日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
膵炎後の局所合併症に対する内視鏡治療
向井 俊太郎 糸井 隆夫
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2017 年 59 巻 2 号 p. 155-170

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要旨

膵炎後の局所合併症(主にwalled-off necrosis)に対して,感染例や有症状例は侵襲的治療が必要となる.近年,こうした局所合併症に対するEUSガイド下ドレナージと内視鏡的ネクロセクトミーによる低侵襲な経消化管的治療が開発され,普及してきている.さらに,専用の大口径メタルステントを用いた治療や追加内視鏡ドレナージテクニックにより,多くは内視鏡治療単独で治癒可能となってきた.しかし手技に伴う重篤な偶発症も報告されており,内視鏡治療に固執することなく,経皮的アプローチや外科手術も考慮した広い視野での治療戦略が必要である.本稿では,膵炎後局所合併症に対する内視鏡治療の現状について概説する.

Ⅰ 緒  言

膵炎後局所合併症は1992年に提唱されたAtlanta分類 1に基づき定義されていたが,その後の臨床的知見で,感染の有無によって治療方針が異なること,さらに単なる液体成分のみの仮性嚢胞とは異なり液状化した壊死組織を含む被包された壊死組織の有無により治療効果に差があることが明らかとなった 2),3.2007年に急性膵炎分類のacute pancreatitis classification working groupから提唱された改訂Atlanta分類 4および,その後各国の専門家による検証が行われ,2013年1月にGut誌に発表された国際コンセンサス 5は,それまで分類上の異同があって混沌としていた膵炎後局所合併症を,病態に基づいたカテゴリーとして再分類させた.改訂Atlanta分類では,膵炎後局所合併症の形成過程や時期,感染徴候の有無などが考慮されている.間質性浮腫性膵炎(Interstitial edematous pancreatitis)に伴う液体成分のみから構成される液体貯留は,発症4週未満の初期のものは急性膵周囲液体貯留(Acute peripancreatic fluid collection:APFC),それが発症4週以上経過して器質化した膵仮性嚢胞(Pancreatic pseudocyst:PPC)と定義された.そして壊死性急性膵炎(Necrotizing pancreatitis)に伴う浸出液や壊死物質の貯留は,発症4週未満の初期のものは急性壊死性貯留(Acute necrotic collection:ANC),壊死物質の液状化が進み被包化され発症後4週以上経過したものは被包化壊死(Walled-off necrosis:WON)と定義され,大きく4つのカテゴリーに分類された(Figure 1).

Figure 1 

膵炎後局所合併症の改訂アトランタ分類と治療適応.

壊死組織の多く含み感染を伴ったWONは抗生剤などの保存的治療のみでは感染のコントロール不能で菌血症から多臓器不全に至るため,侵襲的なドレナージが必要となる.以前は,外科的に開腹下でドレナージと壊死物質除去(ネクロセクトミー)が行われていた.しかし感染に伴う全身状態の悪い状態での手術はリスクが高く,偶発症率や死亡率が高いため,より低侵襲な治療法の開発が望まれていた.そこでEUSガイド下の経消化管的なドレナージと内視鏡的ネクロセクトミーの方法が開発され,本邦でも低侵襲な治療法として普及してきている 6)~9.膵炎後局所合併症の治療に関して,まだ確立されたものはないが,少しずつエビデンスが蓄積されてきている.本邦でも,2014年11月に改訂Atlanta分類に基づいた「膵炎局所合併症(膵仮性嚢胞,感染性被包化壊死等)に対する診断・治療コンセンサス」 10が上梓された.また,2016年にはアジア8カ国の胆膵内視鏡治療のエキスパート達により,蓄積されたエビデンスとエキスパートの意見をもとに作成されたステートメントも公表されている 11),12.本稿では膵炎後局所合併症に対する内視鏡治療の現状について概説する.

Ⅱ 疫学,リスク因子

WONが提唱され改訂アトランタ分類が発表されてから,局所合併症の発生頻度に関する大規模な疫学データはまだ報告されていない.過去の報告により,ANC/WONの発生起源となる壊死性膵炎は,急性膵炎の20-40%とされている 13)~15.また,中国から9,421例の急性膵炎のうちネクロセクトミーの治療が必要であった症例は412例(4.4%)であったと報告されている 16.壊死性膵炎がすべてANC/WON形成の過程へ進むわけではなく,また大きなANC/WONを形成しても無症状で治療を必要としない症例もある.従って,ANC/WONの発生頻度は急性膵炎の4-40%の間と考えられている 11.浮腫性膵炎後のAPFCの合併頻度は約40%,その後にPPCを形成する頻度は約10%との報告 2もあるが,多施設多数例での報告はない.しかし,APFCからPPCに至るまでにほとんどの症例では自然消退する可能性が高く,急性膵炎後のPPCの発生は稀であると考えられている.膵炎後局所合併症のリスク因子に関しても分かっていない.少なくともANC/WONの発生には,膵炎の重症度と壊死組織量が関与していると考えられる.以前より,肥満とくに内臓脂肪量が多いと膵炎が重症化し,局所合併症の発生率が高いと報告されているため,内臓脂肪量はANC/WON合併のリスク因子の1つと考えられる 17

