2016 年 58 巻 10 号 p. 2211-2221
術後再建腸管(Billroth Ⅰ法を除く)を有する胆膵疾患における内視鏡的アプローチは,従来の内視鏡では困難とされており,経皮的治療や外科的治療など侵襲的な治療を選択せざるを得なかった.しかしながら,バルーン内視鏡の登場により術後再建腸管を有する胆膵疾患に対する内視鏡的アプローチが一気に現実的なものとなり,より安全で確実に処置を完遂できるようになってきた.本稿では,特にshort typeのダブルバルーン内視鏡を用いたERCPを中心に,盲端部への深部挿入およびERCP関連手技の実際とコツについて言及したい.
術後再建腸管を有する胆膵疾患に対する内視鏡的アプローチは,Y吻合部からの距離,屈曲などの特殊な解剖学的特性に加えて術後癒着のため,従来の内視鏡では盲端部への挿入,乳頭や胆管・膵管空腸吻合部への到達が困難であり 1),一般的に内視鏡的アプローチは非現実的で,これまで経皮的治療や外科的治療が選択されてきた.しかし経皮的治療は,易出血性症例や腹水貯留例など禁忌症例も多く,さらに膵疾患に対しては適応外であり,適応疾患に制限がある.また外科的治療は,かなり侵襲的である.そこで,小腸疾患の診断・治療目的に開発されたバルーン式内視鏡(balloon assisted endoscopy;BAE)を応用することで,術後再建腸管を有する胆膵疾患に対する内視鏡的アプローチが一気に現実的なものとなり,最近では数多くの報告もなされるようになってきた 2)~24).本稿では,特にshort typeのダブルバルーン内視鏡(double balloon enteroscope;DBE)を用いたERCP(DB-ERCP)について概説する.
BAEは,バルーンで腸管を把持し,腸管を短縮しながら深部まで挿入していく新しい挿入概念に基づいた内視鏡である 25),26).現在,日本で市販されているBAEは,FUJIFILM社製のDBEとOLYMPUS社製のシングルバルーン内視鏡(single balloon enteroscope;SBE)がある.
DBEに関しては,鉗子口径が2.2mmの観察用スコープと鉗子口径が2.8mmの処置用スコープがある.観察用スコープは有効長が200cmのstandard type DBEしかないが,処置用スコープには有効長が200cmのstandard type DBE(EN-450T5・EN-580T)と有効長が152cmのshort type DBE(EI-530B・EC-450BI5)がある.胆膵内視鏡治療を行う際,short type DBEを用いるメリットは,既存のデバイスの大部分が使用可能なことである.胆膵内視鏡治療を完遂するには,使用デバイスはとても重要な要素を占めており,short type DBEを使用することで従来のERCPと同等の処置が可能となってきたが 6)~8),鉗子口径の制限が問題点として挙げられる.しかし,2016年3月にFUJIFILM社より新しく開発されたshort type DBE(有効長:155cm,鉗子口径:3.2mm;EI-580BT)が発売となり,鉗子口径の制限もある程度解消され,ほぼすべてのデバイスの使用が可能となり,ERCP関連手技をより安全に完遂することが可能となってきた.このnew short type DBE(EI-580BT)は,鉗子口径が3.2mmに拡大しただけではなく,術後腸管に対してscope挿入性を向上させるために,高追従挿入部およびカーブトラッキング機構を搭載している.また,胆管アプローチを行う際(特に経乳頭的アプローチ),主乳頭を正面視しやすくするために今まで以上に小回りが効くように,アングル機動性が向上している.
SBEに関しては,現在のところ鉗子口径が2.8mm,有効長が200cmのstandard type SBE(SIF-Q260Y)のみ市販されている.今後short type SBEが発売予定であるが,現時点で詳細は不明である.現在市販されているBAEをTable 1に示す.

