2017 年 59 巻 1 号 p. 81-90
十二指腸静脈瘤は,食道胃静脈瘤を除いた異所性静脈瘤の一つで比較的まれな疾患であり,一旦破裂すると出血量も多く致命的となりうる.その治療法は確立されたものはまだなく,EIS(Endoscopic injection sclerotherapy)による内視鏡的治療やIVR(Interventional Radiology)による塞栓療法を用いて症例に応じて加療されているのが現状である.治療前には3D-CTを用いて血行動態を評価することが重要である.破裂時の治療としてはシアノアクリレート系薬剤を用いたEISが望ましい.EISの際は腹臥位で行うと手技が安定する.一時止血後に静脈瘤が残存していればEISないしIVRによる追加治療を行う.
十二指腸静脈瘤は食道胃静脈瘤を除いた異所性静脈瘤の一つで比較的まれな疾患である.Alberti 1)により報告されたのが始まりとされ,本邦の1例目は西岡ら 2)によって報告された.比較的まれな疾患で,門脈圧亢進症患者のうち0.4%に過ぎないとされ 3),熊谷らが行った全国調査 4)によると,静脈瘤硬化療法施行例のうち,十二指腸静脈瘤の頻度は0.345%(64/18,540例)であった.しかし食道・胃静脈瘤以外の異所性静脈瘤中,直腸静脈瘤に次いでみられる疾患で 5),好発部位は下行脚から水平脚に多く 6),近年報告例が増加している.その治療法は確立されたものはまだなく,内視鏡的静脈瘤硬化療法(Endoscopic injection sclerotherapy: EIS)やバルーン下逆行性経静脈的塞栓術(baloon-occluded retrograde transvenous obliteration: BRTO)をはじめとしたInterventional Radiology: IVRを用いて症例に応じて加療されているのが現状である.本稿では筆者の考える十二指腸静脈瘤破裂に対する治療を解説する.
十二指腸静脈瘤の原因は門脈圧亢進症によるが,本邦では肝硬変が最も多く(71.9%),次いで,膵癌・膵炎・血栓などによる肝外門脈閉塞症(Extrahepatic portal Obstruction: EHO)(12.5%),特発性門脈圧亢進症(idiopathic portal hypertension:IPH)(9.4%)などが続く 7).血行動態は基礎疾患により異なり,肝硬変の場合は門脈から分岐した膵十二指腸静脈などが供血路となり,遠肝性血流として発達した途中で十二指腸に静脈瘤を形成し,右腎静脈や卵巣静脈,精巣静脈,また右腎被膜静脈などの腎被膜周囲静脈を経て下大静脈へと流入することが多い.EHOの場合は,閉塞した門脈を迂回して肝臓へ流入する求肝性血流として発達することが多い 8),9).内視鏡所見としては,FormはF2ないしF3で,出血例においてもRCサインを認めず,出血因子はRCサインではなくF因子であるとされている 10).また,食道・胃静脈瘤の合併やその治療歴を有する症例も多く,十二指腸静脈瘤は上部消化管出血の出血源として常に考慮すべきである.
十二指腸静脈瘤破裂はその疾患概念を認識していないと,意外と診断することができない.当然吐下血などの臨床症状を契機に検査を行うことから,まずEGD(Esophagogastroduodenoscopy)を行い出血源を探すことになるが,静脈瘤は下行脚や水平脚に存在することが多く,十二指腸深部まで観察する意識を持つことが重要である.当院でも,1例目の破裂症例は貧血のスクリーニングとして行った初回のEGDでは下降脚まで観察せず,2回目の検査で十二指腸深部まで観察することで発見しえた(Figure 1-a,b).またその症例は自然止血していたため出血部位の確認が困難で,スコープに透明フードを装着し,ひだの間の静脈瘤を押し広げるようにして静脈瘤上のびらんとわずかな出血を確認し,十二指腸静脈瘤破裂の診断に至った(Figure 1-c,d).幕内も,「①まず,食道や胃以外にも,とくに十二指腸と直腸には静脈瘤ができる可能性のあることを知っておくことが必要であり,②日頃より,食道・胃静脈瘤の内視鏡検査を行う際は十二指腸静脈瘤の有無を確認しておくこと.とくに,内視鏡的硬化療法で食道胃静脈瘤を消去した後は,門脈血がその短絡路を右胃静脈,右胃大綱静脈,上下膵静脈などを経て,右副腎静脈,右腰椎静脈,右腎静脈から下大静脈へ求める可能性があるので注意を要する.また,吐下血例で食道静脈瘤や胃静脈瘤に出血源が認められなければ,十二指腸静脈瘤の検索を行っておく必要がある」 7)と述べており,疾患概念の認識が重要と思われる.

