2017 年 59 巻 4 号 p. 413-423
胃底腺型胃癌は胃底腺への分化を示す分化型腺癌の一亜型で,免疫染色では主細胞のマーカーのpepsinogen-Ⅰまたは壁細胞のマーカーのH+/K+-ATPaseが陽性となる胃腫瘍である.徐々に発見・報告例も増えつつあるが,未だ稀な病変である.臨床的特徴としては,H.pylori感染率が約半数程度と従来の胃癌より明らかに低率で,病変が小さいうちからSM浸潤を来しやすいが転移などが見られない低悪性度腫瘍と考えられる.内視鏡的には,粘膜萎縮の無い胃上部に好発し,色調は褪色調で腫瘍表面に血管拡張所見が見られるのが典型像で,さらに粘膜深部から発生する腫瘍のために腫瘍表層上皮は健常粘膜で被覆されている場合も多く,粘膜下腫瘍様や上皮下腫瘍とも表現される.現在までに発見されている病変は小病変が多いため内視鏡的切除されている例が多いが,リンパ管侵襲例や腫瘍進行により高悪性度に変化する可能性,さらにより悪性度の高い類縁病変の存在も指摘されており,今後さらに症例を重ねて検討する必要がある.
胃底腺型胃癌は,Tsukamotoらによりgastric adenocarcinoma with chief cell differentiationとして1例報告された残胃噴門部の高分化型腺癌が最初の症例とされ 1),その後Ueyama,Yaoらが同様の症例を収集し,胃底腺型胃癌(主細胞優位型),Gastric Adenocarcinoma of the Fundic Gland type(chief cell predominant type,以下GA-FG)という名称で新しい概念として提唱された病変である 2),3).本病変は,従来の胃癌と比較し,当初報告されていた例の大部分がH.pylori陰性例に発症していた点,低異型度であるが病変が小さい段階からSM浸潤を来しやすい点,比較的特徴的な内視鏡所見を呈する等から,徐々に注目されるようになり近年各施設から発見例が報告されるようになってきた.
提唱者の上山らによると,GA-FGの定義は,胃底腺への分化を示す分化型腺癌の一亜型であり,免疫染色では主細胞のマーカーのpepsinogen-Ⅰまたは壁細胞のマーカーのH+/K+-AT Paseが陽性となる胃腫瘍,とされている 4).
その組織学的特徴は,胃底腺,特に主細胞に類似した腫瘍細胞で構成され,腺管や腺房構造を構成しながら増殖し,不規則な分枝構造や腺管の拡張を伴う事が多く,基本的には粘膜深層から発生するため表層は健常上皮で被覆される事が多く,辺縁部では粘膜深層主体に発育し,中央部では粘膜下層に浸潤しながら全層性に発育する.そして,粘膜下層への浸潤が腫瘍が小さい段階で生じるというのも本病変の特徴の一つとされている.当初は胃底腺の主細胞に類似した腫瘍細胞が主である病変として診断されたため,gastric adenocarcinoma of the fundic gland type(chief cell predominant type),胃底腺型胃癌(主細胞優位型)という名称であったが,その後腺窩上皮や粘液腺細胞への分化もみられる例の存在も指摘されるようになり,これらは当初の主細胞優位型よりも悪性度が高い可能性があり,胃底腺粘膜型胃癌と呼ぶべきとの意見もみられるようになった 5).最初に概念が示された主細胞優位型胃底腺型胃癌は,徐々に発見例が増えて来ており 6),7),その内視鏡的所見や臨床像が少しずつ明らかとされつつあるが,胃底腺粘膜型胃癌に関しては未だその概念が広く認識されているとは言い難く,従来の胃底腺型胃癌との関連も十分には明らかとなっていない.
従って,以下の臨床像,内視鏡的所見は,従来からの主細胞優位型胃底腺型胃癌について解説する.
GA-FGは徐々に発見・報告例が増加しつつはあるが,未だまとまった報告は少なく,その臨床像も十分に明らかとはなっていない.特に,従来の胃癌のほとんどがH.pylori関連の胃癌(H.pylori陽性)であったのに対し,GA-FGは当初はH.pylori陰性で萎縮の無い粘膜に発生する点が特徴とされ,稀なH.pylori陰性胃癌の一型とも考えられてきた.しかし発見例が増加するにつれ,H.pylori感染例からの発生も決して稀では無い事も明らかとされつつある.本病変は,胃粘膜萎縮が無いか有っても軽度である胃上部に発生する事が多く,内視鏡像の特徴としては,白色または褪色調の色調,腫瘍表層の血管拡張所見等が特徴とされている.
