日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
大腸T1(SM)癌に対する内視鏡的摘除の現況と将来展望
岡 志郎田中 信治田丸 弓弦朝山 直樹茶山 一彰
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2016 年 58 巻 8 号 p. 1311-1323

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抄録

大腸T1(SM)癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は治療の側面のみならず,完全摘除生検(total excisional biopsy)としての役割もある.しかし,(1)完全摘除生検が可能であるための術前診断学,(2)ESD手技,(3)摘除病変の病理診断の標準化や精度管理がまだ不十分であり,現時点では大腸SM高度浸潤(T1b)癌に対するESDは精度管理が担保されたセンター的施設において臨床研究的に施行することが望ましい.内視鏡的摘除後大腸T1b癌の取り扱いに関しては大腸癌治療ガイドライン2014年版が使用されているが,追加手術適応の決定には種々のリンパ節転移危険因子の組み合わせから予測される転移リスクからみた根治性と患者背景を総合的に比較評価することが重要である.これまで多数例の検討から,大腸T1b癌におけるリンパ節転移リスクの極めて低い条件も明らかになっており,将来的には(1)~(3)の一般化や精度管理が確立することで大腸T1b癌に対する完全摘除生検としてのESDが可能になることが期待される.

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© 2016 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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