日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
小腸出血性病変に対する診断と治療
山田 篤生 小池 和彦
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2017 年 59 巻 10 号 p. 2489-2499

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要旨

消化管出血の約5%が上下部消化管内視鏡検査を行っても原因不明の消化管出血である.カプセル内視鏡検査やバルーン内視鏡検査,放射線画像診断の進歩により,小腸出血の出血源が診断できるようになっており,血管性病変,潰瘍性病変,腫瘍性病変など様々な病変が見つかる.さらに小腸出血に対し内視鏡的止血治療も可能であり,主に血管性病変に対しアルゴンプラズマやクリッピングなどの治療が有効である.しかし,内視鏡治療を行っても再出血率が高く,治療法の改善や再出血のリスク因子に対する介入が必要である.

Ⅰ はじめに

消化管出血全体のうち約5%が原因不明の消化管出血であり,そのうち75%が小腸出血である 1),2.一方,下部消化管出血のうち約2%が小腸出血と報告されている 3.近年,カプセル内視鏡検査およびバルーン内視鏡検査により,これまで内視鏡的なアプローチが困難であった深部小腸に対する内視鏡診断および治療が可能となってきている.さらに,内視鏡検査の進歩に加えCT,CT enterography,Angiographyなどの放射線検査も組み合わせより,効果的で低侵襲に小腸疾患を診断できるようになり,小腸出血の診断体系は大きく変化してきている.

小腸出血病変の主なものにはangioectasiaなどの血管性病変,NSAIDs起因性潰瘍や,クローン病などの潰瘍性病変,癌やGIST,悪性リンパ腫などの腫瘍性病変などさまざまな病変が発見される.また,メッケル憩室を含む小腸憩室が出血源として診断されることもある.

本稿では,小腸出血の診断における各種検査法の役割および治療法と,主な小腸出血性病変の特徴について概説する.

Ⅱ 小腸出血性病変に対する診断法

小腸出血は主に消化管出血を認めるものの上下部内視鏡検査で到達できる範囲に出血源を同定できない病態である原因不明消化管出血(Obscure gastrointestinal bleeding;OGIB)を契機に発見される.以下に本邦におけるOGIBの診断アルゴリズムを示す(Figure 1 4

Figure 1 

OGIB診断アルゴリズム 4

上下部内視鏡検査で異常がない原因不明の消化管出血症例に認めた場合,まず,造影CTを行い小腸壁および壁外,小腸外病変の評価を調べる.

CTで小腸に異常がある場合は,病変に近い経路からバルーン内視鏡検査を行い,見つからなければもう一方のアプローチよりバルーン内視鏡検査を行う.顕性出血が持続し(Ongoing-overt OGIB)出血量が多く,バルーン内視鏡検査ができない場合やバルーン内視鏡検査を施行しても出血源が同定できない場合はIVR(Interventional Radiology)や術中小腸内視鏡などの外科的アプローチが考慮される.

CTで異常がない場合は,顕性出血が持続している場合(Ongoing-overt OGIB)や潜在性出血の場合(Occult OGIB)にはカプセル内視鏡検査が有用である.また,顕性出血が止まった場合(Previous-overt OGIB)は,経過とともに病変検出率が低下するため可及的に速やかにカプセル内視鏡検査を行ったほうがよい 5)~7.カプセル内視鏡検査で異常がない場合は経過観察もしくは出血症状に応じてバルーン内視鏡検査を行う.若年者でメッケル憩室が疑われる場合はカプセル内視鏡では見落とすことがあり,メッケルシンチグラフィーなど考慮する.

経過観察中に再出血を認めたり,上下部消化管の出血が疑われたりした場合は上下部消化管内視鏡検査の再検査を考慮し,必要に応じてカプセル内視鏡検査を行う.

以下に小腸出血性病変の診断に用いられる検査とその役割について概説する.