そこで,GA-FGの臨床像を明らかとするために,比較的多くの例数を集積して報告している自験例(25例27病変)を含む5つの研究・報告を合算した78例,82病変で検討を行った 8)~12).検討項目は,性,年齢,肉眼型,部位,H.pylori感染の有無,大きさ,深達度とし,次いで自験例の詳細な臨床像,内視鏡所見を提示する.
ただし,GA-FGを当初からの主細胞優位型胃底腺型胃癌と最近提唱された胃底腺粘膜型胃癌に分類して論じている研究では,主細胞優位型胃底腺型胃癌のみを検討対象とした.また,病変部位は便宜上U,M,Lの3部位に分類し,肉眼型に関しては,混合型は主とした肉眼型に分類した(0-Ⅰ,Ⅱa,Ⅱb,Ⅱc).H.pyloriに関しては除菌後の陰性例は感染例として取り扱った.
1)年齢
年齢は44歳-84歳と広い年齢層にみられ,平均65歳で,60歳代が最も多かったが,40歳代にもみられ,広い年齢層にみられた.
2)性別は,男性51例,女性27例とほぼ2対1の比率で男性が多く,通常の胃癌と同様の傾向であった.
3)発生部位は,U領域61病変,M領域16病変,L領域3病変とU領域が圧倒的に多く,L領域は稀であった.胃切除後の残胃に認められた例が2例2病変認めた.
4)肉眼型は,0-Ⅱaが43病変と最も多く,次いで0-Ⅱb21病変,0-Ⅱc16病変,0-ⅠがⅡ病変であった.しかし,実際には後述するように非常に小さな病変も多く,必ずしも正確に肉眼型を判定する事が困難な例も含まれると考えられた.
5)H.pylori感染は,検討されていた64例中41例(64%)が未感染であったが,除菌後陰性例も含め感染例も稀ならずみられた.しかし,従来の胃癌の大部分がH.pylori感染例である事と比較すると大きな差異であった.
6)病変の大きさは1mmから43mmで,個々の病変の大きさが記載されている57病変中5mm以下の病変が32病変と半数以上を占め,小さい病変が多かった.小病変が多かった事もあり,大部分の例が内視鏡的に切除されていた.
7)深達度は,治療された80病変中,粘膜内(以下M)癌が36病変,粘膜下層(以下SM)浸潤癌が44病変と半数以上がSM浸潤を呈していたが,そのほとんどはSM1の浸潤で,SM2浸潤は4病変のみであった.しかし,大きさが数mmの病変でもSM浸潤の頻度が高いのは,やはり本病変の一つの特徴と考えられる.
本病変の特徴的内視鏡所見として,色調が褪色調である,腫瘍表面の血管拡張所見,粘膜下腫瘍様所見,等が指摘されている.今回検討に含まれた報告例で内視鏡所見が記載されていた病変は67病変で,うち褪色調病変の頻度は,矢板らは8/9,中川らは5/8,上山らは17/23,自験例で22/27,トータルで52/67(77.6%)が褪色調を呈しており,本病変の大きな特徴の一つと考えられる.もう一つの内視鏡所見の特徴として,腫瘍表面の血管拡張所見が挙げられる.血管拡張所見に関しては,先の報告者順に,7/9,7/8,13/23,22/27,トータルで49/67(73.1%)とやはり高い頻度でみられる所見と考えられる.しかし,磯野らはこの血管拡張所見に関して興味ある考察をしている.すなわち,血管拡張所見は粘膜の構造を保持しつつ,粘膜深層~粘膜下層浅層に増殖する病変で確認でき(癌,カルチノイド,胃MALTリンパ腫),これらの血管拡張は腫瘍自体の血管構造を示しているというより,粘膜深部以深の腫瘍増大に伴う粘膜固有層中層以深の集合静脈などの反応性拡張所見を示している事が疑われる.つまり,この拡張血管は,胃底腺型胃癌の特異的な所見ではなく,胃底腺型を含む粘膜深層~粘膜下層内に増殖する病変における特徴的な所見と考えられる,と述べている 13).この拡張血管の意義に関しては今後更なる症例の蓄積と解析を重ねて検討する必要があると考えられる.
“粘膜下腫瘍様所見”も本病変の特徴とされているが,これは病変主座が粘膜中層から深層中心にあるために,表層粘膜が周辺粘膜と同様の(健常)粘膜で被覆されているという所見から粘膜下腫瘍様と表現されたと考えられるが,粘膜下腫瘍は病変主座が粘膜下層に存在する病変を意味するために,本病変は上皮下腫瘍という表現の方が適しているとも考えられる.
2009年から現在まで,当院で経験したGA-FGは25例27病変(多発例2例)で,転移性胃癌(乳癌)が併存した1例2病変を除く24例25病変は内視鏡的粘膜切除(EMR1病変,ESD24病変)による治療を行っており,その臨床像の詳細と代表的症例を提示する.
