2015 年 57 巻 9 号 p. 2364-2367
症例は87歳男性.腹部膨満感を主訴に大腸内視鏡検査が施行された.S状結腸の通過に難渋し,一時スコープが固定され動かなくなった.検査後のCTで鼠径ヘルニアよりS状結腸が脱出していることが判明した.同様の症例でスコープ抜去困難例・穿孔例の報告もあり,高齢男性における大腸内視鏡検査の合併症のひとつとして,注意を要する.検査前に鼠径ヘルニアの有無を確認しておくこと,検査中に体表から鼠径部を観察すること,透視でスコープと恥骨との位置関係を確認することが合併症の予防に重要である.また,スコープが固定され動かなくなった際には,用手圧迫・牽引が有用である.