日本消化器内視鏡学会雑誌
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プロトンポンプ阻害薬による胃粘膜変化の検討~ひび割れ粘膜と敷石様粘膜~
宮本 秀一加藤 元嗣 津田 桃子松田 加奈村中 徹人安孫子 怜史大野 正芳水島 健大森 沙織山本 桂子間部 克裕小野 尚子工藤 俊彦清水 勇一坂本 直哉
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2018 年 60 巻 1 号 p. 68-77

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抄録

【目的】プロトンポンプ阻害薬(以下PPI:Proton pump inhibitor)により胃底腺の拡張や壁細胞の内腔突出といった病理学的変化が報告されている.また,PPI服用者における上部消化管内視鏡検査では,ひび割れ粘膜(以下GCM:Gastric cracked mucosa)や敷石様粘膜(以下GCSM:Gastric cobblestone-like mucosa)などの胃粘膜変化を体部領域に認めることが多いことが知られている.しかし,これらの胃粘膜変化とPPIの関連についての検討はこれまでに報告されておらず,本検討ではPPIと胃粘膜変化(GCM,GCSM)との関連を明らかにすることを目的とする.

【方法】単施設,観察研究.対象は2014年8月から2014年11月までに北海道大学病院で上部消化管内視鏡検査を施行した連続症例.内視鏡施行医と画像確認医師2人の合計3人でPPI内服状況を伏せた状態でGCSM,GCMの有無を評価した.対象をPPI服用者(PPI group)とPPI非服用者(Control group)の2つのグループに分け,胃粘膜所見を比較検討した.

【結果】除外症例を除き最終的に解析対象症例となったのは538症例(Control group:374人,男性/女性:204人/170人,平均年齢:65.2歳;PPI group:164人,男性/女性:89人/75人,平均年齢:67.1歳)であった.全解析症例の54人(10%)にひび割れ粘膜を認め,18人(3.3%)に敷石様粘膜を認めた.PPI groupでは,ひび割れ粘膜は40人(24.4%),敷石様粘膜は15人(9.1%)に認め,Control groupと比較し有意差をもってひび割れ粘膜や敷石様粘膜を多く認めた.

【結語】PPI服用者にひび割れ粘膜と敷石様粘膜を多く認め,PPIとの関連が示唆された.

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© 2018 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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