1.臨床像25例の性別は男性16例,女性9例で,年齢は44歳-88歳,平均65歳であった.発見契機は,スクリーニング目的の検査(ドックや検診など)が16例と最も多く,他疾患の定期検査目的の上部内視鏡検査(以下EGD)時に発見された例が4例で,うち2例は胃癌の内視鏡的切除後の経過観察例,1例は胃癌で幽門側胃切除後の残胃例であった.同時性の併存胃病変として,通常型胃癌が3例3病変,乳癌の胃転移が1例であった.同時性胃癌病変は,いずれも今回検討対象となったGA-FGとは部位が異なり,1例は前庭部のⅡa+Ⅱc(tub1),1例は食道胃接合部のⅡc(tub1),1例は胃体下部後壁のⅡc(tub2)であった.前庭部と食道胃接合部の胃癌はGA-FGと同時にESDを施行し,胃体下部後壁のⅡcはGA-FG(穹隆部)をESD後に腹腔鏡下幽門側胃切除を行い,深達度SMの病変であった.
病変数は,単発が23例と大部分で,2例では比較的近接した部位に2個の病変が存在した.
病変の局在はU領域が23例25病変,M領域が2例2病変でL領域には1例もみられなかった.H.pylori感染は,検査未施行の1例を除き未感染11例(45.8%),感染13例で,感染13例のうち3例は除菌後の陰性例であった.胃粘膜萎縮は16例で有りと判定され,9例は萎縮無しと判定された.ただし萎縮有りの16例も病変の発生部位は,全例萎縮が無いか軽度の萎縮性変化がみられる程度であった.
2.内視鏡所見内視鏡的肉眼型に関しては,先にも述べたように小病変が多く凹凸の厳密な判定が難しい病変も少なく無かったが,明らかな隆起を呈する0-Ⅰ型が1病変,軽度の隆起を示す0-Ⅱa型が12病変,中心に明らかな陥凹を有するⅡa+Ⅱc型が1病変,と隆起型が多く,浅い陥凹(0-Ⅱc)と判定されたのが4病変,ほとんど凹凸が目立たず0-Ⅱbと判定したのは9病変であった.
病変の色調は,21病変は白色調を呈し,周辺粘膜とほぼ同じ正色調が4病変,黄白調が1病変,後述する表層血管の増生でやや発赤調に観察されたのが1病変であった.
本病変の特徴の一つとされる表層血管増生拡張所見は,多くの病変が白色調であるために腫瘍表層の血管所見が強調されて観察されるために判定が難しく,また病変によりその程度に差がみられるため,明らかに目立つ表層血管増生拡張は2+,軽度に目立つものを+,増生拡張が見られないものを-と3段階に分けて評価してみると,2+が12病変,+が10病変,-が5病変であった.
病変の大きさに関しては,1例2病変を除く25病変が粘膜切除されているため,25病変に関しては粘膜切除標本の最大腫瘍径を,粘膜切除未施行の2病変に関しては,生検時の生検紺子を指標に推測した.粘膜切除を施行した全病変が治療前に1個生検が施行されているため,生検前の大きさが5mm前後の小病変は生検による病変の縮小がみられた可能性を念頭に置く必要があるが,腫瘍の大きさは1.4mmから20mm,平均5.8mmであった.粘膜切除を施行した25病変の深達度は,13病変がSMで,12病変はMであった.SMの最大浸潤が500μm以上であったのは1病変(750μm)のみで,この1病変も含めリンパ管侵襲,脈管侵襲がみられた病変はなかった.
自験例では,当初は臨床側も病理側もGA-FGという疾患概念の知識が無く,生検診断が胃底腺腺腫,胃底腺過形成などの診断となっていた例もあり,これらの例は後にGA-FGという疾患概念を知った上で病理組織の再検討を行ってGA-FGという診断に至った例もある.また,提示する内視鏡画像に関しては,もともと小病変が多く1個の生検でもその影響が無視できない病変もあるため,初回発見時か経過を見た例でも生検施行前の画像を提示する.
症例1:74歳女性,ドックのEGDで穹隆部大彎に7mm程度の表層に血管増生拡張が目立ち,中心が陥凹し上皮下に白色調腫瘤の存在を疑わせる表面平滑な隆起を認め(Figure 1),生検でgroup2の結果で経過観察となった.1年後のEGDでは内視鏡的に変化は見られなかったが,その時の生検で胃型腺腫疑いとの診断でESD施行,ESD標本の病理診断は当初は腺腫の診断であったが,その後GA-FGという病変概念を知り病理標本の再検討を行ったところ本疾患に合致する病変という結論に至った例で,最終診断はGA-FG,深達度SM(750μm)であった(H.pylori陰性,胃粘膜萎縮無し).