Ⅲ 診  断

局所合併症の定義は主に造影CTの所見と発生からの時間経過をもとに作られており,診断において造影CTは最も重要なモダリティーである.WONは,膵炎発症4週以上経過し,膵実質や膵周囲組織の壊死組織を含む被包化された液体貯留と定義されている.つまり壊死物質の有無はPPCとの鑑別に重要な要素であるが,壊死組織量の少ない症例や,液体成分が少なくコントラストが明瞭ではない症例では,造影CTでの壊死物質の有無や量の評価が難しい.壊死物質の評価に関しては,MRIや腹部超音波検査(AUS)やEUSの方が有用と考えられている 5),18),19.また,改訂アトランタ分類ではこの壊死物質を少しでも含んでいればWONに分類され,PPCは純粋に液体成分のみで構成されると定義されている.液体成分のみで構成されるAPFCの多くは自然消退する.膵炎後4週以降に膵周囲に認める囊胞様病変は,CTで液体成分のみのPPCの様に見えても多くの症例で少なからず壊死物質を含有したWONと考えられる.しかし,基礎疾患に慢性膵炎や腫瘍などによる膵管狭窄を有する場合は,診断・分類が難しくなる.慢性膵炎急性増悪による壊死を伴う局所合併症もWONと定義されるが,膵炎が契機となって膵管が破綻してPPCが形成された例や,元々膵管破綻に伴うPPCやretention cystが存在し,膵炎を併発することによりCTにて発見される例など,様々な病態が混在する場合がある.

感染の有無に関しては,臨床症状,血液検査の炎症反応やプロカルシトニン値の上昇,CTによる内部のガス像などから臨床的に判断されることが多い 20),21.CTもしくは超音波ガイド下にFNA(fine needle aspitation)で採取した内容液のグラム染色や培養の有用性が報告されている 22),23.しかし,偽陰性率が20%-25%と高いことが指摘されていた 24.オランダのグループが行った前向き試験の結果では,FNAを行うことによる臨床経過や感染確定に有用性は認められず,FNA群の偽陰性率は29%,後日のドレナージ時の培養と27%の症例で一致していない 25.近年は,治療の1st stepは抗生剤による保存的加療か,低侵襲ドレナージであり,侵襲的な処置を行ってまで感染の確定診断を得ることの意義は乏しくなっている.したがって,FNAによる感染診断は,高侵襲治療(開腹ネクロセクトミーなど)を行う症例などに限定されると考える.

Ⅳ 治療適応と治療時期

無症状のPPCは経過観察可能と考えられる.浮腫性膵炎後のAPFCの合併頻度は約40%,その後にPPCを形成する頻度は約10%と報告され 2,さらに径が6cmに満たないPPCは,6週間程で自然消失する可能性が高い 26と報告されており,治療適応となる膵炎後のPPCは稀である.しかし,いわゆる“6・6ルール”の径6cm以上で発症後6週間経過したPPCは自然消失しづらく,無症状であっても経過中に感染,出血,腹腔内破裂等の危険性があり,ドレナージが必要とされる場合が多い 27と報告されている.また感染など有症状例,圧排性胆管狭窄,消化管狭窄を伴うものは治療適応と考えられる.WONの治療適応に関して明確なコンセンサスはないが,巨大なWONで大量の壊死組織を含有していてもドレナージすら必要ない症例もあり,PPC同様に感染など症候性のものを治療適応と考え,無症候性は経過観察可能と考える.しかし,筆者らの多数例に基づく経験からは,無症候性であっても消退する兆しがない,むしろ増大傾向であるWONは,経過観察中に感染や嚢胞内出血を来す可能性が高いため,重篤な合併症を併発する前の全身状態が安定しているうちに治療導入を検討するのが望ましいと考えている.

侵襲的治療導入の時期に関しても議論の余地がある.壊死性膵炎,ANCの段階(発症4週未満)で開腹下ネクロセクトミーを行うことは,過去のRCTやsystematic reviewより死亡率や合併症率が有意に高く,4週以降の被包化されたWONの時期に行うことが推奨されている 28.Santvoortらが行った629例の前向き試験の成績では,入院から侵襲的治療導入までの期間が長いほど,合併症のリスクが低率であった(0~14日 72%,15~29日 57%,30日以降 39%,p=0.007) 29.しかし,近年は低侵襲ドレナージを先行させる治療が主流であり,技術や処置具も進歩しているため状況が異なる.実臨床では,抗生剤による保存的加療を行っているうちに,感染に伴うARDS,DICや嚢胞内出血を合併し,全身状態が悪化するとその後の侵襲的治療に難渋する.炎症の波及や嚢胞内圧の上昇に伴い周囲の腸管への穿破も見られ 30),31,液体成分が少なくなることによりその後の治療手技の難易度が上がる症例も経験する.とくに大腸に穿破すると,ドレナージ手技が成功しても感染の制御に難渋する大きな問題となりうる 32.画像上で液状化が進み被包化されていれば,厳密に4週経つまでドレナージを待つ必要はなく,侵襲的治療導入のタイミングを逸さないことも重要である.