74歳女性 アルコール性肝硬変 EGDで十二指腸下行脚にF2-3の静脈瘤を認める(a,b).出血源確認のため透明フードを装着し出血源を検索したところ,微小びらん(矢印)を認めた(c,d).
十二指腸静脈瘤に対する治療はまだ確立されておらず,種々の治療を模索的に行っているのが現状と思われる.しかし十二指腸静脈瘤はいったん破裂出血すると,血流量が多量で致命的になることも多い.そのため迅速な止血処置が必要である.予防治療については,まだ議論の余地がある.一般に治療法としては,内視鏡的治療,IVRを用いた塞栓術,外科治療の3つがあげられる 11).以前は外科的治療としての静脈瘤結紮術 12)や十二指腸部分切除術 13)が行われたが,近年はBRTO 14)をはじめとするIVRやシアノアクリレート系薬剤(n-butyl-2-cyanoacrylate: NBCA, Histoacryl: HA, α-cyanoacrylate monomer: CA)(Figure 2)を用いたEIS, EVL(Endoscopic variceal ligation)などの内視鏡治療が行われている 9).

使用するヒストアクリル系薬剤.n-butyl-2-cyanoacrylate: NBCA, Histoacryl:HA;ヒストアクリル®ビー・ブラウンエースクラップ株式会社(a,b),α-cyanoacrylate monomer: CA; アロンアルファA「三共」® 東亞合成株式会社(c,d).
日本医学中央雑誌で検索したところ,タイトルに「十二指腸静脈瘤」を含む症例報告(原著論文)は1984年から2015年の期間に111件(125症例)あり,内容を確認しえた77症例について治療内容を検討したところ,2種類以上の手技を用いて治療された症例が23例と最も多く,初回治療手技としてはEVL(8例)やクリップ法(6例)が多くを占め,追加治療としてBRTOなどのIVR(8例)やHAによるEIS(3例)が行われていた.そのうちEVLが行われた8例中6例では再出血やショックを来したため追加治療を必要としていた 15)~20). 次に単独の手技で治療された54症例中では,BRTOやPTO(Percutaneous Transhepatic Obliteration; 経皮経肝静脈瘤塞栓術)などのIVRを用いた症例が18症例と最も多く,次いでHAやCAを用いたEIS治療例が16症例,EVL治療例が10症例,内視鏡的にクリップで治療された症例も5例報告されていた(Table 1).

医学中央雑誌で検索した年代別の十二指腸静脈瘤の治療法.
行われた手技の延べ件数としてはIVRが36例で,中でもBRTOが25例と最も多く,血行動態が把握できればBRTOは理にかなった治療と思われる.IVRに次いで多い治療はEVLで24例の報告であったが単独での治療例の報告は近年減少している.
全体として単独の治療で止血に至った報告が多く,行われた手技としてはIVRが最も多いが,IVR治療後に再出血を生じEISが追加され最終的に止血された報告もあり 21),止血困難例には様々な手技を組み合わせることが必要と考えられる.
十二指腸静脈瘤破裂時はシアノアクリレート系薬剤を用いたEISが第一選択になると思われる(Figure 3-a,b,4-a,b).EVLは簡便な手技であるが,術後大きな潰瘍形成を来し十分な血栓化が得られないまま再出血やショックを来すこともあり(Figure 5) 15)~20),血行動態が複雑で血流量が多い十二指腸静脈瘤の治療には不適であると思われる.EVL施行後すぐに次の治療を行える状態であれば,短時間の一時止血としては検討しうる.他の治療としては,施設によっては,熟練した放射線科医などと連携が取れれば,緊急IVRも選択肢になるが,その際は事前の血行動態の把握が重要で,出血点までのルートがあるか否かがポイントとなる.例えば十二指腸静脈瘤までの逆行性ルートが確認できればBRTOが行えるが,排血路がはっきりしない場合は施行困難である.また経肝ルートで行うPTOも検討されるが,腹水がある場合は適さない.しかし供血路から確実に血管を塞栓しうるIVRは有効な治療法で,その点で破裂後自然止血が得られ循環状態が安定している待機例に関してはIVRが第一選択肢になりうる.他に内視鏡的治療のクリップ法は処置後に大きな粘膜障害や潰瘍形成を生じにくく,観察しうる静脈瘤径がクリップよりも細い場合は,待機的に追加治療を行うことが前提であれば緊急時の一時止血として,有効であると思われる 22),23).

74歳女性 アルコール性肝硬変 EIS行いCA 2mL静脈瘤に注入し止血した(a).3日後のCTでは十二指腸静脈瘤内にCAを認め,血流は消失していると判断した(b).その後再発なく経過し,約半年後のCTではCAは消失していた.

78歳女性 C型肝硬変 EIS(HA 2mL注入)施行時の静脈瘤造影像(a).EIS翌日の単純CT像で静脈瘤内にHAが残存し,他部位に流出していないことが確認できる(b).

