2017 年 59 巻 12 号 p. 2750-2759
【背景】上部消化管内視鏡検査における咽頭観察への関心が高まり,Narrow band imagingを用いた観察が広まったことにより,表在型咽頭癌を治療する機会が増加している.本検討は表在型咽頭癌に対する内視鏡的切除の短期,長期成績を評価することを目的とした.
【方法】2006年から2013年に当院で治療した表在型咽頭癌113症例,169病変を対象とした.当院では最初は内視鏡的粘膜切除術(EMR),次に従来の内視鏡的粘膜下層剥離術(cESD),そして最近では補助細径内視鏡による牽引を利用したdouble-scope ESD(dsESD)を施行している.観察期間の中央値は30カ月であった.
【結果】すべての病変は扁平上皮癌であった.cESD,dsESDの完全切除率は56.4%,82.3%(p<0.01),局所再発率は2.6%,0.0%であった.dsESDにおける切除時間は有意にcESDに比べ短かった(p<0.05).リンパ節転移再発は4例に認められたが,いずれも頸部リンパ節郭清を施行され中央値48カ月を経て生存している.リンパ節転移の危険因子は上皮下浸潤,腫瘍の厚み1,000μm以上,滴状浸潤と脈管侵襲であった.5年全生存率は79.5%で表在型咽頭癌による死亡例はなかった.表在型咽頭癌の異時多発病変の5年累積発生率は46.5%であった.
【結論】表在型咽頭癌に対する内視鏡的切除は異時性多発癌を多く認めたが,適切で有効な治療法であった.切除方法としてdsESDは有効であった.
咽頭癌はしばしば進行癌として診断され,予後が悪い疾患である.咽頭癌の患者には外科的切除,化学放射線療法などが施行されるが,どちらの治療も美容的,機能的な喪失を伴いQOLを損なう 1),2).近年のNarrow band imaging(NBI)を始めとした画像強調内視鏡の進歩により表在型咽頭癌が発見される頻度が多くなった 3),4).また内視鏡医の中でも表在型咽頭癌に対する関心が高まっており病変の発見が増えている.内視鏡的粘膜切除術(EMR;Endoscopic mucosal resection)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD;Endoscopic submucosal dissection)は消化管癌で確立している治療であるため 5),6),表在型咽頭癌に対するそれらの内視鏡的切除は安全で有効な治療法として広く受け入れられている 7)~9).
われわれは以前に表在型咽頭癌に対する内視鏡的切除の短期成績が良好であること,ESDはEMRと比べて優れていることを報告している 10).しかしながら,ESDでは治療時間が長くなり,喉頭浮腫の頻度が高くなった.さらに喉頭浮腫の原因について多変量解析で検討すると,長い処置時間と有意な関連があった 10).
この問題を克服するために,経鼻挿入する細径の補助内視鏡と経口挿入する主内視鏡の2本を用いるdouble-scope ESD(dsESD)を始めた.本稿では新しい表在型咽頭癌に対する内視鏡的切除法であるdsESDの短期成績を評価し,異時性多発病変とリンパ節転移の頻度を含めた長期成績について検討した.
2006年10月から2013年12月までにがん研有明病院で表在型中咽頭癌または下咽頭癌に対して内視鏡的切除を施行された113症例を対象とした.われわれの基本的な内視鏡的切除の選択基準が本検討症例の選択基準となっている.(ⅰ)組織学的に扁平上皮癌(SCC;squamous cell carcinoma)と診断されている.(ⅱ)癌が上皮層また上皮下層に限局すると内視鏡的に診断されている.(ⅲ)CTや頸部エコーで明らかなリンパ節転移,他臓器転移を認めていない.両側の梨状陥凹に病変が進展している場合,食道入口部に全周性に病変が広がっている場合は内視鏡的切除適応から除外している.内視鏡医と頭頸部外科医の両方がすべての患者を診察し切除可能性,内視鏡的切除の適応について検討している.更に頭頸部外科医は放射線科医と腫瘍内科医と共に化学放射線療法や外科的切除の治療選択肢についても検討会の中で話しあって治療方針を決めている.