Ⅴ 局所合併症に対する治療アプローチ

局所合併症に対する治療アプローチの方法は,経皮的治療,経乳頭的治療,経消化管的治療,外科的治療に大別される.PPCは膵管の破綻に伴う膵液貯留であることが多く,基本的に膵管との交通を有する.そのため慢性膵炎の膵管狭窄や膵石に伴う症例も含めたPPCに対する経乳頭的ドレナージ術の手技上の成功率は,69%~100%と良好な治療成績が報告されている 33)~35.しかし,WONの場合はドレナージルートとして確保できる程の膵管との交通を有していない症例が多い.仮にドレナージチューブが留置できたとしても,主に液体成分で構成されるPPCとは異なり壊死組織を含むWONではドレナージ不良となる可能性が高い.従来,壊死組織を多く含むWONに対して開腹下ネクロセクトミーが行われていた.しかし,感染に伴う悪い全身状態での侵襲性の高い開腹手術はリスクが高く,報告でも偶発症率55%,死亡率14%とされ,より低侵襲で有効な治療法が求められていた 36.経皮的ドレナージは,簡便に行うことができる低侵襲な治療アプローチである.しかし,WONに対する治療成績の報告では,外科的治療への移行率が26.4%,死亡率15.2%と十分なものではなく,また主膵管レベルでの膵管破綻を伴う症例では,難治性皮膚瘻を合併するリスクを伴う 10),37),38.そこで開発されたのがEUSガイド下ドレナージと,それに引き続く内視鏡的ネクロセクトミーによる経消化管治療である.1992年にGrimmらによって初めてEUSガイド下ドレナージが報告され,現在PPC/WONに対する治療として広く普及している 39.本邦の治療コンセンサスでも外科治療の前にEUSガイド下の経消化管治療を検討することが推奨されている 10.WONに対するEUSガイド下ドレナージの有効性は多く報告されているが,内径の狭いプラスチックステント(PS)ではドレナージが不十分なことも多い.実際,感染を伴ったWONに対するEUSガイド下ドレナージ単独の臨床奏効率は40%-50%程度と報告されている 40.そのような症例に対して,ドレナージによって造設された胃壁とWONの瘻孔から内視鏡を挿入して感染した壊死組織を除去する内視鏡的ネクロセクトミーの方法が,2000年にSeifertらによって初めて報告された 40.その後,この手技はhigh-volume centerを中心に多施設多症例の検討や比較対照試験が報告され,開腹下ネクロセクトミーより安全性の高く有用な治療法であると考えられている.

2010年にオランダから経皮的もしくは内視鏡的ドレナージを先行させ,必要に応じて腹腔鏡下で後腹膜アプローチによるネクロセクトミー(video-assisted retroperitoneal debridement:VARD)を追加するというstep-up approach群と最初から開腹下ネクロセクトミーを行う群それぞれ約45例ずつを比較したRCT(PANTER trial)が報告され,死亡率は有意差を認めないものの新たな多臓器不全の発生率はstep-up approach群の方が有意に低率(12% vs. 40%)であり,35%の症例はドレナージのみで治癒可能であったという結果であった 41.治療後の経過としても新規糖尿病発生率(16% vs. 38%),消化剤の内服率(7% vs. 33%)がStep-up approach群の方が有意に少なく,医療費も12%削減されたと述べられている.こうした研究結果より,感染を伴ったWONの治療戦略として低侵襲なドレナージから治療を行い,その治療効果を見ながら症例に応じて侵襲性の高い治療を追加していく治療戦略がコンセンサスを得つつあり,特に経消化管内視鏡的治療は低侵襲で有用性が高いと考えられる.

Ⅵ EUSガイド下ドレナージ

1975年にRogersらにより直視内視鏡下の嚢胞穿刺術が初めて報告されて以来,消化管を介して直視内視鏡下に嚢胞にアプローチする方法が内視鏡治療の主流であった 42.その後EUSが登場し,1992年にGrimmらが初めてEUSガイド下ドレナージ法を報告した 39.ただし,彼らの実際の方法はEUSスコープの鉗子口径が小さく,チャンネル内に挿通可能なステントがなかったため,穿刺後ガイドワイヤーのみを残して,通常の十二指腸スコープでステントを留置したものであり,一期的なEUSガイド下ドレナージではない 39.理論的に,EUSガイド下穿刺は消化管と嚢胞壁との間が最も短い穿刺経路を選択できる.さらに,穿刺経路の介在血管を避けることが出来ることは,直視内視鏡下でのドレナージに比べて大きなアドバンテージを有する.特にPPC/WONでは門脈・脾静脈の閉塞に伴う門脈圧亢進症を来たし,胃周囲の側副血行路が発達している症例もあるが,EUSで介在血管の有無を確認しながら穿刺できるため,より安全性が高い 43.実際に,2つのRCTの結果からもEUSガイド下ドレナージの方が直視内視鏡下ドレナージよりも,手技成功率(100% vs. 33%,94% vs. 72%)や偶発症発生率(0% vs. 13.3%,7% vs. 10%)の点で優れているとの結果が報告されている 43),44.手技,処置具の発達に伴い,PPCに対するEUSガイド下ドレナージは世界的に普及し,手技成功率は約95%,臨床奏効率は約90%,偶発症率0-9%程度と非常に有用で安全な治療法であることが報告されている 45),46.WONに対するEUSガイド下ドレナージの有効性も多数報告されているが,WONは内部に壊死組織を含むためドレナージ不十分となることも多く,臨床奏効率は40-50%程度と報告されている 40