1)カプセル内視鏡

カプセル内視鏡は,小型のカメラが搭載されたカプセル型の内視鏡を内服することで,腸管蠕動で消化管を通過しながら毎秒2-4枚の写真を撮像することで消化管粘膜および内腔を観察する検査であり,小腸全域を比較的低侵襲で容易に観察することができる.その診断能は小腸出血を疑った患者における出血性病変の有病率は38-93%であり 8,カプセル内視鏡検査により内視鏡的または外科的治療を必要とする所見は37-78%に発見される 8),9.感度89%,特異度95%,陽性的中率97%,陰性的中率83%と診断能が高い検査であることが報告されている 9.カプセル内視鏡検査による出血性病変を予測する因子としては貧血(Hb<10g/dl),出血の病悩期間が長い患者や複数回の出血,顕性出血,出血症状から2週間以内,特に48-72時間が有所見率が高いと報告されている 5),6),10)~12.カプセル内視鏡で所見がなければ再出血率は高くない(6-11%) 13),14

潜在性出血の場合(Occult OGIB)においてもカプセル内視鏡検査は有用であり,顕性出血(Overt OGIB)の場合と小腸病変の有病率は変わらないと報告されている 15

2)バルーン内視鏡(DBE and SBE)

バルーン内視鏡にはダブルバルーン内視鏡(DBE)およびシングルバルーン内視鏡(SBE)がある.いずれも細径の内視鏡と内視鏡に装着するオーバーチューブが一組になっている.DBEでは内視鏡先端とオーバーチューブの両方に伸縮可能なバルーンにより小腸を短縮して挿入していく.シングルバルーンも原理は同様であるが,オーバーチューブ先端のみにバルーンがあり,内視鏡先端にはバルーンはなく内視鏡先端操作で腸管を把持する.鉗子孔よりクリップやAPC(argon plasma coagulation)プローブなどのデバイスを使用し止血術などが可能である.経口的および経肛門的な検査を両方行うことで全小腸の観察が可能であるが,全小腸観察率は0-86%(平均43%)と高くはない.DBEのほうがSBEより全小腸観察率は高い 16),17.バルーン内視鏡検査の出血性病変の診断率は56-80%と報告されており 18)~25,DBEとSBEのその診断率に差はない 16),26.検査のタイミングについては後ろ向き研究で緊急DBE検査は出血性病変の診断率70-90%と有意に高いと報告されている 27),28

3)CT

造影剤アレルギーや腎機能障害がなければ造影CTは前処置を行う必要がなく,出血で血行動態が不安定な場合にでも施行することができる検査である.特にダイナミックCTでは腸管内への血管外漏出を検出することで出血を診断することが可能である.小腸出血を疑う患者のCTの診断率は45%(腫瘍性病変で86%,非腫瘍性病変で33%)であり高くはないが 29,腸管の壁肥厚,狭窄や腸管外の情報を得ることもでき,小腸内視鏡検査の挿入ルート決定に役立つ可能性がある.本邦のOGIB診療ガイドラインでもまず行う検査として進められている 4

CT enterographyは希釈されたバリウムやガストログラフィンなどの陽性造影剤,またはポリエチレングルコール液(PEG)などの陰性造影剤,空気やCO2などの気体腸管内に大量に内服または注入し小腸を拡張させたのち造影CTを行う検査法である.得られたCT画像をもとに3次元像を作成させることで内視鏡様の画像が得られる検査である.腸管の重なりを排除できるため病変を明確に描出でき,内視鏡では到達できない狭窄より深部の情報も得られる利点がある.小腸出血を疑う患者のCT enterographyの診断率は40%であるが 30,カプセル内視鏡検査で出血源が診断されていなかった症例において診断率は50%であり,CT enterographyはカプセル内視鏡検査と相補的な検査になると考えられている 31

4)シンチグラフィー

① 出血シンチグラフィー

99mTc標識赤血球を静脈注射し経時的にガンマカメラで撮影することで腸管内に出血した赤血球が描出され腸管内を移動する像から出血源を診断する検査である.出血量が0.5ml/min以上の出血を同定することができ,小腸に限らず全消化管の出血源検索に有用である.しかし,腸管内に漏出した核種の逆流などもあり,小腸出血の診断においてはとくに出血部位や病変を正確に診断することは困難であり,出血部位の推定にとどまる.

