日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
Lumen apposing metal stentの現況と展望
土屋 貴愛 殿塚 亮祐向井 俊太郎糸井 隆夫
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2018 年 60 巻 3 号 p. 203-214

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要旨

Lumen apposing metal stent(LAMS)は,離れた2つの管腔を2つの大きな張り出し(flange)でしっかりと把持し,引き寄せ瘻孔を形成するためのfull-covered typeの金属ステントであり様々な内視鏡治療に用いられている.LAMSはWONに代表されるような膵周囲液体貯留の超音波内視鏡下経消化管的ドレナージ術の有用性,安全性が数多く報告されており,大口径であるためステント内腔に上部消化管内視鏡を挿入することが可能であり,WONに対するネクロセクトミーにも威力を発揮する.さらに,超音波内視鏡下胆管十二指腸吻合術,超音波内視鏡下胆嚢ドレナージ術に対しても用いられ,胆嚢ドレナージ後に胆石を除去したという治療法の報告も散見される.また,新たな試みとして悪性胃十二指腸狭窄に対する治療として,LAMSを用いた超音波内視鏡下胃空腸吻合術も近年開発された.長期予後やコストなど,今後の検討が必要な課題もあるが,新規治療の可能性を秘めたデバイスであると言える.

Ⅰ はじめに

Lumen apposing metal stent(LAMS)は,これまでのステントとはコンセプトが異なり,狭窄部を拡張またはバイパスし,ドレナージを行うのではなく,新たな瘻孔を形成するため,目的に応じた径の穴をあけ,管腔と管腔を引き寄せ,瘻孔を作るという新しいデバイスである.内視鏡治療の現場においてはその名の通り「超音波内視鏡下瘻孔形成術」に最も威力を発揮し,具体的には膵仮性嚢胞(pancreatic pseudocyst:以下PPC)や被包化壊死(Walled-off necrosis:WON)などの膵周囲液体貯留(pancreatic fluid collections:PFCs)に対する超音波内視鏡下経消化管的ドレナージ(EUS-guided transmural drainage:EUS-TD) 1),2や,超音波内視鏡下胆管十二指腸吻合術(EUS-guided choledochoduodenostomy:EUS-CDS) 3,さらに超音波内視鏡下胆嚢ドレナージ(EUS-guided gallbladder drainage:EUS-GBD) 1に用いられている.また,新たな試みとして悪性胃十二指腸狭窄に対する治療として,LAMSを用いた超音波内視鏡下胃空腸吻合術(EUS-guided gastrojejunostomy:EUS-GJ)が報告されている 4.本稿ではLAMSを用いた内視鏡治療について現況と展望を概説する.

Ⅱ Lumen apposing metal stent(LAMS)とは

LAMSはlumen apposingという名の通り,離れた2つの管腔を2つの大きな張り出し(flange)でしっかりと把持し,引き寄せ瘻孔を形成するための金属ステントである 5.ステントは編込み式の記憶合金でできており,液体が漏出しないようにステントはfull-covered typeとなっている.Boston Scientific社のHot AXIOSTM stent(Figure 1),またAXIOSTM stent,Taewoong社のSPAXUSTMFigure 2)が2つの管腔をしっかり把持し引き寄せるという意味での真のLAMSであり,M.I.Tech社のHANARO stent(Figure 3)は引き寄せることは難しいが,把持できるため広義の意味でのLAMSであり,Taewoong社のNagiTM-Stent(Figure 4)は両端にフレア構造の付いた金属ステントであるBi-flanged metal stents(BFMS)に分類される.最初に開発されたLAMSであるAXIOSTM stent systemは,米国のベンチャー企業であるXlumena社がPFCsと胆嚢の超音波内視鏡下治療専用のデバイスとして創作し,現在はHot AXIOSTM stentとともにBoston Scientific社が製造,発売を行っている.Hot AXIOSTM systemが2017年10月に本邦でも薬事申請が承認され,今後PFCsに対するEUS-TDとして用いることがついに可能となる.

Figure 1 

AXIOSTM stent.

Figure 2 

SPAXUSTM

Figure 3 

HANARO stent.

Figure 4 

NAGITM-Stent.

