2015 年 57 巻 8 号 p. 1581-1590
内視鏡機器や診断学の進歩により,頭頸部表在癌が数多く発見されるようになってきた.頭頸部癌取り扱い規約において,表在癌は「癌細胞の進展が上皮下にとどまるもの」と定義され,大森らにより開発された彎曲型喉頭鏡は,喉頭展開を行う事により表在癌の内視鏡治療を可能にした.肉眼分類と深達度を検討すると,平坦病変と隆起病変を多く認め,type 0-Iのような隆起が目立つ病変やtype 0-IIa+IIcのような混合型に,上皮下浸潤が見られた.咽喉頭癌では,病変の深達度や大きさとリンパ節転移に関するエビデンスは充分ではないが,現時点では,絶対適応 (1)術前検査でリンパ節転移を認めない.(2)内視鏡的に壁深達度が上皮内癌,相対適応 (1)術前検査でリンパ節転移を認めない.(2)内視鏡的に壁深達度が上皮下層浸潤癌,と考えられる.長期成績の結果からは,内視鏡治療を中心とした局所治療によって,根治の可能性が示唆されている.しかし,深達度診断やリンパ節転移に関するエビデンス,長期成績など,多くの検証が今後必要である.