EUSガイド下ドレナージ治療手技の詳細やコツに関しては,以前に本誌の「手技の解説」で解説しているので参考にされたい 47.略説すると,まずコンベックス式EUSを挿入して病変を描出する.EUSガイド下に19GFNA穿刺針で穿刺し,ガイドワイヤーを嚢胞内にループを作って長めに留置する.引き続き通電ダイレーターと4-6mmの拡張バルーンを用いて瘻孔を拡張する.その後,7Fr両端pig tail型PSと5Frもしくは6Frの経鼻ドレナージチューブを留置する内外瘻同時留置が基本である.留置するPSのサイズや本数に関しては,2013年にBangらが行ったPPC117例のEUSガイド下ドレナージに対する多変量解析の結果では,7Frと10Frを留置した群,1本と複数本留置した群,いずれも治療成績は変わらなかった,と報告されている 48.基本的には,PPCに対しては留置するPSは7Fr1本で十分と考えられる.しかし,壊死組織を含むWON,特に画像上引き続きネクロセクトミーが必要になる可能性が高い症例には,2回目の瘻孔拡張を安全に行うためと良好なドレナージ効果を得るために,われわれは経鼻嚢胞ドレナージチューブ1本と7F両端pig tail型PSを2本以上留置している.嚢胞内に経鼻嚢胞ドレナージチューブもしくは複数本のPSを留置する際にはダブルガイドワイヤーテクニックが有用である 49.この方法は,ステントを留置する前にダブルルーメンカテーテルもしくは10Frソーヘンドラ拡張カテーテルを用いて嚢胞内に2本のガイドワイヤーを留置した後にステントを留置していく方法であり,効率よく手技を行うことができる.

近年,治療に特化した直視型コンベックス式EUSが開発された.このEUSは内視鏡,穿刺方向,超音波走査方向がともに前方を向いているため,従来の前方斜視型コンベックス式EUSに比べて穿刺針の力が伝わりやすく,EUS治療内視鏡手技での有用性が期待されている.EUSガイド下ドレナージにおいては,2011年に報告された多施設前向き試験の結果では,直視型コンベックスを用いた群,従来の前方斜視型コンベックスを用いた群で,治療成績,手技時間はともに同等であったと報告されている 50.また,穿刺の方法として19G FNA針の代わりに通電針を用いた方法もある.穿刺と同時に周囲を焼灼するため,その後の瘻孔拡張が安易であるが,穿刺時の出血のリスクが懸念される.しかし,通電針,非通電針のどちらを用いても,治療成績に有意差は認められないと報告されている 51.本邦では96%の施設で,非通電針(19G FNA針)が選択されているようである 52.ドレナージ後の食事開始については,これまで明らかなエビデンスを持った報告はされていない.食事開始による胃内腔圧の上昇による逆行性感染や内瘻ステントの食残による閉塞も危惧されるため,ドレナージ後数日でCTの評価を行い,病巣が縮小し,炎症も改善していれば食事を開始して良いと思われる.

