2017 年 59 巻 10 号 p. 2564
【背景と目的】悪性肝門部胆管閉塞に対するself-expandable metal stents(SEMSs)留置で,両葉,片葉の効果についてはまだ議論がある.本試験は切除不能悪性肝門部胆管閉塞症例に対する,前向きの多施設共同比較試験で両葉が片葉留置よりも優れているかどうかを検証する試験である.
【対象と方法】切除不能悪性肝門部胆管閉塞で,SEMSの内視鏡的な両葉または片葉留置予定の症例が対象である.主要評価項目は留置成功例に対する初回のRe-intervention率で,副次的評価項目はステント開存期間,技術的・臨床的成功率,偶発症,生存期間である.
【結果】133症例の病理学的に診断された症例を両葉群(67例),片葉群(66例)に無作為に割付けた.両葉群と片葉群の技術的成功率は95.5%(64/67)と100%(66/66)であった(p=0.047).Re-intervention施行率は42.6%(26/61),60.3%(38/63)で,片葉群のほうが有意に高率であった(p=0.049).累積ステント開存期間中央値は252日,139日であり,ステント閉塞危険率は有意に片葉群で高率であった(p<0.01).ステント開存に関する因子の多変量解析では,両葉留置が望ましいという結果であった(adjusted hazard ratio 0.30;95% CI,0.172-0.521;p<0.001).生存期間と後期の偶発症発生率は二群間で差を認めなかった.
【結論】切除不能悪性肝門部胆管閉塞に対するSEMS留置では,両葉留置と片葉留置は同様の手技成功率を示したが,両葉留置の方がRe-interventionを要する頻度が低く,ステント開存期間も長いという結果であった.
本論文は切除不能悪性肝門部胆管閉塞に対するSEMを用いたステンティングで,両葉と片葉留置を比較した論文である.長らく議論があったが,Randomized study(RCT)がなかったので,決着がつかなかった分野である.両葉の方が有意に長い開存期間と,低いRe-intervention頻度を示し,両葉が良いという結果である.しかし,本邦での応用には注意を要する.手術を念頭に置いた場合には温存予定肝のみをドレナージし,非切除が決定してから最終形のSEMS留置を行うのであるが,そのような治療戦略には言及されていない.また,本邦では多くの施設で乳頭機能を温存する方針をとっているが,それに関しても言及されていない.また,Side-by-side,Stent-in-stentの両方が含まれており,その詳細は不明である.両葉留置では非ドレナージ領域胆管炎の頻度が減ることが期待されるが,ステント閉塞による胆管炎と区別されていないので,なぜ両葉群が優れているのかは説明が難しい状態である.このように,未だに様々な疑問が未解決のままであり,標準化には至らないが,単純に比較した場合に両葉群が優れるという結果をRCTで示したことは大きな成果である.今後はさらに優れたDesignの研究が行われ,疑問を一つずつ解決し,ステンティングの標準化がなされれば素晴らしいと思う.