Ⅲ Hot AXIOSTM systemについて

今後本邦でも使用可能となるHot AXIOSTM systemについて解説する.このデバイスの特徴は,デリバリーシステム(Figure 5-a)の先端に通電チップ(Figure 5-b)が備わっており直接通電穿刺が可能である点である.これまでは超音波内視鏡にて穿刺対象を観察した後に,EUS-FNA用の穿刺針で穿刺を行い,穿刺経路を拡張してから,ステントを留置する必要があったが,このシステムは穿刺すれば既にステントが内蔵されたデリバリー(Figure 5-c)が一期的に対象管腔に挿入されるため,拡張の必要なくステントが留置可能である.このことは,デバイスの入れ替えの煩雑さを解消し,手技時間の短縮,手技の途中の穿刺軸のズレや穿刺対象と消化管が離開する現象の予防,腹腔内への内容液の漏出をより防止できるといった利点を有する 6.ステントは編み込み式の記憶合金でできており,周囲がシリコンで被覆されているfull-coveredタイプの金属ステントである.9Frまたは10.8Frのデリバリーシステム内に,ステントが引き伸ばされた状態でマウントされている.2つのflange間部分をサドル(Figure 6のA)と称し,その外径(Figure 6のB)はサドル部分(Figure 6のC)の約2倍程度の長さとなっており両管腔をしっかり把持する.ステントのラインナップとして報告では,EUS-CDSなどに用いる6mm×8mm(サドル内径[C]×サドル長さ[A])や8mm×8mmと,EUS-TDやEUS-GBD,EUS-GJに用いる10mm×10mmや15mm×10mmなどのタイプがある 7が,本邦で発売されるものは,10mm×10mm,15mm×10mm,20mm ×10mmの3種類であり,デリバリーシステムの外径はいずれも10.8Frである(2017年11月現在).ステントの挿入および展開は非常に容易であり,デリバリーシステムに記載された1,2,3,4という番号に沿って,操作すれば,穿刺から遠位端,近位端と順に展開できる.ステントの迷入防止という観点では,デリバリーを手前に十分引き寄せてもステント端の張り出し部分が脱落しない強い把持力が備わっており,また近位端の展開の目安となるブラックマーカーが標付けされていることで安全に展開が可能である.さらに別の方法として,ブラックマーカーが見えづらい時には,管腔同士を引き寄せるために,ステントを十分消化管側に引き寄せたのちに,超音波画像でステントを視認した上でダウンアングルと時計軸回転をかけることでスコープと消化管の間に空間を作り,近位端をチャンネル内で展開してからデリバリーシステムを押し出すことで,迷入を防止した展開が可能である 8

Figure 5 

Hot AXIOSTM stent system.

a:デリバリーシステム外観.

b:先端の通電チップ.

c:デリバリーにはステントが内蔵されている.

Figure 6 

ステントの外形.

A:サドル.

B:フランジ長.

C:サドル内径.

Ⅳ LAMSを用いたPFCsに対するEUS‒TD

PFCsに対するEUS-TDの有用性を示す報告は多数あり,PFCsに対するAXIOSTMを用いたEUS-TDを,Binmoellerら 2が報告して以来,その有用性や安全性が多く報告されている 1),9)~17.Hanら 13はLAMSを用いたEUS-TDの成績をメタ解析し,WON 608症例の手技成功率が98.9%(95%CI:98.2-99.7%),治療奏効率が90%(95% CI:87-93%),PPCのドレナージ204症例は手技成功率が97%(95%CI:95-99%),治療奏効率が93%(95% CI:90-97%)と良好な成績を報告している.Moonら 18はSPAXUSTMを用いたPFCsに対するEUS-TD 4例と急性胆嚢炎に対するEUS-GBD 3例を報告しており,全例ステント留置に成功し,治療も奏効したと報告している.さらにPFCs治療後のSPAXUSTMは全例抜去可能であったと述べている.Mukaiら 19は,広義の意味でのLAMSであるHanaro stentを用いたEUS-TDの有用性を報告しており,全例ステントの留置に成功(12/12)し,4例はステント内を通してdirect endoscopic necrosectomy(DEN)を行い,手技中にステントの脱落はなかったと述べている.

DENはAngら 20が最近のreviewで述べているように,WONの内視鏡治療において,治療奏効率を向上させるための重要な治療手技である.LAMSはEUS-TDを行ったのちに,瘻孔形成を待たずにDENが開始可能であり,治療期間の短縮が図れる.またDENの多くは複数回の処置を要する場合が多く,LAMSはそのステントの腔内に通常の上部消化管内視鏡を挿入できるため,DENを行う際に瘻孔部をバルーン拡張する必要がなく,内視鏡の出し入れもスムースであり,簡便に壊死組織を除去することが可能である(Figure 7).さらにlumen apposingであるため内視鏡を出し入れする際にステントの脱落の可能性も低く,短時間で安全に施行可能で,DENにおいて極めて有用なデバイスと言える.Tarantinoら 15は,Hot AXIOSTMによるEUS-TDの後,一期的にDENを行い,治癒するまで3-7日に1回のDENを繰り返したところ,手技成功率は95%,1カ月後,3カ月後の治療奏効率はそれぞれ73%,84.2%であり,偶発症はなく,平均554.7日でステントを抜去した後の再発率は0%と良好な成績を報告している.

