日本消化器内視鏡学会雑誌
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指導施設における女性内視鏡医のキャリアサポート体制に関するアンケート調査結果
原田 直彦中村 真一平岡 佐規子白鳥 敬子春間 賢河合 隆森田 圭紀横井 千寿南 ひとみ
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2017 年 59 巻 11 号 p. 2640-2646

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要旨

目的:女性内視鏡医のキャリアサポート体制の現状を把握し,改善すべき点を明らかにする.

方法:日本消化器内視鏡学会指導施設1,280施設に対し「女性内視鏡医のキャリアサポート体制に関するアンケート調査」を行った.

結果:115施設(9.0%)より回答を得た.115施設中,キャリアサポート体制を有する施設は22施設(19.1%)のみであった.体制無しの施設中,検討中は41.1%であり,多忙,指導医不足等の理由により検討していない施設が57.8%であった.

結論:女性内視鏡医のキャリアサポート体制に対する関心が少ない実態が明らかとなった.サポート体制を有する施設での研修内容は充実していたが,少数であり,サポート体制を有する指導施設を増加させることが必要と思われる.そのためには女性内視鏡医のキャリアサポート体制に対する関心を高め,協力的な指導医を増やすことが重要である.

Ⅰ 緒  言

近年,女性医師は増加しており,医師国家試験合格者の30%を占めるに至っているが,日本消化器内視鏡学会の女性会員は少なく13%である(2016年12月16日時点女性会員数:4,703名).女性患者は,女性医師による診察を希望することが多く,内視鏡検査,中でも大腸内視鏡検査においては,女性被験者は女性内視鏡医による検査を希望する割合が高く,女性内視鏡医の育成が望まれている 1.しかしながら,女性患者の要望を満たす十分な人数の女性内視鏡医は未だ育成されていない.臨床現場における女性医師の必要性は高まっているが,現状では種々の解決すべき課題が山積している.出産,育児などのライフイベントを契機に女性医師が離職すると人員が減った臨床現場は多忙となり,残されたスタッフは過剰労働を余儀なくされる.よって,女性内視鏡医の離職を予防すること,復職を促すことが,臨床現場の職場環境を改善するためにも必要と思われる.そしてそのためには,専門医取得等へのキャリアサポートが求められるが,より実効性高く行うためには女性のライフスタイルにマッチした適切な体制を構築する必要がある 2)~4.しかし,本邦の女性内視鏡医に対する教育研修体制の現状は十分には把握されていない.そこで,女性内視鏡医に対する教育研修体制の現状を明らかにする目的で,2015年12月-2016年1月の間,附置研究会「女性内視鏡医のキャリアサポートを目指した教育研修体制確立に関する研究会」より日本消化器内視鏡学会指導施設に対し「女性内視鏡医のキャリアサポート体制に関するアンケート調査」を行った.115施設より回答を得たので報告する.

Ⅱ 目  的

女性内視鏡医キャリアサポート体制の現状を把握し,改善すべき点を明らかにする.

Ⅲ 方  法

2015年12月-2016年1月の間,附置研究会「女性内視鏡医のキャリアサポートを目指した教育研修体制確立に関する研究会」より日本消化器内視鏡学会指導施設に対し「女性内視鏡医のキャリアサポート体制に関するアンケート調査」を行った.各指導施設に対し本学会からEメールによりアンケートを依頼した.回答は指導施設名,指導医名を匿名化し行った.

Ⅳ 結  果

2015年時点での指導施設全1,356施設中,代表者メールアドレスが確認できた1,280施設にメールを送信し,115施設(9.0%)より回答を得た.

回答のあった指導施設の背景として内視鏡検査件数は中央値(範囲)6,000件(1,200-90,000件),内視鏡スタッフ数8名(2-50名),指導医数2名(1-16名),専門医数3名(0-31名)であった.

「女性内視鏡医のキャリアサポート体制」有りは,115施設中22施設(19.1%),無しが90施設(78.3%),未回答3施設(2.6%)であった(Figure 1).

Figure 1 

女性内視鏡医キャリアサポート体制の有無.

キャリアサポート体制有りの22施設中,平成20年以降にスタートした施設が15施設(68.2%)であった.

キャリアサポート体制の期間については,「特に期間を設けていない」施設が17施設(77.3%)であった(Figure 2).

Figure 2 

キャリアサポート体制の期間.

キャリアサポート体制の受け入れ対象について,「自院勤務者に対する支援」12施設(54.5%),「外部医師の受け入れ支援」6施設(27.3%),未回答4施設(18.2%)であった(Figure 3).

Figure 3 

キャリアサポート体制の受け入れ対象.

受け入れ女性医師に求める内視鏡経験数は,「不問」16施設(72.7%),「100-300例」1施設(4.5%),「500例以上」1施設(4.5%)であった(Figure 4).

Figure 4 

受け入れ女性医師に求める内視鏡経験数.

研修者が施設に支払う研修費用(年間)は,無料15施設(68.2%),2万円以上2施設(9.2%),未回答5施設(22.7%)であった(Figure 5).

Figure 5 

研修者が施設に支払う研修費用.

内視鏡シミュレーター,胃モデル,コロンモデル等の練習機器を整備している施設は20施設(90.9%)であった.

これまでのサポート体制受け入れ数の中央値(範囲)は1.5名(0-10名)であり,その内訳は0名2施設,1名8施設,2名3施設,3名3施設,4名1施設,5名1施設,7名1施設,9名1施設,10名1施設であった(Figure 6).

Figure 6 

これまでのサポート体制受け入れ数.

サポート体制を通じて取得した消化器内視鏡専門医取得者数の中央値(範囲)0名(0-7名)であった.その内訳は,0名11施設,1名5施設,3名3施設,7名1施設であった(Figure 7).

