2015 年 57 巻 6 号 p. 1361-1366
症例は63歳男性.黒色吐物を主訴に当院を受診した.胸部単純レントゲンにて左横隔膜が胸腔側へ挙上し,腹部CTでは腹腔内で著明に拡張した胃が腸間膜軸性に捻転していた.胃軸捻転症と診断し上部消化管内視鏡による整復術を試みた.上部消化管内視鏡では有効長が足りず整復困難であったが,バルーン内視鏡に変更すると十二指腸水平部まで挿入可能となり先端バルーンを膨らますことで腸管へスコープを固定し整復が可能となった.胃軸捻転を内視鏡的に整復できない場合には外科的に整復しなければならないが,本症例のようにバルーン内視鏡を用いることによって外科的整復を回避できる可能性があり貴重な症例と考え報告する.