Figure 7 

WONに対してAXIOSTM stentを用いたEUS-TDの内視鏡像(文献7より引用改変).

a:ステント内から膿汁が流出している.

b:DENの様子.スネアを用いて壊死物質を把持している.

Bekkaliら 16は,BFMSと比較しLAMSは同等の手技成功率,治療奏効率,偶発症率,費用であるが,有意に手技時間を短縮できたと報告している.Lawら 12は,通常のERCPで用いる胆管金属ステント(covered self-expanding metal stent:SEMS)とLAMSによるEUS-TDを比較し,手技成功率,治療奏効率,偶発症率は変わらないが,LAMSの方が早期の再治療を要したと報告している.この理由は,おそらく15mmと10mm径のAXIOSTMを用いているため,DENの際に10mmのものがステントとスコープの干渉で脱落し易かったのではないかと予想されるが,一般的にSEMSは,内視鏡の挿入が難しく,ステント端の接触などで出血や潰瘍を来し易いため,LAMSの方が安全と推測されるが,適切なステント径の比較や長期予後など今後の検討の余地があると考える.さらに,WONが複数個に分断されている時や,骨盤内まで及んだ場合には経皮的なドレナージをEUS下のドレナージに加えて行う必要がある.Saharら 17は経皮的ドレナージとLAMSを用いたEUS-TD群25例を経皮的なドレナージとダブルピッグテール型のプラスチックステントを用いたEUS-TD群25例と比較検討したところ,手技成功率,治療奏効率,偶発症率,入院期間に有意差はなく,LAMSを用いた群の方に再治療を要した率が高かったと興味深い報告をしている.

内視鏡的治療を用いた治療が完遂した後には,LAMSをスネアや生検鉗子などで容易に抜去することが可能である.当科では,LAMSを抜去後に再発予防や再治療時の瘻孔確保のため,ダブルピッグテール型のプラスチックステントを1本留置している.

偶発症に関しては,上記のステント逸脱以外には,出血,穿孔,気胸,気腹症,瘻孔感染,疼痛などが少なからず報告されている 21.また興味深い報告として,Bangら 22はLAMSを用いたPFCs治療の50%(6/12)に偶発症があり,特にその半分は後出血であったとしている.これまでの多数例の報告と比較すると多めの偶発症率であるが,LAMSであっても十分なインフォームドコンセントや,偶発症時の外科や放射線科のバックアップ体制を整えてから行う必要があることを示唆していると思われる.

Ⅴ LAMSを用いたEUS‒CDS

EUS-CDSは2001年に初めての報告 23がなされた後に,ERCP下での経乳頭的胆管ドレナージ術が困難であった場合の代替治療としての有用性が報告され,その多くはERCPで用いる胆管プラスチックステントやSEMSが用いられており 24)~29,300例のEUS-CDSをreviewしたデータ 30から,成功率は94%と高い一方で,偶発症も19%と高く,その一因として専用デバイスのないことが挙げられていた.EUS-CDSの偶発症の中でも,手技中または手技後の胆汁漏は,胆汁性腹膜炎や感染胆汁を腹腔内や後腹膜腔内に漏出させ,時として重篤となる.理論的にはSEMSでもその拡張力で留置後の予防が期待されるが,実際には約10%程度,胆汁漏出を認めたという報告もある 31.これはおそらく手技中にデバイスを交換している時などに漏出しているものと考える.AXIOSTMは胆管と十二指腸を強固に把持しながら胆汁漏出を防ぎ,瘻孔形成を促進することが期待される(Figure 8).EUS-CDSにおけるAXIOSTMは胆管径を考慮しサイズの小さい6mmや8mmのもので行われている場合が多い 32)~37.Kundaら 31は,多施設で57例のAXIOSTM及びHot AXIOSTMによるEUS-CDSを後方視的に解析し,手技成功率及び臨床改善率がそれぞれ98.2,94.7%と非常に良好な成績を報告している.しかし,十二指腸穿孔,出血,胆管炎などの偶発症が7%に起こったとしており,AXIOSTMやHot AXIOSTMにおいても完全に安全性が保障されたものではないことを認識すべきである.われわれは多施設で前向きコホート研究として6mmと8mm径のHot AXIOSTMによるEUS-CDS 19例の長期予後を検討したところ,手技成功率は100%,治療奏効率(黄疸改善率)は1週間で79%,最終的には95%と良好であったが,手技中の偶発症は認めないものの,5例にステント閉塞(食残による閉塞が2,胆管とのkinkingが1,十二指腸側への自然脱落が1)を認め,平均観察期間205±187.9日においてすべての偶発症率は36.8%(7/19)と決して少なくなかった.また対象疾患に膵癌が多かったため19例中5例に十二指腸下行脚の閉塞を経過観察中に認め,十二指腸ステントや胃空腸吻合術を要しており,長期予後を考え,EUS-CDSを行う際には十二指腸閉塞を来した際の対策も考慮しておくべきであり,さらに閉塞という観点からはEUS-CDSのデバイスとしては形状の改良が必要と考えられた 37