現在市販されているバルーン式内視鏡の種類.
胃切除術の代表的な再建術式として,Billroth Ⅰ再建法,Billroth Ⅱ再建法,Roux-en Y再建法,Double tract法,空腸間置法などがあるが,近年Roux-en Y再建法が多くなされるようになってきている.
膵頭十二指腸切除術の再建術式として,Child(変)法,Whipple法,今永法などがあるが,現在,日本では主にChild(変)法を行う施設が多い.
胆管切除術の再建術式として,肝門部・上部胆管癌や先天性胆道拡張症などは,Roux-en Y再建法(胃温存)が行われることが多い.
Billroth Ⅱ再建例は従来の内視鏡でも内視鏡アプローチは可能であるが,Roux-en-Y再建例に代表される長い十二指腸・空腸脚を有する消化管再建術後例は極めて困難である 27)~35).特に胃が温存されているRoux-en-Y再建術は,胃全摘例のものに比べて困難な場合が多い.
これまでにRoux-en-Y再建例に対して,十二指腸用内視鏡による試み 28),29)のほか,細径大腸内視鏡 31)~33)やオーバーチューブ併用前方斜視鏡 34),35) を用いた試みがなさられてきたが,満足いく結果は得られなかった.
DB-ERCPを完遂するには,盲端部への内視鏡挿入およびERCP関連手技の両方を成し遂げなければならない.
1.再建法別内視鏡深部挿入テクニックDBEの盲端部への深部挿入は再建法別に難易度は異なる.
a.Billroth Ⅱ再建法,Child(変)法
Billroth Ⅱ再建法には,short afferent loop(SAL)とlong afferent loop(LAL)があり,後者は輸入脚と輸出脚との間にBraun吻合と呼ばれる空腸空腸吻合を有することが多い.これらの再建方法による違いが内視鏡挿入の難易度に関わる 24).
SALでは,吻合の角度が急峻であり,輸入脚と思われる腸管開口部の同定が難しく,かつ挿入が難しい.輸入脚の開口部は,通常吻合部を越えて左上方に位置することが多いが,輸出脚の開口部より対側に管腔がつぶれた状態で存在するため,輸入脚の入り口は胃内腔より観察されないことも多い(Figure 1-a).輸入脚への挿入のポイントは,アップアングルを用い輸入脚に内視鏡の方向を合わせ,徐々にダウンアングルをかけながら内視鏡を「引く」ことで,輸入脚の方向へ内視鏡先端の方向が一致する.その時点で内視鏡は輸入脚へと滑りこむ.

Billroth Ⅱ再建例における輸入脚と輸出脚の位置関係.
a:short afferent loopにおける輸入脚と輸出脚の位置関係.
b:long afferent loopにおける輸入脚と輸出脚の位置関係.
LALでは輸入脚への内視鏡挿入について難しいことはあまりない.胃内腔より腸管開口が2つ見えており,どちらにも比較的容易に内視鏡を挿入できる(Figure 1-b).しかし,輸入脚が長い症例では癒着の問題があり,輸入脚と輸出脚がBraun吻合で吻合されている症例では管腔が迷路状態になっているため注意が必要であるが,Braun吻合を利用することで盲端部へより容易に挿入することもできる.
Child(変)法は,前述したLALとほぼ同様の再建である場合が多いので,Braun吻合で迷わなければ比較的容易に盲端部まで挿入可能である.ただし,盲端部に胆管空腸吻合部と膵管空腸吻合部が存在し,われわれの経験では,術後膵液瘻を併発した症例では,頑固な癒着が存在し,盲端部への挿入に苦渋することが多いので,注意が必要である.
b.Roux-en Y再建法
Y脚への挿入は困難な場合が多い.特に胃温存症例やY脚吻合部の角度が急峻な場合は,内視鏡先端部に力が伝わらず,盲端部へ逆行性に内視鏡を進めることが困難である.挿入のポイントは,あまりプッシュ操作は行わず,アングル操作を用いながら,内視鏡先端のバルーンを上手く用いて挿入する.また,CO2送気や用手圧迫を用いることも有用な方法の1つである.New short type DBEでは,これらの問題を解消するため,高追従挿入部・カーブトラッキングシステムを搭載しており,よりY吻合部を越えて盲端部への挿入が行いやすくなっている.Roux-en Y再建法(胃温存)の挿入シェーマを示す(Figure 2).

