日本消化器内視鏡学会雑誌
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58 巻, 6 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
総説
  • 西山 典子, 森 宏仁, 小原 英幹, 正木 勉
    2016 年 58 巻 6 号 p. 1135-1148
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/20
    ジャーナル フリー
    これまでの消化器内視鏡の技術では,消化管の難治性出血,穿孔,瘻孔,術後縫合不全に対する救済治療は困難とされ,主に外科手術が選択されてきた.しかしながら,耐術能が低下した高リスク下での緊急手術は,救命率も十分とは言えない.それゆえ,高齢化社会を迎えた今日を鑑みても,より侵襲度の低い内視鏡的なアプローチでの根治治療が望まれる.2009年より欧米諸国で臨床導入された内視鏡用・全層縫合器Over-The-Scope Clip(以下OTSC)システムは,内視鏡用止血クリップなどの既存のデバイスと比較し,消化管壁全層に対し強力な組織把持力を有する特性により,欠損孔を持続的に閉鎖しうる.本邦でも2011年に薬事認可後,その認知度,汎用性に拡がりをみせている.これまでに報告されたOTSCの臨床成績では,把持困難な硬化した組織を有する瘻孔においては課題が残るものの,出血,穿孔,縫合不全には高い臨床的効果を示している.同時に,その高い安全性も示されている.OTSCシステムは,既存の内視鏡治療と外科手術の間に位置付けされ,超低侵襲内視鏡治療の先駆けとなる画期的なデバイスと言えよう.
症例
  • 村脇 義之, 三浦 将彦, 吉村 禎二, 谷村 隆志, 山田 稔, 吉田 学
    2016 年 58 巻 6 号 p. 1149-1154
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/20
    ジャーナル フリー
    verrucous carcinoma(VC)の初期病変からの形態変化が観察でき,内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)で切除した1例を経験した.症例は60歳,男性.内視鏡検査で胸部食道に白色調の粗糙粘膜でヨード不染を呈する平坦病変を指摘した.生検では異型細胞に乏しくepidermizationが疑われた.1年後に再検したところ同病変は白色小結節を伴う表在隆起性病変となり,その1カ月後には白色小結節は癒合傾向を呈しなお且つ隆起が顕著になった.生検では高分化型扁平上皮癌であり,診断治療目的にESDで切除した.術後病理はT1a-MMの高分化型扁平上皮癌であり,組織学的特徴からverrucous carcinomaと確定診断した.
  • 水本 健, 桑井 寿雄, 河野 博孝, 保田 和毅, 山下 賢, 檜山 雄一, 木村 治紀, 山口 敏紀, 山口 厚, 高野 弘嗣
    2016 年 58 巻 6 号 p. 1155-1160
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/20
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.主訴は血便.小腸カプセル内視鏡(VCE)にて回腸に出血源が疑われ,バルーン内視鏡(BAE)を施行したところ同部位に粘膜下腫瘍様隆起を認めた.BAE施行2日後に出血性ショックとなり,CTで同部位の小腸静脈瘤からの出血が疑われた.輸血で経過をみて,全身状態が安定した2日後にBAEを施行し,同部位にN-butyl-2-cyanoacrylateを注入して止血し得た.小腸静脈瘤破裂は診断,治療ともに困難であるが,BAEによる止血術が有効であると考えられた.
  • 梅原 松樹, 野村 栄樹, 佐々木 悠, 佐藤 剛司, 作田 和裕, 八木 周, 岩野 大輔, 阿部 靖彦, 西瀬 祥一, 上野 義之
    2016 年 58 巻 6 号 p. 1161-1166
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/20
    ジャーナル フリー
    78歳男性.2011年2月左腎淡明細胞癌に対して左腎摘出術.2014年4月頃より進行性貧血を認めたが,上下部消化管内視鏡検査では出血源を指摘できず.カプセル内視鏡検査で上部小腸に出血を伴う隆起性病変を認めた.ダブルバルーン内視鏡検査では,空腸に粘膜下腫瘍様の立ち上がりを呈した辺縁が凹凸不整な潰瘍を伴う隆起性病変を認めた.臨床背景,肉眼像,生検病理組織像は腎細胞癌の転移と矛盾せず,貧血の原因と考えられた.空腸部分切除術を行い,病理組織学的に腎淡明細胞癌の空腸転移と診断した.術後1年4カ月現在,貧血の進行なく経過している.腎細胞癌の症例で,進行性の貧血や消化管出血を認めた場合,小腸転移も念頭に置き診療に当たるべきと考えられた.
注目の画像
手技の解説
  • 上山 浩也, 松本 健史, 永原 章仁, 八尾 隆史, 渡辺 純夫
    2016 年 58 巻 6 号 p. 1169-1177
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/20
    ジャーナル フリー
    筆者らが提唱した胃癌の組織亜型・胃底腺型胃癌,Gastric adenocarcinoma of fundic gland type(chief cell predominant type),GA-FG-CCPは非常に稀な腫瘍であるが,近年,日本全国の施設で発見され,海外からも報告されるようになった.しかし,胃底腺型胃癌の診断や治療の経験が無い場合,一般的には内視鏡診断,病理診断は比較的困難と考えられ,最終的には消化管専門病理医に病理学的に確定診断されるのが現状である.したがって,内視鏡医においては胃底腺型胃癌の臨床病理学的特徴を理解することに加え,通常内視鏡で胃底腺型胃癌を疑う所見を見落とさないことが重要であり,胃底腺型胃癌を疑う病変を生検した場合には的確な情報を病理医へ伝える必要がある.本稿では,胃底腺型胃癌の臨床病理学的特徴と現状での内視鏡的特徴を説明した後,胃底腺型胃癌のNBI併用拡大内視鏡を含む内視鏡診断のポイントについて言及する.
資料
  • 伊佐山 浩通, 濱田 毅, 安田 一朗, 糸井 隆夫, 良沢 昭銘, 中井 陽介, 木暮 宏史, 小池 和彦
    2016 年 58 巻 6 号 p. 1178-1184
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/20
    ジャーナル フリー
    統一された評価方法がなかったために,異なる臨床試験で使用された経乳頭的な内視鏡的胆道ステントの成績比較や,Meta-analysisを行うことは困難である.このため,統一された評価方法が必要である.われわれは胆道ステントの新しい標準的な成績の記載方法である,日本の胆膵内視鏡医の合意により作成した「TOKYO criteria 2014」を提案する.従来用いられていたステント閉塞の代わりにRecurrent biliary obstruction(RBO)という閉塞と逸脱を含んだ文言を使用している.そしてTime to RBO(TRBO)はKaplan-Meier法で評価し,Log-rank testで検定される.本評価システムではPlastic stent,self-expandable metallic stents(uncovered and covered)ともに評価可能である.RBOの原因,ステント閉塞以外の偶発症とその重症度,手技的・臨床的成功率についても規定し記載するようになっている.最も重要なことは,Tokyo criteriaでは異なった臨床試験で使用された胆管ステントの成績を比較することができるということである.しかし,本評価方法は経乳頭的な手技に関するもので,超音波ガイド下の経消化管壁的な胆道ドレナージに関しては近い将来検討すべき課題と考えている.
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