Figure 8 

AXIOSTM stentを用いたEUS-CDS(文献3761より引用改変).

a:ステント遠位端を肝外胆管内で展開したところのEUS像.

b:ステント近位端を十二指腸内で展開したところの内視鏡像.胆汁が流出してる.

Ⅵ LAMSを用いたEUS‒GBD

急性胆嚢炎に対するEUS-GBDは,2007年の3編の報告から行われ始めた 38)~40.EUS-GBDは急性胆嚢炎において,手術適応が無く,これまで経皮経肝胆嚢ドレナージ(percutaneous transhepatic gallbladder drainage:PTGBD)が行われてきた症例で,患者の状態により外瘻が困難な場合が良い適応である.EUS-GBDにおいて,胆嚢は胃や十二指腸と比較的距離が離れており,また穿刺時に離開してしまう現象やステント逸脱などの合併症も起こり得る手技であり,離れた管腔を把持できるLAMSは適切なデバイスと言え,これまでにLAMSを用いたEUS-GBDの報告が散見される 1),13),18),41)~48.Anderloniら 46はこれまでの手術適応のない急性胆嚢炎に対しEUS-GBDを行った論文21編,166症例にsystematic reviewを行い,手技成功率,治療奏効率,偶発症率はそれぞれ,95.8,93.4,12.0%であったとし,さらに使用ステントをプラスチックステント,SEMS,LAMSに分けて検討し,それぞれ手技成功率が,100,98.6,91.5%,治療奏効率が,100,94.4,90.1%,偶発症率が,18.2,12.3,9.9%であったと報告している.またHanら 13は,EUS-GBDにLAMSを用いた181症例にメタ解析を行い,手技成功率,治療奏効率はそれぞれ,95%(95% CI:91-99%),93%(95% CI:90-97%)と優れた成績を報告している.Iraniら 47は手術適応の無い急性胆嚢炎症例を後方視的にPTGBDとLAMSを用いたEUS-GBDの比較検討を行い,EUS-GBDとPTGBDの手技成功率,治療奏効率,偶発症率はそれぞれ,98% vs 100%(p=0.88),96% vs 91%(p=0.20),11% vs 32%(p=0.065)と有意差は無いものの,偶発症率に関してはEUS-GBDの方が少ない傾向にあったとし,術後の疼痛スコアは有意にEUS-GBDで低く(p<0.05),再治療回数も0.2±0.4 vs 2.5±2.8(p<0.05)と有意にEUS-GBDで少なかったと報告している.EUS-GBDで用いられるAXIOSTMは高いドレナージ効果を期待して10mmや15mmが好んで用いられるが,ステントが十二指腸内腔を塞いでしまうなどの弊害も経験しているため,小さめのステントが良いのではないかと考えている.また,AXIOSTMを通して内視鏡を胆嚢内に挿入し,胆嚢結石の破砕や結石除去も行うことも可能である 1),49Figure 9).偶発症の内訳は胆汁性腹膜炎がもっとも多く,ステントの迷入,逸脱,出血,穿孔などが報告されている 50

Figure 9 

AXIOSTM stentを用いたEUS-GBD(文献7より引用).

a:胃前庭部にステントを留置した内視鏡像.

b:ステント内に上部消化管内視鏡を挿入し造影した際の透視像.

c:胆嚢内の結石を機械的砕石具にて砕き,結石除去を行った.

