日本消化器内視鏡学会雑誌
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57 巻, 8 号
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総説
  • 野口 哲也, 及川 智之, 宮崎 武文, 浅田 行紀, 松浦 一登
    2015 年 57 巻 8 号 p. 1581-1590
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/29
    ジャーナル フリー
    内視鏡機器や診断学の進歩により,頭頸部表在癌が数多く発見されるようになってきた.頭頸部癌取り扱い規約において,表在癌は「癌細胞の進展が上皮下にとどまるもの」と定義され,大森らにより開発された彎曲型喉頭鏡は,喉頭展開を行う事により表在癌の内視鏡治療を可能にした.肉眼分類と深達度を検討すると,平坦病変と隆起病変を多く認め,type 0-Iのような隆起が目立つ病変やtype 0-IIa+IIcのような混合型に,上皮下浸潤が見られた.咽喉頭癌では,病変の深達度や大きさとリンパ節転移に関するエビデンスは充分ではないが,現時点では,絶対適応 (1)術前検査でリンパ節転移を認めない.(2)内視鏡的に壁深達度が上皮内癌,相対適応 (1)術前検査でリンパ節転移を認めない.(2)内視鏡的に壁深達度が上皮下層浸潤癌,と考えられる.長期成績の結果からは,内視鏡治療を中心とした局所治療によって,根治の可能性が示唆されている.しかし,深達度診断やリンパ節転移に関するエビデンス,長期成績など,多くの検証が今後必要である.
原著
  • 淺井 哲, 藤本 直己, 中尾 栄祐, 橋本 斯盧恵, 一ノ名 巧, 赤峰 瑛介, 田上 光治郎, 小川 淳宏
    2015 年 57 巻 8 号 p. 1591-1596
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/29
    ジャーナル フリー
    背景・目的:Endoscopic Papillary Balloon Dilation(EPBD)は簡便で出血が少ないがEndoscopic Sphincterotomy(EST)に比し結石除去効率が悪く術後膵炎のリスクが高いとされている.今回胆管結石に対する10mm径バルーンによる5分間拡張(EPBD10mm/5min)の治療成績をESTと比較検討した.
    方法:10mm以下の胆管結石を2013年10月から2014年10月までにEPBD10mm/5minにて治療した連続49症例を対象とし,2010年5月から2013年10月までのEST連続82症例と比較した.
    結果:年齢はEPBD群で75.7歳,EST群で69.7歳と有意差を認めた.男女比,結石径,結石個数は有意差を認めなかった.初回完全結石除去率は両群とも100%で,手技時間はEPBD群30.2分,EST群31.9分と有意差を認めなかった.術後膵炎はEPBD群2.0%,EST群6.1%,後出血はEPBD群0%,EST群2.4%と有意差は認めなかった.
    結論:EPBD10mm/5minはESTと比較しても有効かつ安全である可能性が示唆され,簡便性や出血のリスク,長期偶発症低減の可能性を考えれば10mm以下の結石治療の有力候補となる.無作為比較試験にて長期成績を含め明らかにする必要がある.
症例
  • 星野 崇, 鈴木 悠平, 長沼 篤, 岡野 祐大, 吉田 はるか, 椎名 啓介, 林 絵理, 工藤 智洋, 猿谷 真也, 石原 弘
    2015 年 57 巻 8 号 p. 1597-1602
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/29
    ジャーナル フリー
    39歳,男性.2年前にアルコール性肝硬変・肝不全にて前医入院中,F3,RC陽性の食道静脈瘤から出血をきたしEVLにて止血した.その後,2年の間に9回吐血を繰り返し,その都度EVLや1%ポリドカノール局注等の内視鏡治療を行った.再吐血をきたし当院へ搬送となり,露出血管を伴う食道潰瘍に対しクリッピング等による止血術を試みたが止血困難であった.血管造影にて左胃動脈分枝より血管外漏出の所見を認め,TAEを施行し止血が得られた.食道静脈瘤治療後に発生し,TAEにて止血が得られた出血性食道潰瘍を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 後藤 善則, 又野 豊, 吉光 雅志, 高橋 直樹
    2015 年 57 巻 8 号 p. 1603-1608
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は66歳女性.29歳時にバセドウ病と診断されたが通院は中断していた.浮腫,倦怠感,黄疸を認め受診した.血液検査で汎血球減少と大球性貧血を認めビタミンB12低値から悪性貧血と診断した.原因として,ガストリン高値,抗内因子抗体陽性,上部消化管内視鏡検査で胃底腺領域優位の萎縮性変化を認めたことから自己免疫性胃炎を考えた.ビタミンB12を補充し症状は速やかに軽快した.自己免疫性甲状腺疾患に,長期経過して悪性貧血を伴った多腺性自己免疫症候群3B型と思われた.自己免疫性胃炎は胃癌やカルチノイドの合併頻度が高いことから,自己免疫性甲状腺疾患の患者には上部消化管内視鏡検査を勧め,A型胃炎の有無に注意した観察が望ましい.