すべての症例で術前にNBI併用拡大内視鏡で範囲診断を行い,転移診断のために頸胸部CT(可能であれば造影)と頸部エコーを行っており,頭頸部外科医も耳鼻咽喉科用内視鏡を用いて口腔,咽頭を検査している.すべての症例は内視鏡的切除,化学放射線療法,外科的切除についての治療選択肢について説明され,治療について書面で同意を得ている.すべての治療は咽頭の解剖学的構造を熟知し,内視鏡処置具や高周波装置などの周辺機器に習熟し,200例以上の消化管ESDを施行している,十分な経験のある内視鏡医によって行われた.
病変の表現型は日本食道学会の発行する食道癌取り扱い規約第10版に沿って記載され11),この研究は院内の倫理委員会に承認されている.
(2)内視鏡的切除の手順当院での表在型咽頭癌の内視鏡的切除は2006年から2009年はEMR,2008年から2010年には従来型ESD(cESD;conventional ESD),2010年から2014年にdsESDを用いて行っている.しかし特に同時性多発病変を有する場合には治療時間を短縮するために,EMRで一括切除が可能と判断すればdsESDでなくEMRで切除することもしばしばある.
内視鏡的切除は気管内挿管を伴う全身麻酔下で行い,頭頸部外科医が佐藤式直達喉頭鏡(10342100;Nagashima Medical Instruments Co, Ltd, Tokyo, Japan)を用いて喉頭を展開し十分なワーキングスペースを作って施行している.次に高精度内視鏡(H260, Q260J or H260Z;Olympus Co., Tokyo, Japan)を用いて白色光,NBIでの観察に加えてヨード染色を行って病変を確認する.アルゴンプラズマ凝固法(APC;Argon plasma coagulation)を用いて病変の周りにマーキングを行い切除を開始する.
cESDは内視鏡の先端にプラスチックキャップ(D-201-11804;Olympus Co.)を装着し,ニードルナイフ(KD-1;Olympus Co.)を用いて行った.0.005mg/mlのエピネフリンを含んだ生理食塩水を上皮下層に局注し上皮層をマーキングに沿って切開する.次に病変を十分に切除するために追加局注を適宜行いながら,病変を剥離する.
dsESDでは経鼻挿入した細径内視鏡(GIF-XP260N;Olympus Co.)で牽引を行い,経口挿入した主内視鏡(GIF-Q260J;Olympus Co.)でデュアルナイフ(KD-650 L;Olympus Co.)を用いて切開,剥離を行った.主内視鏡を用いた全周切開と十分な深切りの後に,補助内視鏡を内視鏡システムにつなぎ変え剥離しかかった病変の裏側を補助内視鏡の把持鉗子(FG-4L-1;Olympus Co.;Figure 1-h)で把持した.補助内視鏡のアングルを操作して良い方向に病変を牽引し(Figure 1-c~j),牽引を維持したまま補助内視鏡を主内視鏡と干渉しないように口腔と鼻腔の境界まで引き,補助内視鏡はアングルを固定して内視鏡システムから外した状態でテーブルの上に置く.その後に内視鏡システムに主内視鏡をつなぎ,剥離を継続する.補助内視鏡の牽引が役に立ち主内視鏡を用いて順調に病変を剥離することが出来る.剥離が進むと補助内視鏡のアングルはより適切な牽引を得るために適宜調整することが出来る.複雑な構造部位に位置する病変はある端を牽引して剥離したのちに,反対の端を牽引して剥離を進めることも出来る.dsESDではニードルナイフより短く,狭い咽頭内で安全に使用できるデュアルナイフを用いた.頭頸部外科医は治療中ずっと付き添った.

表在型咽頭癌に対するdouble-scope ESD(dsESD)の画像.
a:発赤調の平坦病変を下咽頭の左梨状陥凹に認める.
b:ヨードを用いた色素内視鏡で不染域として認識された.
c:病変部位の構造上,上皮下に入り込んで剥離を進めることは困難だった.
d:補助内視鏡から出した把持鉗子で病変を把持して,病変の剥離部位に入り込むスペースができた.
e:補助内視鏡のによる牽引によって剥離すべき部位がはっきりとした.
f:dsESDで合併症なく病変を切除した.
g:病変は一括切除され,組織学的にはSCCでCISであった.
h:把持鉗子は病変を把持した状態で固定ができるFG-4L-1を使用した.
i:補助内視鏡を用いて病変を把持する前.
j:病変を把持,牽引した後.剥離が容易になる.