74歳女性,穹隆部大彎に7mm程度の表層に血管増生拡張が目立ち,中心が陥凹し上皮下に白色調腫瘤の存在を疑わせる表面平滑な隆起を認めた.
症例2:53歳男性,ドックのEGDで胃体上部前壁に5mm程度の表層に血管増生拡張が目立ち,上皮下に白色調腫瘤の存在を疑わせる表面平滑な隆起を認めた(Figure 2).生検では胃底腺過形成の結果であったが,内視鏡所見からGA-FGを疑いESD施行,病理診断は当初は高分化型腺癌との結果であったが,その後の検討追加で最終的にはGA-FG,深達度SM(200μm)と診断された(H.pylori陰性,胃粘膜萎縮無し).

53歳男性,胃体上部前壁に5mm程度の表層に血管増生拡張が目立ち,上皮下に白色調腫瘤の存在を疑わせる表面平滑な隆起を認めた.
症例3:55歳女性,ドックのEGDで噴門部小彎に5mm程度の辺縁部に周辺粘膜より軽度に血管拡張が目立ち,上皮下に白色調腫瘤の存在を疑わせる表面平滑な極低い扁平隆起を認め(Figure 3-a),生検で胃型腺腫の診断であった.約1年後の経過観察時に形態変化はほとんど見られなかったが,GA-FGの可能性を考えESD施行,病理診断はGA-FG,深達度Mであった(Figure 3-b,c)(H.pylori陽性,胃粘膜萎縮有り).

