2017 年 59 巻 2 号 p. 244
【目的】早期胃癌ESD患者で治癒切除基準を満たさない場合,リンパ節転移の危険性から全例追加外科手術が推奨されているが,全例に追加手術を行うことは過剰医療となる可能性がある.そこで,本研究では,このような患者の長期予後,転移再発危険因子を明らかにすることを目的とした.
【方法】本研究は国内19施設での多施設共同遡及的研究であり,2000~2011年に早期胃癌ESDを行った15,785症例のうち,治癒切除基準を満たさなかった1,969症例を対象とした.ESD後の治療方針により追加外科手術群(n=1,064),経過観察群(n=905)に分けられた.
【成績】全生存率(3年:96.7% vs 84.0%),疾患特異的生存率(DSS)(3年:99.4% vs 98.7%)ともに有意差を認めたが(それぞれp<0.001,p=0.012),経過観察群でも3年DSSは非常に高かった.追加外科手術群にて,リンパ節転移は8.4%(89例)に認められた.経過観察群での転移再発独立危険因子はリンパ管侵襲であった(ハザード比:5.23,95% CI:2.01-13.6,p=0.001).
【結論】両群のDSSには有意差を認めたが,3年DSSは経過観察群でも非常に高かった.治癒切除基準を満たさない早期胃癌ESD患者を層別化して低リスク患者を同定できれば経過観察が許容できるオプションの一つとなる可能性があり,今後は更なるリスクの層別化が必要と思われた.