内視鏡的切除の後に辺縁に遺残腫瘍を認めた際はAPCを用いて腫瘍を焼灼した.cESD,dsESDで治療中に完全に剥離することが難しいと判断した時は,スネアを用いて病変を切除した.
(3)病理組織学的評価切除標本は以前の報告通り2mm毎に切り出されて病理組織学的に評価した.切除検体数に応じて一括切除か分割切除に分類された 10).追加APC焼灼が必要とされた病変は一括切除からは除外された.完全切除は一括切除かつ断端陰性と定義した.
滴状浸潤は病変の先進する最深部から離れて癌細胞が浸潤する浸潤形式をいい,食道癌でリンパ節転移の危険因子になると報告されている 12).われわれは孤立した癌胞巣の癌細胞が4個以下の時に滴状浸潤と診断している.
(4)内視鏡的切除後のフォローアップ計画翌日,頭頸部外科医が耳鼻咽喉科用内視鏡を施行し喉頭浮腫や声帯麻痺の有無を確認し,切除後潰瘍からの出血がないことを確認する.その後,患者の状態と血液検査の結果を考慮して食事の開始時期を話し合う.通常は内視鏡的切除後1-3日後である.頭頸部外科医の内視鏡による観察は必要に応じて数日毎に行う.
フォローアップの検査はすべての患者に対して1年に2-3度行う.NBI併用の上部消化管内視鏡検査,頸部エコー,頸胸部CT,SCCなどの腫瘍マーカーを含めた血液検査などを行う.頭頸部外科医も最低でも1年に2度は内視鏡を含めた診察を行う.
(5)同時性多発癌と異時性多発癌同時性多発癌は初回治療時の術前検査の際に,異時性多発癌は内視鏡的切除より後にそれぞれ診断された癌と定義した.異時性の表在型咽頭癌は初回内視鏡的切除時のルゴール染色で指摘されなかったが,フォローアップ時に診断された病変と定義した.新病変が内視鏡的切除後の瘢痕から離れていれば異時性多発癌,瘢痕に接していれば局所再発と判断した.
(6)統計学的事項すべての連続変数は中央値と範囲で示した.治療成績はスチューデントのT検定,フィッシャーの正確度確率検定,χ二乗検定で解析した.生存率と異時性多発癌の累積発生率はカプランマイヤー法を用いて解析した.GraphPad PRISM(GraphPad Software, Inc., La Jolla, CA, USA)を統計的解析に使用した.P値が0.05未満の際に統計学的に有意と判断した.
われわれは113症例に認めた169病変の表在型咽頭癌を内視鏡的に切除した.110症例は男性で年齢の中央値は66歳であった.すべての病変は組織学的にSCCと診断された(Table 1).以前にも報告した通り 10),病変は両梨状陥凹に131病変(77.6%)と多く認め,次に中下咽頭の後壁に27病変(15.9%)を認めた(Table 1).興味深いことに78%の患者は悪性疾患の既往があり,30.3カ月の観察期間中に39%の患者が同時性または異時性の他臓器重複癌を有した.食道癌が最も多い同時性または異時性の他臓器重複癌で頭頸部癌,胃癌が続いた(Table 2).

症例,病変の特徴.

表在型咽頭癌症例における悪性疾患の併存率.
Table 3にcESDと比較してdsESDの治療成績を示した.一括切除の成功率はいずれも高く有意差はないが,dsESDではcESDと比べて少し高かった(94.9% vs 84.6%,P=0.08).その上,完全切除率はdsESDではcESDと比べ著明に高かった(83.5% vs 56.4%,P<0.01,Table 3).その結果,局所再発率はdsESDではcESDと比べ低かった(0% vs 2.6%).剥離の完遂が困難な際にスネアを使用しているが,その使用率はdsESDではcESDと比べ低かった(8.9% vs 35.9%,P<0.01).EMR施行時には腫瘍の遺残に対して追加APC焼灼をしばしば必要としていたが(35.3%)10),dsESD,cESDでは施行しなかった.

