早期に診断することは容易ではない.本症例は,腫瘍径が小さいにも関わらず,抗血栓療法中に出血性ショックをきたしたことが契機となり,小腸内視鏡検査により診断が可能であった.