シェーマ(R&Y hetaticojejunostomy).
DB-ERCPにおけるカニュレーションには,乳頭部に対するアプローチと胆管空腸吻合部に対するアプローチがある.
a.Billroth Ⅱ再建法
Billroth Ⅱ再建法は,乳頭部に対するアプローチとなる.盲端部まで到達すると乳頭部は画面の左側ないし上方に見上げの状態で観察される(Figure 3).この見え方は,通常のERCPとは上下反対方向になっている.できるだけスコープのループを解除し,オーバーチューブ先端バルーン,時には内視鏡先端バルーンも用いることで,腸管を把持しスコープが抜けることなく安定してスコープ操作を行うことができる.胆管挿管のポイントは,主乳頭を画面の6時方向に位置させることである.従来のDBEでは造影カニューレは画面の6時半の位置から出るため,この状態にすれば胆管方向はダウン方向にポジショニングできる.先端ストレート細型タイプのカニューレを使用して主乳頭を押しつけるようなイメージで,胆管方向に軸を合わせながら胆管挿管することで,比較的容易に胆管深部挿管が可能である(Figure 4-a).New short type DBEでは造影カニューレは画面の5時半の位置から出るため,主乳頭を画面の6時方向に位置させることで,胆管方向への軸合わせも行いやすくなった(Figure 4-b).

Billroth Ⅱ法再建例における盲端部到達時のpapillaの位置関係.
a:盲端部到達時,画面の12時方向に乳頭を観察.
b:オーバーチューブと内視鏡を操作することで画面の6時方向に乳頭を位置.

Billroth Ⅱ再建例における主乳頭に対する胆管挿管.
a:従来機は画面の6時半方向よりカテーテルが出る.
b:新型機は画面の5時半方向よりカテーテルが出る.
b.Child(変)法
Child(変)法は,胆管空腸吻合部に対するアプローチとなる.まず胆管空腸吻合部を見つけることが重要で,特に吻合口がピンホール状に狭窄している良性狭窄の場合には慎重に探す必要がある(Figure 5-a).胆汁の流出が少しでも認められる場合は,その周辺を探すことで見つけることができる.また吻合部周囲のulcer scar様の粘膜像が吻合口発見の手がかりになることもある.一方,吻合部の悪性狭窄の場合は,吻合部は比較的容易に見つけることができるが,吻合口は腫瘍により潰されていることがあるので注意が必要である(Figure 5-b).次に胆管挿管であるが,透視で胆管の位置を確認しながら胆管空腸吻合部を画面の正面に位置させることで,比較的容易に胆管挿管が可能である.

胆管空腸吻合部狭窄.
a:良性狭窄.
b:悪性狭窄.
c.Roux-en Y再建法
Roux-en Y再建法は,乳頭部と胆管空腸吻合部に対するアプローチがある.
ⅰ)乳頭部へのアプローチ
盲端部まで到達すると乳頭部は画面の11時~1時方向,見上げの状態で観察されることが多いが,ときに画面の様々な場所に確認されるので,注意して主乳頭を探す必要がある.主乳頭を発見した後,スコープ操作により主乳頭を画面の6時方向に位置させることができれば,前述したBillroth Ⅱ再建術の胆管挿管法と同様の方法で,胆管挿管が可能である.ここで重要なことは,基本的に主乳頭は接線方向に観察されることが多いので(Figure 6-a,b),アングル操作とスコープ操作を組み合わせて主乳頭を正面視できるようにpositioningする(Figure 6-a,b).そのため,スコープのループはあえて解除せずに,できるだけ大きなループを形成しておく(Figure 7).さらに,胆管深部挿管困難例対策として,膵管造影のみえられる場合には,膵管ガイドワイヤー法はとても有用である.膵管のガイドワイヤーで主乳頭を押さえることで,主乳頭が正面に位置付けできるだけでなく,膵管ガイドワイヤーの左上を沿わすようにカニューレを出していくと,比較的容易に胆管深部挿管が可能である(Figure 8-a,b).

Roux-en-Y再建例における主乳頭に対する胆管挿管(内視鏡像).
a:主乳頭に対して接線方向にアプローチ.
b:主乳頭に対して見上げ方向にアプローチ.