内視鏡的切除の短期成績と合併症.
治療時間はdsESDではcESDと比べて有意に短く(P<0.05).120分以上の治療時間を要した症例割合はdsESDではcESDと比べ少なかった(19.7% vs 46.9%;P<0.01,Table 3).これらの結果よりdsESDでは効果的により早く,より完全な切除が出来ていることが分かる.更にdsESD症例にはESDが困難である梨状陥凹や輪状後部の病変割合が有意に高かった(Table 3).
喉頭浮腫を来たした13症例の内11症例は一時的な気管切開が必要であり,2症例はステロイド投与を行い翌日までの挿管管理を行った.
(3)内視鏡的切除後の再発4症例4病変で局所再発を認め,4症例でリンパ節転移を認めた.局所再発については3症例では再度,内視鏡的切除を行い治療し得た.1症例は頭頸部外科医が施行した経口的部分切除術後の遺残に対してEMRを行った症例で,局所再発に対して放射線療法を行った 10).リンパ節転移は内視鏡的切除後4-20カ月後に認められ(中央値10.5カ月),すべての症例で頸部リンパ節郭清術を施行した.その後に2例では化学療法,1例では放射線療法,1例では化学放射線療法を追加している.その後の再発は認めておらず,頸部リンパ節郭清術から中央値で48カ月経過しているが,すべての症例が生存している.
リンパ節転移を認めたすべての症例で病変の表現型は0-Ⅰまたは0-Ⅱaで(0-Ⅱbではない),上皮下浸潤を伴い(上皮内癌でない),病理的に診断された厚みは1,000μm以上(1,000,2,280,3,160,3,300μm)であった.リンパ節転移を認めた症例と認めなかった症例を比較すると,リンパ管侵襲,静脈侵襲,滴状浸潤はリンパ節転移の有意な危険因子であった(Table 4).

リンパ節転移の危険因子.
113症例の内,13症例で初回内視鏡切除時までに指摘された同時性表在型咽頭癌を認め,フォローアップ中に27症例(24%)に29病変の異時性表在型咽頭癌を認めた.多くの異時性表在型咽頭癌は消化器内視鏡で指摘されたが,左口蓋弓の1例は頭頸部外科医により指摘された.27病変は内視鏡的切除を施行されており,1病変は経口的部分切除を施行され,1病変は内視鏡的切除予定となっている.異時性食道癌を認めた症例は認めなかった症例と比べて異時性表在型咽頭癌を有意に多く認めた(65% vs 17%;P<0.05).咽頭への放射線療法の既往がある症例とない症例を比較したが,異時性表在型咽頭癌の発生率は変わらなかった(21% vs 24%).同時性表在型咽頭癌または異時性表在型咽頭癌を認める症例にも認めない症例にも食道のヨード多発不染は高率に見られ,その割合に差はなかった(82% vs 61%,P=0.15).表在型咽頭癌の累積異時性癌発生率は3年23.8%,5年46.5%と非常に高率であった(Figure 2).

異時性表在型咽頭癌の累積発生率.
表在型咽頭癌の異時性多発癌は高率に起こり,累積発生率は3年23.8%,5年46.5%であった.
内視鏡的切除後の全生存率は3年84.6%,5年79.5%であり(Figure 3),表在型咽頭癌による死亡例はなかった.更に死亡例の内,36%の食道癌死,14%の表在型咽頭癌以外の頭頸部癌死を含む79%は他癌死であった.全例で喉頭は温存された.

表在型咽頭癌に対する内視鏡的切除後の全生存率.
全生存率は3年84.6%,5年79.5%と良好であった.
本検討ではdsESDの有用性と有効性を示し,表在型咽頭癌に対する内視鏡的切除の長期成績は表在型咽頭癌による死亡例がなく良好であると示した.しかし,表在型咽頭癌の異時性多発癌は多く,内視鏡的切除後経過観察中の他臓器重複癌も多く認めた.