Ⅶ 内視鏡的ネクロセクトミー

先に述べた通り,壊死組織を多く含むWONに関しては上記のEUSガイド下ドレナージ単独ではドレナージ不良となり感染のコントロールに難渋することが多い.そこで開発されたのが内視鏡的ネクロセクトミーであり,2000年にSeifertらにより初めて報告された.Gardnerらは,WONに対するEUSガイド下ドレナージ単独の治療成功率は45%であったが,内視鏡的ネクロセクトミーを追加することで治療成績が88%まで改善したことを報告している 53.その後,この手技は多くの施設から報告されるようになり,近年はドイツ,米国,日本の三カ国から多施設多症例の検討が報告されている(Table 1 52),54),55.その結果では臨床奏功率は75%~91%,偶発症発生率は26%~33%,死亡率は5.8%~11%であり,EUSガイド下ドレナージ単独よりも良好な治療成績であり,開腹下ネクロセクトミーより安全性の高い治療法であることが示唆される.本邦における結果(JENIPaN study) 52はYasudaらにより報告されており,16施設57例の感染性WONに対する治療成績は,臨床奏功率75%(治療期間中央値21日),偶発症発生率33%,死亡率11%であった.偶発症の詳細は,ネクロセクトミー中の出血8例,脾動脈瘤破裂2例,嚢胞穿破3例,空気塞栓,マロリー・ワイス裂創,瘻孔部出血,誤嚥性肺炎,イレウス,原因不明の心肺停止各1例であり,死因は敗血症からの多臓器不全2例,空気塞栓,脾動脈瘤破裂,マロリー・ワイス裂創,原因不明の心肺停止各1例であった.治療後経過観察期間中央値17カ月で3例(7%)に再発が見られている.またドイツから2012年に発表された内視鏡的ネクロセクトミーと外科的ネクロセクトミーの初めてのRCT(PENGUIN trial)の結果では,両群10例ずつと症例数はかなり少ないものの,偶発症や術後合併症などは内視鏡的ネクロセクトミー群で有意に少なく,新たな臓器不全の出現(0% vs. 50%)や膵液瘻の発症も内視鏡的ネクロセクトミー群で有意に少なく,有意差は認めないものの死亡率も良好な結果(10% vs. 40%)であった 56.Systematic review(開腹下ネクロセクトミー vs. 内視鏡的ネクロセクトミー)でも,早期・晩期偶発症の発生率は開腹下ネクロセクトミー群で高く(47.3% vs. 71.7%),さらに術後の多臓器不全合併率(20% vs. 59%),死亡率(16.5% vs. 36.6%)ともに有意差をもって開腹下ネクロセクトミー群で高いと報告されている 12.こうした研究結果より,感染性WONの治療戦略は,まずEUSガイド下ドレナージを行い,必要があれば内視鏡的ネクロセクトミーを追加する内視鏡的step-up approachの方法がコンセンサスを得つつある 57.外科的アプローチも低侵襲化が進んでおり,開腹より低侵襲な腹腔鏡補助下壊死巣除去(VARD:video-assisted retroperitoneal debridement)による後腹膜アプローチのネクロセクトミーが開発されている.2014年にRCTではないが,感染性WONの症例で患者背景を適合させ,内視鏡的ネクロセクトミー群と外科的step-up approach群(経皮的ドレナージを先行させて,効果が不十分な場合にVARDを行う)を比較した検討が報告されている 58.その結果では,最終的な治療成績は同等であったが,内視鏡的ネクロセクトミー群の方が重篤な偶発症発生率,術後の内分泌機能障害の発生率,総医療費が有意に少ないという結果であり,感染性WONに対して内視鏡的ネクロセクトミーが第一選択の治療となりうると結論付けられている.現在,オランダで内視鏡的step-up approachと外科的step-up approachの多施設でのRCTが進行中であり,その結果が待たれる 59

Table 1 

内視鏡的ネクロセクトミーの多施設検討の結果.

内視鏡的ネクロセクトミーの治療手技の詳細やコツに関しても,以前に本誌の「手技の解説」で解説しているので参考にされたい 47.一期的に行う施設もあるが,侵襲度や偶発症リスクを考慮すると,まずはドレナージのみを行い,その後の臨床経過から慎重にネクロセクトミーの適応を判断するstep-up approachの方がよいと考えられる.1回の手技時間は1時間以内を目安に週2回程度の頻度で行うのが一般的である.ネクロセクトミーのエンドポイントに関しては,完全な壊死組織の除去と良好な肉芽組織の露出が望ましいとされているが,発熱や炎症反応が落ち着いてきた段階で終了してよいと考えられる.むしろネクロセクトミーを行っても感染コントロールに難渋する場合は別の腔でドレナージ不良となっている可能性が高く,後述する追加ドレナージを検討すべきである.ネクロセクトミーの回数を無理に重ねることは偶発症の観点からも避けるべきである.尚,EUSガイド下ドレナージは保険収載されているが,内視鏡的ネクロセクトミーは保険承認されていないため手技料も請求できず,処置具も各施設の持ち出しとなることに留意されたい.

内視鏡的ネクロセクトミーで最も頻度の高い偶発症は出血である.本邦のJENIPaN studyの結果でも,偶発症(19例,33%)の多くは出血に関連するもの(12例,22%)であった 51.その予防と発生時の対応は,内視鏡治療を安全に完遂させるために重要なポイントとなる.特に動脈瘤破裂は致死的な偶発症となりうるため,ドレナージを行う前に造影CTを撮影して動脈瘤の有無を評価することは重要である.感染に伴う炎症により細い動脈が破綻し,治療経過中に動脈瘤が発生する場合もあり,ネクロセクトミーのインターバル期間中も適宜,造影CTの評価をすべきである.動脈瘤を認めた場合は,全身状態が安定していてドレナージが待てるようであれば,IVRによるコイル塞栓術を用いた動脈瘤治療を優先した方が安全である.処置中に発生した出血に対しては慎重に出血点を確認して内視鏡的止血を試みる.瘻孔バルーン拡張時の出血に対してはバルーン圧迫止血やメタルステント留置による圧迫止血,ネクトセクトミー中の血管損傷に対してはクッリピング止血やAPC焼灼止血が有用である.しかし,インターバル期間中に発生した嚢胞内出血は,凝血塊が貯留して出血点を見つけることはほとんど困難であり,すぐにIVR医にコンサルトする方がよい.血管造影を行っても巨大なWONの症例では出血点を見つけるのが困難なことがある.保存的加療を行い,後日WON内の観察をすると内部に出血源を確認できることもある 60.また,空気塞栓も致死的な偶発症となり得るためその対策は重要である.空気塞栓を予防するために送気にはかならずCO2を用いることである.もちろんCO2を用いても過度の送気は嚢胞穿破の原因ともなり,稀ではあるがCO2塞栓も起こりうるため禁物である 61.尚,WONに対するEUSガイド下ドレナージは保険収載されているが,ENは保険承認されていないため手技料も請求できず,処置具も各施設の持ち出しとなることに留意されたい.