  • 三長 孝輔, 山下 幸孝, 岡 智子, 松本 久和, 赤松 拓司, 瀬田 剛史, 浦井 俊二, 上野山 義人, 赤松 裕子, 小野 一雄
    2015 年 57 巻 8 号 p. 1609-1615
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,男性.近医での上部消化管内視鏡検査にて胃体上部前壁に腫瘤性病変を認めたため精査目的に当院を紹介となった.胃腫瘤性病変は生検にて低分化型腺癌と診断されたが,腹部CT検査で縦隔,腹部傍大動脈領域,骨盤内に極めて広範囲のリンパ節腫大が認められたため,診断目的に複数の腹腔内リンパ節に対してEUS-FNAを施行した.組織所見では上皮系細胞は認めず,免疫組織化学染色,フローサイトメトリーの結果よりマントル細胞リンパ腫(MCL)と診断した.MCL(Stage IVA)が予後規定疾患と考えられたため血液内科での化学療法を先行した.胃癌とMCLの合併はまれであるが,腹腔内リンパ節へのEUS-FNAが診断及び治療方針決定に有用であった症例を経験したので報告する.
  • 成瀬 宏仁, 大和 弘明, 山本 義也, 畑中 一映, 山本 桂子, 堀本 啓大, 松田 可奈, 山梨 香菜, 工藤 和洋, 下山 則彦
    2015 年 57 巻 8 号 p. 1616-1622
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は72歳女性.糖尿病悪化のため,腹部造影CT施行し,膵体部に直径20mmの低吸収域を認めた.ERCPにて,膵管は体尾部移行部で途絶していた.EUS-FNA(Endoscopic ultrasound-guided fine-needle aspiration)を,胃体中部後壁より膵体部の低エコー腫瘤に対し施行した.組織診断は腺癌であり,膵癌と診断した.化学療法を施行したが,335病日に死亡し家族の同意を得て剖検を施行した.膵体部と胃体中部後壁が癒着しており,癒着部の胃壁内に直径16×15mmの平低な粘膜下病変を認めた.膵腫瘍と胃腫瘍は繋がった肉眼像で,組織学的には中~高分化型管状腺癌の同一組織であった.膵癌に対するEUS-FNA後播種の報告は少ない.EUS-FNAの穿刺ルートを介して浸潤したことが確認されたので報告する.
  • 井上 雅文, 木村 拓也, 平川 富夫, 加藤 恭郎, 前 孝仁, 瓜生 恭章, 杉田 博二, 浅野 耕吉, 原田 博雅
    2015 年 57 巻 8 号 p. 1623-1629
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は82歳の男性,IPMNにて膵頭十二指腸切除術(PD-2A-2,D1)を施行後3カ月目に逆行性胆管炎によるDICを発症.保存的加療後の食事再開にて血清アミラーゼ値上昇を認め,精査により残膵の主膵管拡張と,これに連続する空腸壁内液貯留を認めた.膵管空腸吻合部閉塞と診断し,シングルバルーン内視鏡を挿入して観察したが吻合孔を確認できなかった.粘膜隆起部を穿刺・造影して主膵管を同定した.空腸粘膜を切開し,膵管空腸吻合部を切開・バルーン拡張した後に膵管ステントを留置した.食事再開による血清アミラーゼ値上昇は認めず軽快退院した.消化管再建後の症例では,バルーン内視鏡を用いたERCPが吻合部への到達を可能とし,膵管空腸吻合部狭窄には切開術及び拡張術が有用であった.