78歳女性 C型肝硬変 CTで膵十二指腸静脈を供血路とした十二指腸静脈瘤(a).十二指腸下行脚にF2静脈瘤と出血を認め(b),EVLにて一時止血を試みた(c).明朝,ショック状態となり緊急EGD行った所,EVL処置部は多量の凝血塊に覆われO-リングは脱落し,同部に広く潰瘍を形成していた(d).
十二指腸静脈瘤破裂に対するEISは,基本的には孤立性胃静脈瘤破裂に対するEISに準ずると考える.すなわち十二指腸静脈瘤も大量の血流量を有していることがあり,静脈瘤内に硬化剤を停滞させるために瞬時に重合するヒストアクリル系薬剤を用いることが必要である.X線透視下にEISを行い造影剤付加した薬剤による静脈瘤造影像から注入範囲を確認しながら行う(Figure 4-a).治療の際には患者ないし家族へ十分な説明と同意を得ていることが必要である.
1.循環状態の安定化出血に伴う循環血漿量低下によるショック状態の際は,濃厚赤血球や凍結血漿の輸血を行い,循環状態が安定してから処置に臨む.いったん出血すれば大量出血となることがあり,手技の際は濃厚赤血球をさらに10単位程度準備してから行い,また術中ショックの際急速に輸血を行えるように18-20G針で輸血抹消ラインをメインルートとは別に確保しておく.血小板の輸血はすぐに入手できないことも多く緊急時には行っていないが,大量出血に伴う血小板減少の際は輸血を検討すべきである.
2.3D-CTによる血行動態の把握十二指腸静脈瘤は複雑な血行動態を示すことも多く,治療法の選択にもかかわるため,緊急EGDの前後にかかわらず3D-CTによる血行動態の検討が必要である.少なくとも2mmスライスで胸部から腹部骨盤まで撮影し,動脈相,平行相,門脈相の3phaseで撮影する.その後MPR(multiplanar reconstruction; 任意断面再構成)像から,冠状断やthin slice 再構成画像にて短絡路の形態,流入路と排血路の評価を行い 24),画像をスクロールしながら,十二指腸静脈瘤を同定し,供血路と排血路を探索する(Figure 6).前述した通り,肝硬変の場合は門脈から分岐した膵十二指腸静脈などが供血路となることが多く,骨盤内へ血管が向かう場合は卵巣静脈や精巣静脈が排血路となることが多く認識しやすいが,右腎被膜周囲の静脈を経て下大静脈に流入することもあり,その点に注意してCT画像を見ると血行動態把握の助けになる.事前や過去に行われた造影CTがあれば静脈瘤の進展に伴い供血路の同定がしやすくなる場合もあり参考にすべきである.可能であれば放射線科医に読影依頼しディスカッションすることも必要である.