Ⅷ 大口径メタルステントを用いたEUSガイド下ドレナージと内視鏡的ネクロセクトミー

近年,PPC/WONに対し,良好なドレナージ効果や瘻孔の早期形成を目的にPSの替わりに大口径メタルステントを留置する報告が散見される 62)~65.その報告の多くは,通常の胆管用メタルステントを用いたものである.改訂アトランタ分類に基づいた診断がなされていないものもあり評価は難しいが,手技成功率は94%~100%,臨床改善率は78%~95%と良好である.ドレナージの際に複数本のPSを留置するより簡便であり,大口径のためドレナージ効果は高いと考えられるが,逸脱迷入予防のためにある程度長めのステントを留置する必要がある.理想的には,ステントを留置したままで内視鏡的ネクロセクトミーを行いたいところであるが,留置するステント長が長く,スコープ操作により迷入等の可能性が高く,結局抜去してからネクロセクトミーを行う必要があった.また嚢胞径縮小とともにステントの逸脱,嚢胞壁にステントの端があたり嚢胞内出血も懸念され,PSに比べてかなり高額にもかかわらずメリットは少ない.そこで近年,両端がアンカーになったEUSガイド下ドレナージ専用のフルカバー型メタルステントが開発された(Figure 2 66)~71.一旦留置すれば何回でも直視スコープの出し入れが可能で,ネクロセクトミーが容易に行うことができる(Figure 3).瘻孔のバルーン拡張も必要ないため処置時間が短縮でき,バルーン拡張に伴う出血のリスクも軽減される.良好な視野でネクロセクトミーを効率良く行うことができ,少ない処置回数で治療が可能であるため,偶発症の減少に寄与する可能性もある.多施設,症例数40例以上の検討では,ステント留置成功率98%~100%,臨床奏功率(PPC 84%~100%,WON 78%~90%)と良好な成績が報告されている(Table 2 72)~77.われわれの後ろ向きの検討では,専用メタルステント群に難治例が多く含まれていた可能性はあるが,従来のPSを用いたドレナージ群と比較して,最終的な臨床奏功率は同等であった(専用メタルステント群97.7% vs. PS群92.6%) 78.しかし,偶発症率(7.0% vs. 18.5%)やネクロセクトミーを含む追加処置回数(2.7回 vs. 4.1回)は,有意差はないものの少ない傾向にあった.専用メタルステントの欠点は,高額デバイスであることによるコストの問題である.しかし,われわれのコスト分析では,全症例の検討でも治療コストに有意差は認められず,ネクロセクトミーなどの追加処置が必要な難治例に対しては効率よく治療を進めることができるため,コスト面でもむしろ優れている可能性が示唆される結果であった 78

Figure 2 

専用大口径メタルステントを用いたEUSガイド下ドレナージ.

a:EUSでWONを描出し,19G針で穿刺した.

b:大口径メタルステントを留置後,感染した嚢胞液が大量にドレナージされた.

Figure 3 

専用大口径メタルステントを用いた内視鏡的ネクロセクトミー.

ステント内腔から直視内視鏡を挿入して,感染した壊死物質を除去した.

Table 2 

専用大口径メタルステントを用いたEUSガイド下ドレナージと内視鏡的ネクロセクトミーの治療成績.

最初に開発されたのはXlumena社(現在はBoston Scientific社)のAXIOS stent 66であるが,現在はアンカー部分の形状やデリバリーシステムの異なるいくつかの種類が存在する(Figure 4).大きくはflared typeのステント(Nagi stent,Taewoong社)とlumen-apposing type(AXIOS stent,Boston Scientific社やSPAXUS stent,Taewoong社)のステントに分けられる 70.Flared typeのステントは,lumen-apposing typeのステントに比べるとアンカー部分の組織接着力が弱いので逸脱のリスクが高くなる.実際に,オーストラリアで行われたNagi stentを用いた多施設共同研究では,54例中の4例(7.4%)にネクロセクトミー時のステントの逸脱,6例(11.1%)に治療後の自然逸脱が認められている 73.治療による嚢胞縮小に伴い自然逸脱した場合は,すぐにステントを胃内で回収すれば特に問題はないが,腸管に流れ込んだ場合は,稀ではあるが腸管にひっかかり手術で回収しないといけないこともある.Flared typeのステントの逸脱率は5%~19% 68),70),71),73と報告されているが,lumen-apposing typeのステントは組織接着力が強いので0%~7% 66),67),69),72),74)~76と低い.一方で,flared typeのステントの利点は,アンカー間のステント長がlumen-apposing typeのステントに比べて長い(10mm vs. 20mm or 30mm)ので,消化管から少し離れた場所に存在する病巣に対しても安全に留置しやすい.また,AXIOS stentのデリバリーシステムは特殊な構造をしているため,ある程度の慣れが必要であるが,flared typeのステントのデリバリーシステムは従来の胆管ステントと同様であり使い勝手がよい.近年,この両タイプの利点を兼ね備えた新しいタイプのステント(Plumber stent,MI Tech社)も開発され,その有用性が期待されている 77.さらに,穿刺・通電による拡張・ステント留置を同時に行うことができる一体型ステントデバイス(HOT-AXIOS,Xlumena社)も開発され,このデバイスを用いれば透視を使用せずにベッドサイドでもステント留置が可能である.ヨーロッパ諸国の13施設による報告では,92例(98.9%)でステント留置に成功しており,偶発症の発生率も従来のステントと同等の成績である 74.しかし,本邦では現時点でこれらの専用メタルステントは医療材料として保険承認されていない.従ってステントはもちろんのこと,その他の処置具や手技料も請求できない.臨床研究として患者の同意の下,すべて研究費でまかなうのが現状であり,今後の保険収載と市販化が望まれている.