② 異所性胃粘膜シンチグラフィー(メッケルシンチグラフフィー)

99mTcO4 -を静脈注射しガンマカメラで撮影することで胃粘膜の壁細胞に取り込まれ分泌された像から異所性胃粘膜を同定することができる検査であり,異所性胃粘膜を伴うメッケル憩室を診断することができる.しかし,メッケル憩室に異所性胃粘膜を伴う頻度は10-20%と高くはない.

5)血管造影検査

小腸に限らず全消化管の活動性消化管出血症例に用いられる.血行動態が不安定な患者に対し行われることが多くIVRによる治療を行うことも可能である.腸管への血管外漏出を検出することで消化管出血を診断するため出血量が0.5-1.0ml/minと多くないと診断ができない.

Ⅲ 小腸出血性病変に対する治療法

小腸の出血性病変に対する止血治療はその出血源の種類により対応が異なる.主な小腸出血性病変に対する治療法を示す(Table 1).

Table 1 

小腸出血性病変に対する治療法.

1)内視鏡的治療(止血クリップ法,熱凝固法,局所注射法)

上部消化管および下部消化管の消化管出血と同様に小腸出血においても内視鏡的止血術が第一選択になる.以下に内視鏡止血法について記載する.

① 止血クリップ法

止血クリップ法は露出血管を直接把持し結紮する方法である.露出血管を確実に把持しなければ止血効果は得られず,特に小腸においてはスコープの操作性が悪いこともあり難易度が高い.また,クリップは自然に脱落することが多く止血前に脱落してしまうと再出血をきたす.機械的に粘膜を損傷し穿孔させる危険性もあるので注意が必要である.主に血管性病変や露出血管を伴う潰瘍性病変,腫瘍性病変,憩室症に対し止血クリップ法を用いる.

② 熱凝固法

局所に発生する熱により露出血管を凝固させ止血する方法である.APCとモノポーラーまたはバイポーラーの止血鉗子による凝固法がある.APCはイオン化したアルゴンガスに高周波電流を放電させることで組織を凝固させる非接触型の高周波止血法である.通常粘膜筋版から粘膜下層までの深さしか凝固されないが,小腸粘膜は薄く穿孔の危険性があるため,止血部位に生理食塩水を局所注射するなど工夫が必要である.主にangioectasia矢野山本分類Type 1a,1bに用いられる.

一方,止血鉗子による凝固法も小腸で使用可能であるが,露出血管を確実に把持する必要があり難易度が高い.また,焼灼に伴う組織損傷や潰瘍形成に伴い穿孔などの偶発症を伴うこともあり止血治療前に止血部位に生理食塩水を局所注射するなど工夫が必要である.主に露出血管を伴う血管性病変,潰瘍性病変,腫瘍性病変に対し止血鉗子による凝固法を用いられる.

③ 局所注射法

A)高張ナトリウム(Na)-エピネフリン局注法(HSE;hypertonic saline epinephrine)

エピネフリンの強力な血管収縮作用と高張ナトリウム(Na)の物理的性質によるエピネフリン作用時間の延長,周囲組織の膨化,血管壁のフィブリノイド変性などの相互作用による血管内腔に血栓を形成し止血する方法である 32.出血点が確認できない場合でも近傍へ局注を行うことで止血が可能である.組織の凝固・固定力がないため組織侵襲は少ない.

B)ポリドカノール局注法

ポリドカノールによる間質の浮腫に伴う血管への圧迫と小血管内の血栓形成,血管内膜炎に伴う血栓形成により止血する方法である.出血点が確認できない場合でも近傍へ局注を行うことで止血が可能である 32.angioectasiaや血管腫に対する有用性が報告されている 33),34

C)シアノアクリレート局注法

n-ブチル-2-シアノアクリレートは血液中のヒドロキシルイオンと反応し血栓形成させ止血する方法である.主に静脈瘤からの出血に対する止血術に対して用いられる.出血している血管内に直接注入されなければ効果が得られない.また,注入部位の壊死や潰瘍形成により出血を起こしたり,他臓器(肺,脳)の塞栓や拘束を引き起したりする可能性がある.