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手技の解説
  • 後藤 修, 竹内 裕也, 北川 雄光, 矢作 直久
    2015 年 57 巻 8 号 p. 1632-1640
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/29
    ジャーナル フリー
    内視鏡と腹腔鏡を用いて胃を開放させずに任意の部位を過不足ない範囲で全層切除する非穿孔式内視鏡的胃壁内反切除術(non-exposed endoscopic wall-inversion surgery:NEWS)について概説した.腹腔内汚染や医原性腹膜播種の可能性を理論的に払拭できる本法は,経口的に回収できる腔内もしくは壁内発育型胃粘膜下腫瘍や,リンパ節転移陰性が期待できるが内視鏡治療が技術的に困難な早期胃癌が良い適応となる.さらに,本術式をセンチネルリンパ節ナビゲーション手術と融合させることで,リンパ節転移の可能性が否定できない早期胃癌に対してもより低侵襲な胃機能温存手術を提供することができる.正確な漿膜マーキング,腹腔鏡下漿膜筋層切開・縫合,内反した病変周囲の粘膜切開,縫合糸近傍の粘膜下層切開など,技術的にも新規性に富む過程が満載されている.解決すべき課題は多いが,本法は内視鏡を用いたより理想的な胃癌低侵襲手術の一つとして期待が寄せられている.
  • 岩切 勝彦, 川見 典之, 野村 務, 星原 芳雄
    2015 年 57 巻 8 号 p. 1641-1647
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/29
    ジャーナル フリー
    本邦における逆流性食道炎(RE)の内視鏡診断は色調変化型を含めた改訂Los Angeles(LA)分類が広く利用されている.食道粘膜傷害の診断は白苔がある場合や発赤が鮮明で境界が明瞭な場合は容易であるが,発赤だけの場合は深吸気時に送気を行いながら下部食道を十分に伸展し観察することが大切である.粘膜傷害の読影医間の診断の一意率は高い.しかし,色調変化型(発赤,白濁)の読影医間の診断一致率は低く,その原因として色調変化の評価方法,定義が統一されていないことがあげられる.白濁の定義としては十分に下部食道を伸展した状態において柵状血管が透見できない状態であるが,その範囲に関しては基準がなく,今後の検討課題である.
    REは食道内の過剰な酸暴露により発症することから,食道内酸暴露時間を正常にすることにより粘膜傷害は治癒する.REの治療は標準量のプロトンポンプ阻害薬(PPI)の内服により軽症REの90-95%,重症REの80-85%が治癒する.標準量のPPIにより十分な効果が得られない場合の対応として,PPIの変更,投与方法(夕食前摂取)の変更が有効である場合がある.
ガイドライン
  • 藤城 光弘, 井口 幹崇, 角嶋 直美, 加藤 元彦, 坂田 資尚, 布袋屋 修, 片岡 幹統, 島岡 俊治, 矢作 直久, 藤本 一眞
    2015 年 57 巻 8 号 p. 1648-1666
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/29
    ジャーナル フリー
    日本消化器内視鏡学会は,エビデンスに基づく内視鏡診療ガイドライン作成作業の一環として,非静脈瘤性上部消化管出血における内視鏡診療ガイドラインを作成した.非静脈瘤性上部消化管出血の主因は出血性胃十二指腸潰瘍であり,ヘリコバクターピロリ菌に起因するものが低下傾向にある一方で,超高齢社会の到来とともに,アスピリンなどによる薬剤に起因するものが増加している.非静脈瘤性上部消化管出血に対する止血術の第一選択は内視鏡的止血術であり,様々な方法が考案されている.内視鏡止血術前後には,患者の重症度評価に基づいた的確な管理でバイタルサインを安定化するとともに,酸分泌抑制剤の投与を行うことが推奨されている.本ガイドラインでは,上部消化管出血の評価と初期治療,上部消化管出血を消化性潰瘍とそれ以外に大別し,それぞれについて内視鏡的止血法の選択,内視鏡的止血後の管理を記載した.文献的裏付けがあるものについてはステートメントを作成し,エビデンスレベルと推奨度を記載した.しかし,この分野においては,エビデンスレベルが低く,推奨度も低いものが多いのが,現状である.
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最新文献紹介
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