74歳女性 アルコール性肝硬変 CT上,十二指腸周囲の血管の発達を認め(a 矢頭)供血路である膵十二指腸静脈を確認できる(b 矢頭)が,3D-CTとしてMPR像を見ると血行動態が理解しやすい(c,d 矢頭;膵十二指腸静脈,矢印;排血路である拡張した右卵巣静脈.発達した左胃静脈と胃静脈瘤も認める).
十二指腸静脈瘤破裂が疑われる場合,現時点では食道胃静脈瘤破裂におけるSBチューブなどの一時止血を行えるデバイスはなく,当該施設で止血処置が行えない場合は当然高次施設への転院搬送を考慮する.循環状態が安定していれば速やかに搬送すべきであり,ショックを呈していても輸血を十分に行い,一時的にでも循環が安定すれば,転院搬送を行う.
4.人員の確保基本的には通常のEISを行う人員と同様で,内視鏡施行医1名,透視像確認担当医1名,局注担当医1名,シアノアクリレート系薬剤の調合担当1名,出来れば内視鏡の保持担当者1名の5名以上人員を確保することが望ましい.特に透視画像の確認は重要で,硬化剤の門脈本幹への流入は避けなければならない.
5.薬剤の準備・調整のタイミングシアノアクリレート系薬剤の調整は胃静脈瘤治療に使用する場合と同様である.当院ではシアノアクリレート系薬剤としては,まず2.5mlシリンジにリピオドールを0.5ml吸っておき,ヒストアクリル(HA;ヒストアクリル®ビー・ブラウンエースクラップ株式会社)ないしαシアノアクリレートモノマー(CA;アロンアルファA「三共」® 東亞合成株式会社)を用い(Figure 2),これらを空気が混入しないように0.4mlずつ3回と0.3mlを1回吸い(シアノアクリレート系薬剤として1.5ml),totalで2.0mlとして75%HAないし75%CAとして使用している.調剤開始のタイミングは内視鏡挿入前に開始し,調剤後は注入直前までシリンジを回して薬剤が固まらないようにする.
6.内視鏡の準備内視鏡は取り回しの良くアングル操作が十分行える直視鏡,当院ではオリンパス社のGIF -Q260を用いている.セットアップは通常通りで,緊急時は送気が多くなるため,炭酸ガス(CO2)送気を用いている.
7.穿刺針の準備穿刺針はトップ社のバリクサー食道静脈瘤穿刺針を用いている.以前から当院ではCAを注入する際は20G針を用いており,十二指腸静脈瘤穿刺の際も同様である.当院では行っていないが,胃静脈瘤穿刺の際23G針を用いた報告もあり 25),流動性の高いHAを使用する際は23Gでも可能と思われる.
8.患者の体位穿刺の際は腹臥位で行う事が望ましい.当院では食道胃静脈瘤のEISは左側臥位から仰臥位に近い体勢で行っていたが,この姿勢で十二指腸にアプローチすると容易にスコープが抜けてしまう.胆膵のERCPの際と同様の体位とするとスコープが抜けずに手技が安定する.
9.穿刺の方法・透視の確認穿刺針内はあらかじめ50%ブドウ糖注射液で満たしておく.穿刺針を内視鏡から挿入し,透視位置は穿刺部を中心にして周囲に静脈瘤造影像が確認できるように位置取りする.静脈瘤径に合わせて針の長さを決める.静脈瘤上の穿刺部位は,できるだけ出血点に近く,かつ十分な血管径があり確実に穿刺できる部分をねらう.手首のスナップ効かせて血管壁を貫くように穿刺し,穿刺後シリンジを引いて血液の逆流を確認し約5ml前後ブドウ糖液をフラッシュし,HA(ないしCA)を入れたシリンジと切り替え速やかに2.0ml注入.再度シリンジを切り替えてブドウ糖液約2ml注入,数秒待ってまず針を外筒内に引き込み軽く押し付けた後に,さらに数秒待って外筒も離す.HA(ないしCA)注入後のブドウ糖液追加注入の際は,HA(ないしCA)が門脈本幹や大循環へ流出する可能性も危惧されるため,慎重に行うことが望ましい.
手技の間,透視担当医は静脈瘤造影像を確認しつつ,薬剤の注入中は頻回に写真撮影を行う.注入中に薬剤が門脈本幹や大循環に流入した際は,薬剤注入を中止するのが望ましいが,CA系薬剤は凝固しやすく一気に注入するので,注入を止めることは容易ではない.穿刺終了のたびに画像を確認し,事前に予測された血行動態と検証し次の穿刺に備える.静脈瘤を外筒で触り固くなければ追加穿刺を試みるが,静脈瘤破裂の緊急時は一時止血が得られれば終了としてもよい.十二指腸静脈瘤は血流が速いので止血しにくく深追いして十二指腸穿孔をきたすと致命的となるので注意が必要である 7).
止血困難な場合は極めて状況は厳しいと思われる.通常肝機能が悪化していることも多く,条件は悪いが,外科手術も考慮せざるを得ない.幕内によると,外科的手術では,sutureligationが多く行われていて12例に施行され,さらに追加手術としてそのうちsplenorenalshuntが1例に,porto-cavalshuntが4例に行われ,またduodenectomyが追加されたものが3例,gastrojejunostomyが行われたものが2例あった.最初からduodenectomyが行われたものが2例,最初からporto-cavalshuntの行われたものが2例であった 7).待機的に手術が行われることは現在でも見受けられ,中島らは十二指腸下行脚の静脈瘤破裂に対し,一次止血後に腹腔鏡下での切除術を行い,良好な結果を得たと報告しており,内科的治療で治療効果が不十分である場合や開腹手術に対術能がない症例では腹腔鏡下静脈瘤切除術も一つの選択肢となりうると考えられる 11),26).
緊急治療時に止血が確認できれば,絶食とPPI(Proton pump inhibitor)注の投与を行い,翌日内視鏡で観察を行う.止血が確認できれば,流動食から食事を再開している.静脈瘤残存の有無は治療後1-3日後に造影CTで行うことが望ましく,十二指腸周囲の静脈瘤が造影されていなければ経過を見る.静脈瘤の残存が疑われた場合は追加治療を検討する.追加治療の選択は,残存血流を勘案し,EISないしBRTO等の追加を検討する.
十二指腸静脈瘤破裂はまれな疾患であり治療法は確立されていないが,臨床の現場で対峙した場合は救命のために何らかの処置をしなければならない.3D-CTを行い冠状断等で血行動態を把握したのちに治療を行うが,その際シアノアクリレート系薬剤を用いたEISは緊急時の一時止血に有用と思われる.その後は,完全止血のためにBRTOなどのIVRも選択肢に含めつつ,複合的に治療戦略を練ることが重要と思われる.
本論文内容に関連する著者の利益相反:なし