2)IVR;Interventional Radiology

小腸内視鏡検査を行うことができないほどの循環動態が不安定な場合や内視鏡止血術が困難な場合に選択される.血管造影検査で消化管への血管外漏出や仮性動脈瘤,angioectasia,動静脈瘻,動静脈奇形などの血管奇形が同定された場合に,引き続きIVRを行うことになる.IVRとしては一般的に経カテーテル的動脈塞栓術(TAE;transcatheter arterial embolization)が行われる.カテーテルを止血部位まで進めることができれば塞栓物質を留置し止血を行う.塞栓物質には主に金属コイルやゼラチンスポンジが用いられる.

3)外科的加療

内視鏡的治療やIVRで止血できない場合に外科的加療を選択することになる.腸管外から観察で出血点が分かるほどの大出血や腫瘍性病変ではない場合は,出血点をはっきりさせるため事前に内視鏡検査で点墨やクリッピングによるマーキングや術中内視鏡を併用する.内視鏡検査が困難な場合に血管造影検査やIVRを行い金属コイルの留置は出血部位を推定し切除範囲を決めることができる.一般的には出血部位に対し小腸部分切除を行うことが多い.

Ⅳ 主な小腸出血性病変

主な小腸出血性病変をTable 2に示す.年齢は小腸出血性病変の出血源を予想するうえで重要な因子であり,小腸出血性病変が異なってくる 35.炎症性腸疾患や,メッケル憩室からの出血は40歳未満の患者に見つかるが,angioectasiaなどの血管性病変や腫瘍,NSAIDs潰瘍は40歳以上の患者に見つかることが多い.Dielafoy’s lesionや小腸腫瘍は年齢にかかわらず見つかると報告されている(Table 2).

Table 2 

主な小腸出血性病変 35

1)血管性病変

小腸血管性病変は病理組織学的に①静脈の特徴をもつangioectasia,②動脈の特徴をもつ(Dieulafoy’s lesion),③動脈と静脈の特徴をもつ病変(arteriovenous malformation)の3種類に分類される 36.矢野,山本らこれらの病理学的な特徴に基づき,小腸血管性病変の内視鏡分類(矢野・山本分類)を提唱している(Table 3 37.Type 1a,1b(Figure 2)はangioectasia,Type 2a(Figure 3),2bはDieulafoy’s lesion,Type 3はAVMに相当する.小腸の血管性病変はType 1aおよび1bが最も多く,Type 2a,2bが続く.肝硬変や血液透析,弁膜症性心疾患などがリスク因子として報告されており 34),38,小腸血管性病変は同時性および異時性に多発することが多い.止血治療法は病変分類別に異なりType 1aおよび1bはAPCやポリドカノール局注療法による止血術が行われる 33),34.Type 2aおよび2bは動脈性の病変であるため止血クリップによる治療が行われる.Type 3はIVRや外科的治療が選択される.

Table 3 

小腸血管性病変の内視鏡分類(矢野・山本分類) 37

Figure 2 

angioectasia.

境界明瞭な鮮紅色の発赤斑を認める.矢野・山本分類Type 1b.

Figure 3 

Dieulafoy’s lesion.

発赤点から拍動性の活動性出血(矢印)を認める.矢野・山本分類Type 2a.

2)潰瘍性病変

クローン病

クローン病の典型的な小腸病変は大腸病変と同様に縦走潰瘍,敷石像,腸管狭窄などの所見を呈する(Figure 4).クローン病の潰瘍から多量出血することは少なく,慢性出血を疑う貧血を認める場合はクローン病の治療が優先される.持続する出血を認める場合は小腸内視鏡検査を行い,クリッピングなどの内視鏡的治療も考慮されるが,多量出血の場合は外科的加療の適応になる.