Figure 4 

専用大口径メタルステントの種類.

上段左:AXIOS stent(内径10mm or 15mm,有効長10mm).

上段中央:SPAXUS stent(内径8mm or 10mm or 16mm,有効長20mm).

上段右:Nagi stent(内径16mm,有効長20mm or 30mm).

下段左:HOT-AXIOS(内径10mm or 15mm,有効長10mm).

下段右:Plumber stent(内径14mm,有効長20mm or 30mm).

Ⅸ 難治例に対する追加内視鏡ドレナージテクニック

内視鏡的ネクロセクトミーの開発に伴いWONの内視鏡治療による臨床奏功率は80%を超えるまでに改善されてきた.しかし,言い換えれば未だ約20%の症例は内視鏡治療単独で治療困難ということになる.WONは被包化されていても単房性の形態を呈する症例は少なく,多房性で複雑な形態を呈することが多い 79.基本的に各々の腔は交通を有している.しかし,その交通が細い場合,膵周囲の主病巣に対してドレナージとネクロセクトミーを行っても,分離した副病巣がドレナージ不良となり感染の制御に難渋する.そのような多房性WONに対する治療法として,MTGT(multiple transluminal gateway technique)とSGTMD(single transluminal gateway transcystic multiple drainages)という内視鏡追加ドレナージテクニックが報告されている(Figure 5 80),81.MTGTは2011年にVaradarajuluらによって報告された方法で,複数の別々の場所からEUSガイド下ドレナージを行い,必要に応じてその複数の瘻孔から内視鏡的ネクロセクトミーを行う方法である.経鼻嚢胞ドレナージチューブを留置してベッドサイドで生理食塩水を用いて洗浄・灌流を行う場合,瘻孔を複数形成することでその洗浄効果を高めるという利点もある.このmulti gateと従来のsingle gateを比べると,ドレナージ単独の治療成績はMTGTの方が有意に良好であったと報告されている(91.7% vs 52.1%,p=0.018).またWONに対する内視鏡的ネクロセクトミーを含めた追加処置は平均6回程度必要とされている 54が,MTGTを用いると追加でネクロセクトミーが必要であっても平均1.5回で治癒可能であったと述べられている.Bangらは12cmを超えるような大きな多房性WONに対して,早期にMTGTを用いることを推奨している 48

Figure 5 

追加内視鏡ドレナージテクニック.

a:Multiple transluminal gateway technique.

b:Single transluminal gateway transcystic multiple drainages.

(Mukai S et al. Expanding endoscopic interventions for pancreatic pseudocyst and walled-off necrosis. J Gastroenterol. 2015より引用).

一方で,副病巣が脾門部や骨盤側など消化管から離れた場所に存在し,経消化管的に直接ドレナージが困難な場合はSGTMDが有用である.先に述べた通り,主病巣と副病巣は基本的には細い交通を有することがほとんどであり,主病巣内からERCPカテーテルと柔らかい親水性ガイドワイヤーを用いてその交通を探り,その交通を通して7Fr両端pig tail型PS,もしくは経鼻嚢胞ドレナージチューブを留置して副病巣のドレナージを行う方法である.このMTGTとSGTMDを用いることで,さらなる内視鏡治療単独の治療成績向上が期待でき,筆者らの成績では93%の感染性WONが経消化管治療単独で治癒可能であった 79.しかし,多房性のWONのすべての副病巣に対してドレナージが必要かというとそのような事はない.副病巣が小さい場合は,主病巣のドレナージが良好であれば抗生剤治療を継続していると副病巣は縮小してくる.筆者らの検討では,65m3以上の副病巣(概ね5cm大)はドレナージが必要となる可能性が高く,積極的に追加ドレナージを考慮すべきである 79

Ⅹ Hybrid approach(経皮アプローチによる内視鏡的ネクロセクトミー)

