日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
消化管壁全層縫合器Over-The-Scope Clip(OTSC)システムの現状と課題
西山 典子森 宏仁小原 英幹正木 勉
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2016 年 58 巻 6 号 p. 1135-1148

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抄録

これまでの消化器内視鏡の技術では,消化管の難治性出血,穿孔,瘻孔,術後縫合不全に対する救済治療は困難とされ,主に外科手術が選択されてきた.しかしながら,耐術能が低下した高リスク下での緊急手術は,救命率も十分とは言えない.それゆえ,高齢化社会を迎えた今日を鑑みても,より侵襲度の低い内視鏡的なアプローチでの根治治療が望まれる.2009年より欧米諸国で臨床導入された内視鏡用・全層縫合器Over-The-Scope Clip(以下OTSC)システムは,内視鏡用止血クリップなどの既存のデバイスと比較し,消化管壁全層に対し強力な組織把持力を有する特性により,欠損孔を持続的に閉鎖しうる.本邦でも2011年に薬事認可後,その認知度,汎用性に拡がりをみせている.これまでに報告されたOTSCの臨床成績では,把持困難な硬化した組織を有する瘻孔においては課題が残るものの,出血,穿孔,縫合不全には高い臨床的効果を示している.同時に,その高い安全性も示されている.OTSCシステムは,既存の内視鏡治療と外科手術の間に位置付けされ,超低侵襲内視鏡治療の先駆けとなる画期的なデバイスと言えよう.

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© 2016 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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