Figure 4 

クローン病(縦走潰瘍).

活動性の縦走潰瘍および消化管狭窄を認める.

NSAIDs起因性小腸潰瘍

NSAIDs起因性小腸潰瘍の診断基準は確立したものはないが松本らの提唱に基づき 39,以下を満たすものと報告されている.

① 内視鏡的に小腸の潰瘍性病変もしくは膜様狭窄を認める.

② NSAIDsの内服歴があり,内服中止により症状または所見の改善が認められる.

③ 特異的炎症性腸疾患や病原細菌の感染などほかの原因が否定されている.

内視鏡像はびらん,小潰瘍,打ち抜き潰瘍,円形潰瘍,輪状潰瘍,膜様狭窄など様々な形態を示し,空腸病変より回腸病変が多く,多発することが多い(Figure 5).持続する出血を認める場合は小腸内視鏡検査を行い,クリッピングなどの内視鏡的治療も考慮されるが,潰瘍から多量出血することは少なく,NSAIDs起因性小腸潰瘍の原因薬剤の内服中止か,COX2阻害薬などの薬剤の変更が優先される.

Figure 5 

NSAIDs起因性小腸潰瘍(輪状潰瘍,狭窄).

活動性の輪状潰瘍および消化管狭窄を認める.

3)腫瘍性病変

小腸癌

原発性小腸癌の分布は十二指腸に最も多く(55%),次いで空腸(18%),回腸(13%)と続く 40.また,空腸癌はTreitz靱帯から60cm以内が83.3%を占め,また,回腸癌はBauhin弁より40cm以内が72.2%を占めていたと報告されており 41,小腸癌は十二指腸および近位空腸,遠位回腸に好発する.肉眼的にポリープ型,隆起型,浸潤型,狭窄型に分類される(Figure 6).小腸癌の治療の基本は外科切除であり,リンパ節郭清を伴う小腸部分切除が行われる.また,病変が十二指腸にある場合は膵頭十二指腸切除を行うことや,回腸末端の場合は回盲部切除を行うことがある.

Figure 6 

小腸癌(輪状狭窄型).

空腸に周堤隆起を伴う不整形な潰瘍性病変を認める.自然出血を伴い全周性の狭窄を呈する.

転移性小腸癌の原発巣は肺癌が最も多く,悪性黒色腫,食道癌,腎癌,乳癌,大腸癌などが知られている.腸閉塞,消化管出血,穿孔,腸重積に伴う症状で見つかる.空腸に多く肉眼的には中心に深い潰瘍を有する腫瘤として認められる(Figure 7).

Figure 7 

転移性小腸癌(肺癌).

空腸に不整形な深い潰瘍性病変を認める.

GIST(Gastrointestinal stromal tumor)

小腸粘膜下腫瘍の中で(Gastrointestinal stromal tumor;GIST)が最も頻度が高い.発育形式は管内型,管外型,壁内型,混合型に分類されるが,小腸GISTは腸管外へ発育する管外型か混合型が多い.肉眼的には粘膜下腫瘍の形態を示し,潰瘍やびらんを伴うこともある(Figure 8).血流が豊富なため生検により多量出血を起こすことがあり不要な生検は行わないほうが良い.小腸GISTの治療は外科的切除が原則である.多量出血の止血目的に血管造影およびIVRを行うこともある.切除不能例や再発例においてはイマチニブやスニチニブの投与が考慮される.

Figure 8 

GIST(管腔内発育型).

空腸に正色調で管腔内発育型の粘膜下腫瘍を認める.

悪性リンパ腫

小腸の悪性リンパ腫の大部分は非ホジキンリンパ腫であり,組織型はびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(Diffuse large B-cell lymphoma;DLBCL)が最も多く,MALTリンパ腫,T細胞リンパ腫,濾胞リンパ腫の順である.肉眼的に大きく限局型とびまん型に分類され,さらに限局型には腫瘤型と潰瘍型,びまん型には狭窄型,脳回状型,MLP(multiple lymphomatous polyposis)型,腸炎類似型に細分類される(Figure 9).癌に比べて柔らかい腫瘍であり脆弱性,易出血性は乏しい.治療については外科切除や化学療法を中心に行われる.