経皮的ドレナージは,低侵襲で有効な方法であるが再発及び難治性皮膚瘻などのリスクや患者のADLを低下といったデメリットを懸念され,近年は第一選択とならない傾向にある.しかし,しばしば経験する後腹膜腔から左右の骨盤まで広がる巨大なWONの症例に対して,経消化的に膵周囲から内視鏡を骨盤腔まで挿入してネクロセクトミーを行うことはリスクが高い.骨盤腔まで及ぶような巨大なWONに対しては,経消化管的内視鏡治療の限界であり,経皮的アプローチを早期に検討すべきである.その方法として,VARD 82を応用した内視鏡治療であるHybrid approach法が報告されている 9),83),84.まず骨盤腔内の副病巣へのアプローチとして超音波ガイド下もしくはCTガイド下にWONを経皮的に穿刺し,ドレナージチューブを留置する.概ね1週間で瘻孔が形成されるので,瘻孔をバルーンで拡張後に大口径メタルステントを留置し体壁に固定する.ステントは両端がアンカーになった食道ステントや前述した専用メタルステントが用いられている.後日,ステント内腔から骨盤腔のWONに直視内視鏡を挿入してネクロセクトミーを行う.治療後,ステントを抜去すると,栄養状態に問題がなければすぐに肉芽が増生して翌日には瘻孔はほぼ閉鎖される.症例報告のみで,安全性有効性ともにさらなる検討が必要ではあるが,静脈麻酔のみで処置が可能で,通常の経皮的処置と同様に行う事ができ,低侵襲な治療法である.

Ⅺ 経乳頭的内視鏡治療の役割

WONのドレナージは経消化管治療を第一選択となっており,膵臓への負荷も懸念して,経乳頭的なERCP手技はあまり行われなくなってきている.多くのWONでは,膵実質壊死に伴う膵管破綻による膵液漏出が起きても末梢の膵管であり,WONの治療過程で自然に修復されるものと考えられる.しかし,広範囲壊死に伴い主膵管レベルで膵管破綻を起こし,自然修復がされずに周囲への膵液漏出が遷延する症例もある.この状態であるdisconnected pancreatic duct syndrome(DPDS)は,WONの16-23%程度に併発すると言われている 85),86.実際に,WONに対する治療が奏効し画像上で十分な縮小が確認できても,食事開始に伴い膵液漏出が増え,腹痛や嘔気の症状と高アミラーゼ血症が遷延する症例も経験される.さらにドレナージチューブの自然逸脱や閉塞に伴うWON再発の因子となりうる 87.CTやMRCPの画像所見でDPDSを疑うことは可能であるが,尾側の主膵管の拡張を認められない症例が多く,WONとの位置関係でMRCPでの主膵管の評価も難しくなる.臨床経過からDPDSが疑われる症例に対して,WONの治療後に膵管造影が必要となる.Bangらは,EUSガイド下ドレナージの際に主膵管の評価を行い,尾部の主膵管を頭側に追っていき,WONの嚢胞腔内に主膵管が入り込んで追えなくなる所見が認められればほぼ100%でDPDSを合併していると判断でき,ドレナージ方法の選択や治療後のステント抜去の検討に有用であると報告している 88.DPDSの治療は,膵管内圧を低下させる目的で内視鏡膵管口切開(EPST)を施行し,破綻部の頭側膵管と尾側膵管を橋渡しするように膵管ステントを留置する経乳頭治療が有用だが,完全に主膵管が破綻している場合は手技難易度が高くなる 89

Ⅻ 治療後のフォロー

ほぼ完全に嚢胞腔が消失していても再発のリスクがあり,フォローを要する.本邦のJENIPaN studyの結果では,治療後経過観察期間中央値17カ月で3例(7%)に再発が見られている 52.再発リスク因子は明らかにはなっていないが,再発予防のためにある程度の期間は,内瘻ステントを抜去しない方がよい.内瘻ステントを抜去した群と抜去しなかった群を平均14カ月間フォローして再発率を比較したRCTの結果では,抜去した群の再発率は36%(5/14)で抜去しなかった群は0%(0/13)であり,ステントを長期留置することによるトラブルは認められていない 90.特に前述したDPDSを合併している症例に関しては,早期にステントを抜去すると50%程度の症例で再発を起こすと報告されており,半永久的に留置したままの状態にしておくことも推奨されている 85),88

メタルステントを長期留置しておくことによる影響は明らかではないが,周囲への組織障害を懸念して治療後に抜去した方がよいと考えられている.1年近く留置した場合,WON縮小に伴い肉芽組織が嚢胞側のアンカー部分に食い込んでステント抜去が難しくなることもあり,抜去時期は概ね治療後1-2カ月がよいと考えられている.メタルステント抜去後は,再発予防目的に可能な限り瘻孔部にプラスチックステントを1-2本留置するのがよい.

XIII おわりに

本稿ではPPC/WONに対する内視鏡治療の進歩と現状について述べた.その進歩は著しく,特に感染性WONの死亡率は大幅に改善され,多くの症例では内視鏡治療単独で治癒可能となってきた.内視鏡的ネクロセクトミーの小さな鉗子やスネアで除去できる壊死組織と外科的ネクロセクトミーによって除去できる壊死組織とはまったく量が異なる.また,外科的アプローチの低侵襲化も進んできている.従って,内視鏡治療に固執することなく,経皮的アプローチや外科的アプローチも含めた広い視野で治療戦略を立てることが,より良い治療につながるものと考えられる.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
© 2017 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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