Double-scope法は以前に胃ESDにおいて有効であると報告されているが 13),あまり多くは行われていない.補助内視鏡が干渉して主内視鏡の操作が円滑に自由にできないことは一つの大きな理由と思われる.しかし咽頭ESDでは経口挿入された主内視鏡が病変を切除している間,経鼻挿入された補助内視鏡は病変を把持した鉗子を遠くから操作しながら口腔の端にとどまっているため,補助内視鏡が主内視鏡に干渉しない.牽引を用いてESDを行う方法としては湾曲した把持鉗子を手で操作する方法もある 14).しかし,長い鉗子を操作して病変を正確に適切な強さで扱うことは難しかった.頭頸部外科医によって行われるEndoscopic laryngopharyngeal Surgery(ELPS)も他の治療選択肢になる 15).頭頸部外科医がELPSを施行するか,内視鏡医がESDを施行するか施設によって違って良い.
一括切除率はcESDでも十分に高く,dsESDにおいて有意に高率とはならなかったが,より正確な手技が必要とされる完全切除率ではdsESDの方がcESDより有意に高率であった.dsESDでは補助内視鏡によって切除する病変の端を容易に確認して切れるため上皮面を焼くことなく切れる.また時々,解剖学的に狭く構造上病変に近づけない部位を剥離することがあるが,dsESDでは切除する病変を補助内視鏡で操作することによって,どの部位を切るべきかを遠景でも確認することが出来るため正確な切除が可能となる.
切除時間はdsESDで短くなったにもかかわらず,喉頭浮腫の発生率は低下しなかった.これはdsESDでは複雑な構造部位に位置する病変やより広い病変など困難な病変を治療することが増えたことによると思われた.
以前の報告と同様にcarcinoma in situ(CIS)ではリンパ節転移は認めなかった 16)~18).表在型咽頭癌では術後に転移する症例が少ないため術後リンパ節再発の危険因子についての報告は少なく,Kinjoら 18)とわれわれが 19)1,000μm以上の腫瘍の厚みが術後リンパ節再発の危険因子と報告しているのみである.今回の検討では上皮下浸潤,リンパ管侵襲,滴状浸潤など幾つかのリンパ節再発の危険因子を示した.これらは消化管癌におけるリンパ節転移の危険因子として知られているものばかりだが,表在型咽頭癌の内視鏡的切除の治療適応を確立していく上では重要と考える.以前の報告症例と今回の症例を合わせて検討すると,14症例全例で上皮下浸潤を伴う病変があり,43%(6/14)にリンパ管侵襲を伴う病変,86%(12/14)に厚さ1,000μm以上の病変を認めた 17),18),20).これより,リンパ節転移には上皮下浸潤が必要であり,1,000μm以上の厚み,脈管侵襲の順に重要と思われた.ただし,この転移の危険因子の検討は限られた症例数での検討であるため,経過観察の際にはわれわれは高危険群,低危険群のどちらも同じ慎重なサーベイランスを行っている.
高度のヨード多発不染,所謂まだら不染は,食道癌治療後のサーベイランスにおいて異時性食道癌の危険因子であり 21),下咽頭癌発生の予測因子と報告されているが 21),22),今回の検討では異時性の表在型咽頭癌の危険因子とはならなかった.今回表在型咽頭癌を内視鏡的切除した症例は異時性の表在型咽頭癌のあり群/なし群いずれでも,高度のヨード多発不染症例が高率であったためと考えられた.
本検討にはいくつかのlimitationがある.第一に単施設で行われた後ろ向き研究である.第二にdsESDはcESDより後の時期に行われており,内視鏡医の技術的向上が影響している可能性がある.cESDはニードルナイフで,dsESDではデュアルナイフを使用しており,その違いも影響しうる.最後にリンパ節転移症例の数が少なく,転移危険因子の解析は十分でない可能性がある.
表在型咽頭癌に対する内視鏡的切除は長期成績も良好であり適切で有効な治療法であった.表在型咽頭癌の異時性多発癌が高率に発生するため,早期発見のために慎重な検査が必要である.切除方法ではdsESDは表在型咽頭癌を完全切除するために有効で有用な方法であった.
本論文内容に関連する著者の利益相反:なし