Figure 9 

DLBCL(Diffuse large B cell lymphoma).

回腸に全周性の強い狭窄を伴う潰瘍性病変を認める.

4)その他

小腸憩室

メッケル憩室は胎生期卵黄腸管の遺残によって生じる真性憩室で,消化管の先天奇形の中で最も高頻度である.成人例では通常回盲弁から約1m(0.6~1.3m)口側回腸の腸間膜付着対側に開口部を有する直径約1~2cm,長さ約数cm~10数cmの指状の憩室である.憩室が反転し,細長い粘膜下腫瘍様を呈することもある(Figure 10).組織学的には,絨毛を伴う正常小腸上皮に被われた,筋層,漿膜を伴う真性憩室である.異所性胃粘膜の迷入が見られ小腸粘膜に消化性潰瘍を生じ,消化管出血の原因となる.

Figure 10 

メッケル憩室(反転).

メッケル憩室が反転し粘膜下腫瘍様である.粘膜は全体に発赤が強く頂部に潰瘍を認める.

メッケル憩室以外の小腸憩室の頻度は低く,Treitz靭帯より50cmまでの上部空腸に好発.肛門側にいくほど頻度が減るが,回腸末端ではやや頻度が高い.ほとんどが多発で高齢者に多い.主として仮性憩室である.憩室内の血管が破綻して消化管出血の原因となる(Figure 11).

Figure 11 

空腸憩室.

空腸憩室内に出血源となった露出血管(矢印)を認める.

予後

小腸出血の内視鏡治療後の予後については再出血をアウトカムにしているものが多い.血管性病変に対する内視鏡治療後の予後に関する報告が多く再出血率は10-50%と報告されている 23),42)~44.Samahaらは単施設の後ろ向きコホート研究で261人の小腸出血疑いの患者にDBEを施行し133人のangioectasiaにアルゴンプラズマ焼灼を施行しており,36カ月のフォローアップで46%が再出血している.angioectasia治療後の再出血リスク因子は血管性病変多発,65歳以上,空腸病変,弁膜症性心疾患,慢性腎不全,抗凝固薬使用,輸血と報告されている.一方,Gersonらは小腸出血を疑ってDBE検査を行った患者を対象に予後を検討しており,同意が得られた101人に対し平均11カ月後と30カ月後に電話調査を行い予後を評価している.12カ月後の再出血は23%,30カ月後の再出血は24%に認めている 45.また,NiikuraらはOGIBに対しカプセル内視鏡検査を行った患者320人を対象に多施設後ろ向きコホート研究で予後を検討しており,累積再出血率は1年で11%,5年で35.3%の再出血を認めている 46.カプセル内視鏡検査後の再出血リスク因子は女性,肝硬変症,ワーファリン使用,顕性出血,カプセル内視鏡陽性所見であった.これらのリスク因子数による再出血率に基づき,われわれはOGIB後のフォローアップ期間を,リスク因子がない場合にはフォローアップ不要,リスク因子数が1つの場合は1年間,リスク因子数が4つ以上の場合は1年以上行うよう推奨している 46

Ⅴ おわりに

小腸出血性病変に対する診断と治療について概説した.バルーン内視鏡検査やカプセル内視鏡検査などの小腸内視鏡検査が可能になり,小腸出血性病変に対し内視鏡診断および内視鏡治療が可能になりその診断および治療体系は大きく変化した.しかし,各検査による小腸出血性病変の診断率は高くはないため,様々な検査を相補的に組み合わせて診断していくことが重要である.さらに小腸内視鏡により内視鏡的な止血術も可能になってきている.しかし,小腸出血性病変の再出血率は高い.再出血率を低下させるような治療方法の開発やリスク因子への介入について,まだ検討がなく今後に期待したい.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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