2016 年 58 巻 8 号 p. 1346-1353
悪性消化管狭窄に対するステント治療は,より安全でより簡便な手技になってきている.その結果,複雑な狭窄に対してもステント治療が可能となっている.一方で消化管狭窄の原因となる癌自体の生存期間延長に伴って,多発狭窄に対してステント治療する機会も増えている.多発狭窄例では深部の狭窄評価が不十分になる可能性があるため,すべての狭窄治療を一期的に行うことに固執すべきではない.長い狭窄に対して一期的にステント治療する場合は,奥から手前にステントを直列に留置する.その際,決して処置途中でガイドワイヤーが抜けないように注意する.その他,屈曲部にステントを重ねて留置する場合,axial forceの弱いステントを選択する.消化管多発狭窄に対するステント治療は難易度の高い手技となるため,ステント自体の特性や通常のステント治療のポイントに精通するだけでなく,多発狭窄例特有の注意点も理解しておく必要がある.