Figure 7 

サポート体制を通じて取得した消化器内視鏡専門医取得者数.

主な指導者は,指導医16施設,専門医15施設,それ以外のスタッフ2施設であった(複数回答可).

年間に研修可能な内視鏡件数は,100例以上が21施設(95.5%)であった(Figure 8).

Figure 8 

年間に研修可能な内視鏡件数.

治療内視鏡も研修可能な施設は,19施設(86.4%),不可施設2施設(9.2%),未回答1施設(5.4%)であった(Figure 9).

Figure 9 

治療内視鏡も研修可能な施設.

キャリアサポート体制無しの90施設中,今後のキャリアサポート体制構築について検討中が37施設(41.1%),検討無しは52施設(57.8%)であった(Figure 10).

Figure 10 

今後のキャリアサポート体制構築について検討.

検討無しの理由として,「多忙のため」19施設(16.4%),「指導者が確保できない」13施設(11.2%),「採用枠がない」10施設(8.6%),「指導しても安定した戦力にならない」5施設(4.3%),「金銭的理由」2施設(1.7%),「施設長の理解が得られない」1施設(0.9%),「女性の指導に興味がない」1施設(0.9%)であった(複数回答可)(Figure 11).その他の回答として記載された中で多かった回答は「該当する女性医師がいない」19施設(43.2%)であり,次に「男女の区別なく指導している」6施設(13.6%)であった.

Figure 11 

女性内視鏡医サポート体制整備を検討していない理由.

「上記理由が解決すればサポート体制を整備したいと思う」施設は52施設中37施設(71.2%),「思わない」施設7施設(13.5%),未回答8施設(15.4%)であった(Figure 12).「整備したいと思わない」理由として「女性内視鏡医がおらず現時点では需要がない」等であった.

Figure 12 

体制整備を検討していない理由が解決すればサポート体制を整備したいと思う.

Ⅴ 考  察

1,280指導施設にメールでアンケートを送信し,回答が得られたのは115施設(9.0%)のみであった.回答率が低いため,本アンケート回答は本邦の女性内視鏡医キャリアサポート体制の実情を反映できていないが,回答率の低さから指導施設での女性内視鏡医サポートに対する関心が低いことが窺えた.

回答が得られた指導施設中,女性内視鏡医のキャリアサポート体制を有する指導施設は19.1%と少なく,女性内視鏡医にとってはキャリアを形成する機会が得られにくい現状が明らかとなった.対照的に,キャリアサポート体制を有する施設では,胃モデル等の練習機器が整備され,年間100件以上の内視鏡検査,また治療内視鏡を経験することもでき,充実した内容の研修を経験することが可能である.しかも,ほとんどの施設では,無料で研修可能であった.

翻って,サポート体制がない施設では,多忙のため女性内視鏡医の指導に手が回らない現実と女性医師サポートに対する理解が乏しい施設の存在が窺われた.また,一部には「女性への指導に興味がない」と回答した指導施設も存在していた.

サポート体制の整備を検討していない施設からの回答の中で,「該当する女性医師がいない」との回答が多く見られた.しかし,該当する女性内視鏡医はいるが,その需要を指導施設が掘り起こせていない可能性も残る.女性内視鏡医にとっては,研修可能な指導施設の情報が得られないため,指導施設にアプローチできず復職を諦めている事態も推察される.日本消化器病学会キャリア支援委員会ではキャリア支援協力施設をweb上で公開しており,女性医師からの施設へのアプローチを支援している 5.本学会においても,女性内視鏡医キャリアサポートに協力的な指導施設の情報をwebなどで発信し,復職希望の女性内視鏡医がアプローチしやすい環境を整備することが望まれる.

今後の対策として,女性内視鏡医キャリアサポート体制に協力的な指導施設を増やす対策が必要と思われる.そのためには,指導医クラスにおいて女性内視鏡医キャリアサポート体制への関心を高め,協力的な指導医を増やす努力が必要である.

筆者施設(九州医療センター)では,復職支援を目的として女性内視鏡医キャリアサポート体制を構築したところ,これまで12名の女性内視鏡医が週1日非常勤医師として研修し3名が消化器内視鏡専門医を取得することができた.常勤医は処置・治療に追われ多忙を極めていたが,本体制開始後からは女性内視鏡医が通常検査を捌いてくれる様になり常勤医の負担軽減に繋がった.この間,女性医師達は一出動日当たり上部消化管内視鏡検査3.4件,下部消化管内視鏡検査1.1件,大腸ポリープ切除術0.6件を施行しており,収益増にも繋がった.指導医・常勤医にとって内視鏡医キャリアサポート体制は,負担増ではなく負担軽減になった具体例としてお示しする.

また,キャリアサポート体制は,女性内視鏡医のみならず,留学後,基礎研究後の男性医師にも適用でき,さらには初期研修医に対する指導・勧誘にも利用可能なため,内視鏡医療を志す人的財産の活用手段として指導施設に整備することが望まれる.

Ⅵ 結  論

女性内視鏡医のキャリアサポート体制に対する関心が少ない実態が明らかとなった.サポート体制を有する施設での研修内容は充実していたが,少数であり,サポート体制を有する指導施設を増加させることが必要と思われる.そのためには女性内視鏡医のキャリアサポート体制に対する関心を高め,協力的な指導医を増やすことが重要である.

謝 辞

アンケート調査・集計にご協力頂いた指導施設,指導医の皆様,飯田紀子氏に深謝致します.

 

追記:本論文の内容は第2回「女性内視鏡医のキャリアサポートを目指した教育研修体制確立に関する研究会」(2016年)で発表した.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:河合 隆(武田薬品,大塚製薬,第一三共,アストラゼネカ)

文 献
 
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