日本消化器内視鏡学会雑誌
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プロトンポンプ阻害薬は小腸粘膜傷害を増加させない:傾向スコアマッチングを用いた解析
岡 志郎山田 篤生
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2018 年 60 巻 4 号 p. 1048

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抄録

【背景】プロトンポンプ阻害薬(PPI)が胃酸抑制により小腸粘膜傷害(びらん・潰瘍)を増悪させる可能性が報告されているが,小腸粘膜傷害のリスクにはPPI以外の様々な薬剤や併存疾患が関与しており,PPIそのものによる小腸粘膜傷害の影響は明らかでない.

【目的】Propensity score matching(傾向スコアマッチング)法を用いて,PPI内服者・非内服者間における背景因子のバイアスを調整し,PPIと小腸粘膜傷害の関連を明らかにする.

【方法】2010年から2013年までに日本カプセル内視鏡学会所属の本邦18施設において,小腸カプセル内視鏡検査が施行された患者を前向きに登録した.これらを対象に,年齢,性別,併存疾患,PPI以外の薬剤因子からロジスティック回帰分析を用いてPropensity scoreを算出し,PPI内服群と非PPI内服群にPropensity score matchingを行い,小腸粘膜傷害(びらん・潰瘍)の有病率を両群間で比較した.さらに非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)内服者と非内服者間でサブグループ解析を行った.

【結果】登録された1,769人からPropensity score matching法によりPPI内服群327人,非PPI内服群327人を選択した.小腸粘膜傷害の有病率はPPI内服群93人(28.4%),非内服群85人(26.0%)で両群間に有意差を認めなかった.また,NSAIDs使用者と非使用者におけるサブグループ解析においても,PPI内服群と非内服群間において小腸粘膜傷害の有病率に有意差を認めなかった.

【結語】使用したPPIの種類およびNSAIDs使用の有無にかかわらず,PPIは小腸粘膜傷害の有病率を増加させなかった.

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© 2018 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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