Roux-en-Y再建例における主乳頭に対する胆管挿管(透視像).

膵管ガイドワイヤー法を用いた胆管挿管.
a:膵管にガイドワイヤー挿入.
b:胆管深部挿管.
ⅱ)胆管空腸吻合部へのアプローチ
肝移植術後や先天性胆管拡張症術後などで,胆管空腸吻合術が行われている症例では,胃が温存されているため,スコープの操作性がやや煩雑となる場合があるが,吻合口が発見出来れば比較的容易に胆管挿管可能である.ただし,胆管は空腸壁に対して垂直方向に吻合しているため,吻合口に対して胆管方向はきつい角度(接線方向)になることもあり,胆管空腸吻合部を画面の正面に位置させることができない場合は,手元のハンドル操作でカニューレの先端が360度回転可能なsphincterotome(Autotome Rx;Boston Scientific,Osaka,Japan)を用いて角度をつけて胆管挿管を試みる.
術後再建症例では乳頭の上下方向が逆となること,専用のsphincterotomeがないことから,内視鏡的乳頭切開術(Endoscopic sphincterotomy:EST)は十分に熟練したERCP内視鏡医がいる施設でのみ行われるべきである.基本的にガイドワイヤー誘導下に使用可能なデバイスを用いてのESTが望ましい.また,必ずしも適切な方向にブレード(刃)が向くとは限らないため,われわれはブレードが回転可能な押し切りタイプのsphincterotome(Rota Ⅱ;Boston Scientific,Osaka,Japan)を好んで用いている(Figure 9).

Roux-en-Y再建例におけるEST.
a:口側隆起の向きに沿って,スコープの微妙な操作で慎重に切開する.
b:Endoscopic sphincterotomy(EST)後の乳頭像.
結石嵌頓などを避けるため,機械的結石破砕具(mechanical lithotripter;ML)を用いて,結石を破砕してから結石除去術を行うのが望ましい.ガイドワイヤー誘導下に挿入可能なゼメックスクラッシャーカテーテル(ゼオンメディカル社製)は,シース径が7Frのため鉗子口径が2.8mmの内視鏡に使用可能で,バリエーションとして,有効長200cm(LBGT-7420S)と250cm(LBGT-7425S)のものがあるため,short type DBEは勿論のこと,standard type DBEおよびSBEでも使用可能である.近年,EPLBD(endoscopic papillary large balloon dilation)が普及したことで,結石を破砕することなく結石除去術を行えるようになり,より安全で容易に結石除去術を完遂できるようになってきた(Figure 10-a~d).筆者らも好んでEPLBDを行っているが,特に消化管再建術後例(盲端部を有する症例)は,食物の逆流などの心配もなく,EPLBDのとても良い適応だと考えている.

Roux-en-Y再建例におけるendoscopic papillary large balloon dilation(EPLBD)後の切石術.
a:EST(小切開)後の内視鏡像.
b:balloon deflate時の内視鏡像.
c:EPLBD後の乳頭の内視鏡像.
d:endoscopic mechanical lithotripter(EML)による切石後の内視鏡像.
胆管拡張用バルーンカテーテル(Cook社製カンタムバルーンダイレーターなど)を用いている.カテーテルが挿管できない場合は,はじめにダイレーターカテーテルを挿入した後に拡張用バルーンを挿入する.拡張バルーン径は,症例に応じて4mm,6mm,8mm,10mmを使い分ける.
4.ステント留置術従来のshort type DBEでは,鉗子口径の問題により使用できるmetallic stentに制限があったが,new short type DBEではほとんどすべてのmetallic stent(covered stentなど)が使用可能である.
消化管再建術後例の胆膵疾患に対する内視鏡的治療の需要は年々増加しており,2016年の診療報酬改定においても,保険適応追加された.しかし,DB-ERCPの手順・方法は未だ十分には確立されておらず,今後手技の標準化を始め,適応・禁忌など確立させていく必要がある.
本論文内容に関連する著者の利益相反:岡崎和一(中外製薬,エーザイ,アボットジャパン,アステラス製薬,伊賀市)