Ⅶ LAMSを用いたEUS‒GJ

胃前庭部癌や十二指腸癌,膵癌,胆管癌,乳頭部癌などは,腫瘍の進行とともに胃排出路障害(gastric outlet obstruction:GOO)を併発し,経口摂取困難や嘔吐などの症状を呈し,特にこれら症状は終末期に起こりやすく,著しくQOLを障害する.これまで外科的な胃空腸吻合術や,近年ではより低侵襲な内視鏡的十二指腸ステント留置術が普及しているが,外科的治療は確実な症状緩和が得られるが,終末期患者に対し侵襲が大きく,また十二指腸ステントは侵襲が低いものの,症状の再燃も少なくない.よって長期予後が期待されるような症例に対しては,全身状態なども考慮し外科的胃空腸吻合術も考慮すべきであるとも報告されている 51.最近の新たな試みとして,これらの長所を生かした,EUS-GJが動物実験 52や臨床試験として行われ注目されている 4.EUS-GJにおいては,空腸が虚脱していることや腸内の空気でEUSでの描出が困難である,また大腸の誤穿刺などの問題があり,定まった方法論が存在しなかった.そういった問題を解消するため,われわれはダブルバルーンタイプのイレウスチューブを用いて,穿刺予定の空腸に,2つのバルーンで挟むようにチューブを留置し,バルーンを膨らませた状態でその2つのバルーン間に注水を行ったのちに,同部位を穿刺しステント留置を行う方法を開発した 53Figure 10).本治療法は,安全かつ確実にステント留置が行え,ステントの逸脱がないことが極めて重要であり,現時点で最も適しているステントはHot AXIOSTMであると考えられる 4.内視鏡治療であるEUS-GJは外科的なGJよりも低侵襲で,また,狭窄との干渉のないステントであるため長期開存も期待される.GOOを併発し著しくQOLの低下した担癌患者に対しては,望ましい緩和治療と考えられ,今後の症例の蓄積や十二指腸ステントとの比較検討により,GOOに対する標準治療の一つになることが期待されている.また近年,輸入脚症候群に対する治療としてEUS-GJが有用であったとの報告 54),55もあり非常に興味深い.

Figure 10 

LAMSを用いたEUS-GJ(Endoscopic ultrasonography-guided double-balloon-occluded gastrojejunostomy bypass:EPASS).

a:ダブルバルーンチューブのバルーンを膨らませ(矢頭),バルーン間の空腸に生理食塩水を満たした(矢印)ところの透視像.

b:穿刺前の超音波内視鏡像.空腸内に生理食塩水が満たされている.

c:空腸内でAXIOSTM stent遠位端を展開した際の超音波内視鏡像.

d:胃内でAXIOSTM stent近位端を展開した際の内視鏡像.

e:EPASS直後の透視像.ステントは良好に展開している.

Ⅷ その他

上記以外にもLAMSを用いてドレナージが有効であった報告として,虫垂炎による穿孔で骨盤内膿瘍を来たし経直腸的にEUS-TDを行い著効した症例報告 56や,Mudireddy PRら 57の,膵切除を中心とした様々な外科切除後の液体貯留(膿瘍やbilomaを含む)47症例に対するLAMSを用いたドレナージの有用性に関する報告がある.用いたLAMSはHot AXIOSTMが76%,AXIOSTMが24%であり,主なドレナージ施行部位は胃が72%(34/47),直腸が17%(8/47),十二指腸が11%(5/47),手技成功率93.6%,治療奏効率89.3%,偶発症率4.25%であり,高い成功率と低い偶発症率から再手術や経皮的ドレナージに代わる可能性を述べている.他には,良性消化管狭窄に対するLAMSを用いた治療が報告されている 58)~60.Bazerbachiら 58は,胃空腸吻合部狭窄や潰瘍後瘢痕などの良性消化管狭窄に対し狭窄部にLAMSを用い狭窄解除を行った49症例を報告しており,手技成功率は100%,初回治療後の治療奏効率は96.4%と良い成績であるが,LAMSの逸脱が17.9%にあり,LAMS抜去症例の300日間の経過観察中に再治療を要した症例が75%に認められたと報告している.やはり新規の瘻孔形成には優れているが,狭窄解除に用いるのであれば,改良の余地があると考える.

Ⅸ おわりに

LAMSを用いた治療について最新の文献を交え概説した.先に述べたように新規治療法の可能性を秘めたデバイスであることは間違いなく,今後本邦でも市販化され普及していくと思われるが,安全に治療を行うためにも,新しいデバイスであるという認識のもと,初めて使用する際には,使用経験のある施設などでの見学とともに,トレーニングモデルで十分な経験を踏まえ慎重な導入が望ましい.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:土屋貴愛(AXIOSTM及びHot AXIOSTMの無償提供(Xlumena社,Boston Scientific社)),殿塚亮祐(AXIOSTM及びHot AXIOSTMの無償提供(Xlumena社,Boston Scientific社)),向井俊太郎(AXIOSTM及びHot AXIOSTMの無償提供(Xlumena社,Boston Scientific社)),糸井隆夫(AXIOSTM及びHot AXIOSTMの無償提供(Xlumena社,Boston Scientific社))

文 献
 
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