a:55歳女性,噴門部小彎に5mm程度の辺縁部に周辺粘膜より軽度に血管拡張が目立ち,上皮下に白色調腫瘤の存在を疑わせる表面平滑な極低い扁平隆起を認めた.
b,c:ESD施行,病理診断はGA-FG,深達度Mであった.
症例4:80歳女性,胃食道逆流症(GERD)の定期EGDで噴門部後壁に表層に軽度に血管拡張が目立ち白色調の軽度に凹凸を示すほぼ平坦な病変を認めた(Figure 4).生検では胃底腺過形成の結果であったが,その後の検討でGA-FGが疑われESD施行,病理診断はGA-FG,深達度Mであった(H.pylori陰性,胃粘膜萎縮有り).

80歳女性,噴門部後壁に表層に軽度に血管拡張が目立ち白色調の軽度に凹凸を示すほぼ平坦な病変を認めた.
症例5:66歳女性,検診目的のEGDで胃体上部大彎に3mm程度の軽度に表層血管拡張を伴う平坦な白色斑を認め(Figure 5-a,b),生検でGA-FGの診断でESD施行.病理診断はGA-FG,深達度Mであった(H.pylori陽性,胃粘膜萎縮有り).

66歳女性,胃体上部大彎に3mm程度の軽度に表層血管拡張を伴う平坦な白色斑を認めた(矢印).
a:遠景像.
b:近接像.
症例6:64歳男性,胃癌検診のEGDで,胃体中部前壁に表層血管増生拡張が目立つ6mm程度の白色調平坦な病変を認め(Figure 6-a),生検でGA-FGの診断.併存病変として,食道癌(scc)と前庭部のⅡa(tub1)病変を認めたため,3病変ともESD施行.胃体中部前壁の病変の病理診断はGA-FG,深達度Mであった(Figure 6-b,c)(H.pylori陽性,胃粘膜萎縮有り).

a:64歳男性,胃体中部前壁に表層血管増生拡張が目立つ6mm程度の白色調平坦な病変を認めた.
b,c:ESD施行,病理診断はGA-FG,深達度Mであった.
症例7:79歳女性,胃癌検診のEGDで,胃体上部小彎に表層血管増生拡張を伴う白色調の僅かな陥凹を認め(Figure 7-a),生検でGA-FG疑いの診断で当科紹介となった.ESD施行し,病理診断はGA-FG,深達度Mであった(Figure 7-b,c)(H.pylori陰性,胃粘膜萎縮無し).

a:79歳女性,胃体上部小彎に表層血管増生拡張を伴う白色調の僅かな陥凹を認めた.
b,c:ESD施行し,病理診断はGA-FG,深達度Mであった.
症例8:59歳男性,3年前に前庭部胃癌で幽門側胃切除とH.pylori除菌.術後の定期検査で穹隆部に10mm程度の表層血管増生拡張が目立ち,表面平滑なやや発赤調の扁平隆起を認めた(Figure 8-a).この時点での生検では異型を伴う胃底腺ポリープ(group2)との診断で経過観察とされた.1年後の経過観察では前回の生検による軽度の陥凹と表層血管の蛇行・拡張が目立ったため(Figure 8-b),診断的治療目的のEMRを施行した.病理組織診断は当初非腫瘍性(再生)粘膜との診断であったが,後の再検討でGA-FG,深達度SM(160μm)と診断された.本例は胃癌術後の残胃に発生し,発見時は本病変の特徴である白色調が目立たず全体に発赤が目立ったために表層の血管拡張が目立たなかったが,経過観察時は全体の発赤性変化が減弱し,表層の血管拡張が目立つようになった病変であった.

a:59歳男性,穹隆部に10mm程度の表層血管増生拡張が目立ち,表面平滑なやや発赤調の扁平隆起を認めた.
b:1年後の経過観察では前回の生検による軽度の陥凹と表層血管の蛇行・拡張が目立った.
症例9:44歳男性,胃癌検診のEGDで噴門部大彎側に7mm程度の表層に血管増生拡張が目立ち,色調はほぼ正色調の表面平滑な低い隆起を認めた(Figure 9).生検ではgroup2の結果であったが,内視鏡所見からGA-FGが疑われ当科紹介となりESD施行,病理診断はGA-FG,深達度SM(100μm)であった(H.pylori陰性,胃粘膜萎縮無し).

44歳男性,噴門部大彎側に7mm程度の表層に血管増生拡張が目立ち,色調はほぼ正色調の表面平滑な低い隆起を認めた.
症例10:72歳男性,胃癌検診のEGDで噴門部小彎の小Ⅱc(tub1)と胃体上部前壁に表層血管増生の目立たない白色調小陥凹を認め(Figure 10),生検でGA-FG疑いで治療目的に紹介となった.両病変ともESDし,病理診断は噴門部のⅡcはtub1,SM(400μm),体上部の病変はGA-FG,深達度SM(50μm)であった(H.pylori陰性,胃粘膜萎縮有り).本例は白色調陥凹で,血管拡張が見られない病変であった.

