2018 年 60 巻 5 号 p. 1138
【背景】出血は内視鏡的乳頭括約筋切開術(Endoscopic sphincterotomy:EST)の重篤な有害事象の1つである.しかしながら,EST後の後期出血に関与する危険因子は明らかにされていない.
【対象と方法】2011年1月から2015年12月の間にESTを施行した連続患者を対象にして,後期出血の発生率,治療成績,危険因子につき遡及的に検討した.後期出血は内視鏡治療後24時間以降に発症した症候性出血と定義した.
【結果】対象期間に1,113名の患者にESTが施行され,後期出血は30名(2.7%)に認められた.後期出血の発症時期の中央値はEST後2日(1-6日),その重症度は軽度4例,中等度20例,高度6例であり,すべての患者で内視鏡止血が得られた.
単変量解析では,血液透析(p=0.013),抗血栓薬のヘパリン置換(p=0.012),EST直後の早期出血(p<0.001)を認めた患者に高頻度に後期出血が認められた.多変量解析により血液透析(OR 6.44,95% CI 1.67-24.8;p=0.007),ヘパリン置換(OR 3.76,95% CI 1.42-9.98;p=0.008),EST後早期出血(OR 4.35,95% CI 1.90-9.96;p<0.001)は独立した後期出血の危険因子であることが判明した.
【結語】EST後の後期出血は2.7%に認められ,血液透析,ヘパリン置換,EST後早期出血が危険因子と考えられた.
今回の検討では,EST後出血をEST後7日以内に内視鏡的に出血が確認され止血処置を要したものと定義しており,24時間以内に発症した早期出血と24時間以降に発症した後期出血に分類している.
EST後出血は118例(10.6%)に認められ,その内訳は早期出血97名(8.7%),後期出血30名(2.7%)であり,早期出血例は全例ERCP処置中の出血であった.全例に内視鏡止血が得られ関連死は認めていないが,早期出血の9.3%に後期出血を認めており,後期出血の13.3%に再出血を認め,47%に平均4単位の輸血が施行されていた.
後期出血は早期発見が困難なことから重症化しやすく,下血,頻脈,血圧低下に加え,急性胆管炎などの臨床症状に注意が必要である.治療についても内視鏡治療の代替案として,血管造影や手術治療などを考慮する必要がある.
JGESのガイドライン 2)では,EST前にアスピリンの休薬は不要であるとしているが,チエノピリジンは休薬しアスピリンまたはシロスタゾールに変更することを,ワルファリンは休薬しヘパリンへ置換をすることを推奨している.本検討の多くはこのガイドラインに準じてESTが施行されているが,抗血小板薬の持続投与は後期出血との関連性を認めておらず,ガイドラインの正当性を示しているとも考えられる.一方で,ヘパリン置換は後期出血の危険因子となっており,ESTの周術期におけるヘパリン置換については更なる検討を要するとしている.
因みに2017年に発表された診療ガイドラインの追補 3)では,Evidence Level C,推奨度2ではあるが,ヘパリン置換は後出血リスクを上げる可能性があるとし,ヘパリン置換の代わりに,INRが治療域であればワルファリン継続下あるいは非弁膜症性心房細動の場合にはDOACへの一時的変更で内視鏡的処置を行うことも考慮されるとしている.