抄録
大腸ESDの安全性と根治性は病変の大きさや部位より,むしろ粘膜下層の線維化の質と程度に規定される.特に高度の線維化を伴った病変のESDは難易度が高く,その見極めと安全な剥離手技が要求される.大腸ESDの自験例778病変のうち線維化を伴った例は193病変で,これらは線維化の要因から,生検やEMR後の遺残再発等の非癌性線維化(Fibrosis due to benign causes:Type B 132病変)と癌のSM浸潤に伴った癌性線維化(Fibrosis due to cancer invasion in the submucosal layer:Type C 32病変)に分類され,線維化の程度はgrade 1(軽度),grade 2(中等度),grade 3(高度)と細分類された.
一括切除率は非線維化例では571/585病変(97.6%),線維化例では163/193(84.7%)と有意に低く,程度別ではType B-1:66/69(95.7%),B-2:29/32(90.6%),B-318/31(58.1%),Type C-1:33/33(100%),C-2:7/8(87.5%),C-3:10/20(50.0%)で,B-3,C-3で有意に低下し,穿孔は2病変(0.26%)でType Bであった.撤退例はType A:1,B-3:2,C-35でC-3の5例は全例SM massive癌であり撤退の選択は許容された.
Type B-3の一括切除18病変の可能根拠は筋層上縁に僅かな透過性部分が同定されたこと,線維化両端の粘膜下層から剥離線が想定されたこと,筋層側にクリップを留置して損傷を予防して剥離を完遂し得た(3例)こと,であった.すなわち軽度から中等度の線維化例では剥離線の設定は比較的容易であるが,高度線例では困難なことが多く,如何に剥離線を見出し想定していくかが成否を分ける.また,剥離では先端型,鋏型デバイスを適時併用する工夫が必要となる.一方,剥離不能なESD限界例も存在し,同例ではLECS等への方針転換が安全性と根治性から重要となる.