72歳男性,噴門部小彎の小Ⅱc(tub1)と胃体上部前壁に表層血管増生の目立たない白色調小陥凹を認めた.
症例11:58歳男性,心窩部痛精査のためEGD,噴門部に3mm程度の表層に軽度の血管増生を認めるほぼ正色調の小隆起を認め(Figure 11-a,b),生検でGA-FGの診断でESD施行,病理診断はGA-FG,深達度Mであった(H.pylori陰性,胃粘膜萎縮無し).

58歳男性,噴門部に3mm程度の表層に軽度の血管増生を認めるほぼ正色調の小隆起を認めた(矢印).
a:遠景像.
b:近接像.
症例12:47歳女性,スクリーニングのEGDで噴門部後壁に表層血管が極軽度に拡張したやや白色調の2mm程度の小隆起を認め(Figure 12-a,b)生検でGA-FGの診断でESD施行.病理診断はGA-FG,深達度Mであった(H.pylori陰性,胃粘膜萎縮無し).

47歳女性,噴門部後壁に表層血管が極軽度に拡張したやや白色調の2mm程度の小隆起を認めた(矢印).
a:遠景像.
b:近接像.
鑑別診断としては,隆起型では,まず神経内分泌腫瘍(胃カルチノイド腫瘍)が挙げられる.胃カルチノイドは胃粘膜深層から粘膜下層に腫瘍細胞が増殖しており,本病変と類似の構造を呈している.さらにカルチノイド腫瘍の典型例も腫瘍表層に血管増生が特徴とされる.また,生検組織に関しても,GA-FGを経験し認識している病理医の場合は鑑別可能ではあるが,カルチノイド腫瘍とGA-FGの病理組織像が類似する場合もあり,さらに臨床側がカルチノイド疑いとして生検標本を提出した場合には誤診される可能性がある.事実,カルチノイド腫瘍が疑われた胃底腺型胃癌の報告例もある 14).カルチノイドは胃底腺型胃癌ほど褪色調が目立つ場合が少なくやや黄色調を呈し,また生検時もカルチノイドは胃底腺型胃癌より固いという感覚があると考えている.
頻度的には少ない発赤性隆起の場合は,過形成性ポリープ,隆起型早期胃癌等が鑑別としてあがるが,背景粘膜や隆起表層の粘膜模様などから鑑別は可能と考えられる.
陥凹型の場合は,褪色陥凹としてⅡc型胃癌,MALTリンパ腫,限局性粘膜萎縮などとの鑑別が必要と考えられる.陥凹型でも特徴的な血管拡張所見が併存している場合は本病変を念頭に置く事は可能と思われるが,血管拡張所見が見られない病変は鑑別が困難である可能性があるが,現時点では陥凹型の胃底腺型胃癌の例数が少なく,今後も症例を蓄積して鑑別診断を考える必要がある.
本病変は,提唱されて日が浅く,また経験症例数も限られ,その治療後の経過観察期間も短いため,治療法に関して確立されたものは無い.これまで報告されているGA-FGのほとんどが小病変で内視鏡的切除されており,M癌はもとよりSM浸潤が見られた例に関しても追加外科手術の有無に関わらず,再発例はみられず,基本的には低悪性度の腫瘍と考えられる 10),15).ただし上山らは,本病変が健常粘膜で被覆され,病変辺縁では粘膜深層にのみ浸潤している場合もあり,内視鏡的切除に際しては水平方向の断端に注意すべきとしている 10).経過観察により5年程度の間に形態変化が見られなかったとの報告例もある一方 13),15),静脈侵襲やリンパ管侵襲が見られた例の報告や 8),10),腫瘍の進行に伴い高異型度に変化するとの考えもあり,今後症例の蓄積とより長い経過観察による検討が必要である.
胃底腺型胃癌(主細胞優位型)の臨床像・内視鏡像について自験例を含め解説した.
最も特徴的なのは,腫瘍表面に血管拡張が目立つ褪色調病変という内視鏡所見で,H.pylori陽性率が従来の胃癌より低率で,腫瘍が小さいうちからSM浸潤を来しやすい事も本病変の特徴と考えられた.
今後,さらに症例を重ねて詳細な検討を続けて行く事も重要と考えられた.
本論文内容に関連する著者の利益相反:なし