日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
急性胆嚢炎に対する内視鏡治療
松原 三郎 伊佐山 浩通屋嘉比 康治
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2018 年 60 巻 6 号 p. 1186-1207

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要旨

急性胆嚢炎に対する内視鏡治療には,ERCP下に行う経乳頭的アプローチ(ETGBD)とEUSを用いる経消化管的アプローチ(EUS-GBD)がある.ETGBDは胆嚢管を突破するという技術的困難さから成功率は若干低いが,PTGBD不能例に対する代替治療として確立されており,また内瘻化することで胆嚢炎再発に対する長期予防効果も期待されている.EUS-GBDは2007年に始まった新しい方法であるがそのエビデンスの量はETGBDをすでに凌駕している.高い成功率と安全性を有し,長期予後も良好であり,さらに使用するステントによっては結石除去まで行うことが可能である.今後PTGBDに代わる第一選択の治療法となる可能性を秘めている.本稿では,ETGBDおよびEUS-GBDについて,適応,方法,短期成績,長期成績,偶発症,PTGBDとの比較などについて最新のエビデンスに基づき解説する.

Ⅰ 緒  言

急性胆嚢炎に対する治療は,近年急速な進歩を遂げている.1985年に腹腔鏡下胆嚢摘出術(laparoscopic cholecystectomy, LC)が導入され 1,現在では症候性の胆嚢病変,軽症~中等症の胆嚢炎に対する第一選択の治療法になっている.さらに,美容上の観点および疼痛の低減のために,手術痕を可及的に縮小する目的でポートを小さくする(mini-LC),ポート数を減らす(single-incision LC)などの試みがなされているが,通常のLCを凌駕する明らかなevidenceはなく,また技術的な困難さ,施術時間の長さ,コスト面などから一般に普及するには至っていない.一方,美容,疼痛の観点を究極に追及した外科治療として,NOTES(natural orifice transluminal endoscopic surgery)による胆嚢摘出術が2007年に初めて報告された 1.経胃的または経膣的に軟性鏡を用いて胆嚢摘出を行うもので,体表には一切の傷が残らない.NOTESのみで手技を完遂するpure NOTES以外に,腹腔鏡とのコンビネーションで行うhybrid NOTESがある.究極の低侵襲手術として脚光を浴びたNOTESだが,特別な処置具が必要であること,技術的に非常に難しいこと,また症候性胆石症が対象であり急性胆嚢炎は適応外であることから,現在はごく限られた先進施設のみで実施されている.

これら外科治療,すなわち胆嚢摘出術が胆嚢炎の根本的な治療法である.わが国で発刊された胆道炎の診療ガイドライン第2版でも,発症から72時間以内の軽症胆嚢炎(経験豊富な施設では中等症も含む)に対しては早期手術,72時間以上経過した例や中等症~重症例では,まず胆嚢ドレナージを行い,その後炎症が収まってからの手術が推奨されている 2.ガイドラインは,このように最終的に手術を行うまでの手順を重症度別に提示したものであるが,実際には重症度とは別に外科治療が困難あるいは不可能な胆嚢炎患者は多く,近年その数はますます増加していると思われる.背景としては,まず社会全体の高齢化により,surgical riskの高い症例が増加していることが第一に挙げられる.さらには,全体として固形癌の患者は増え続けており,同時に化学療法の進歩により予後は少しずつ改善されているため,担癌患者が胆嚢炎を発症する機会が増えていることが考えられる 3.また,膵・胆道癌患者の増加により,切除不能悪性胆道閉塞に対し金属ステント(self-expandable metal stent, SEMS)留置を受ける患者が増え,SEMSの偶発症としての胆嚢炎 4)~10が増加している可能性がある.実際には,こういった患者側の因子だけでなく,外科医や手術室の確保など病院側の事情により早期手術ができない場合もある.このような背景に伴い,急性胆嚢炎に対する非手術療法の報告が近年数多くなされるようになってきている.

急性胆嚢炎に対する非手術療法の基本は胆嚢ドレナージであり,目的別に,外科手術を前提とした一時的な術前ドレナージ(bridge to surgery, BTS)と,手術適応のない患者に対する姑息的ドレナージ(palliation)に分けられる.Palliationの場合,ドレナージ後の再発が問題となるため,ドレナージ後に胆嚢を温存しつつ胆石除去を行う試みもなされてきた.実際には手技の煩雑さや困難さからほとんど行われていないが,近年の内視鏡技術の飛躍的な進歩により,現実的に施行可能になりつつある.

胆嚢ドレナージはまた,アプローチルート別に経皮的,経内視鏡的(経乳頭的または経消化管的)に分類される.まず1980年に経皮経肝胆嚢ドレナージ(percutaneous transhepatic gallbladder drainage, PTGBD)が報告された 11.簡便で,手技的・臨床的成功率は90%以上と高く 12,BTS/palliation共に現在に至るまで急性胆嚢炎に対するドレナージの標準的方法であり,ガイドラインでも第一選択のドレナージ法とされている 13.しかし,腹水や出血傾向のある患者では胆汁性腹膜炎や出血などのリスクがあり,また腸管が胆嚢の腹側を覆っている場合(Chilaiditi症候群)や遊走胆嚢では安全な穿刺ルートが取れないなどの問題点がある.さらに,皮膚からチューブが出る外瘻状態となることから,疼痛や逸脱の危険性があり,20~30%に何らかの有害事象が生じるとされている 14.またpalliation目的の場合,瘻孔が完成するまでの3~6週間はチューブを抜去できず 15,胆石性胆嚢炎の場合はチューブ抜去後に30~40%前後で胆嚢炎を再発 15)~17し,SEMS留置後や胆嚢癌による胆嚢炎の場合は胆嚢管の閉塞が解除されないため長期留置を余儀なくされ,QOL(quality of life)低下を来す.胆石による再発を予防するために,瘻孔を拡張して内視鏡を挿入し,胆石を除去する方法も報告されている 18が,手技が煩雑でありほとんど行われていないのが現状である.

その後,内視鏡技術の進歩に伴い,また低侵襲治療という方向性から,内視鏡的胆嚢ドレナージが開発されていく.まず,内視鏡的逆行性胆管膵管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatograpy, ERCP)の技術を用いて,1990年に経乳頭的ドレナージ(endoscopic transpapillary gallbladder drainage, ETGBD)が報告された 19.BTS/palliation共に適応があるが,瘻孔形成を待たずに抜去可能であるため,palliationが主な適応である.さらに内瘻可能というメリットがあるため,近年では再発予防のための長期留置の有用性が期待されている 20.BTSとしては,1996年の報告 21以降,欧米では肝移植待機中の末期の肝硬変患者における胆嚢炎/症候性胆石症に対する内瘻術が良い適応とされている.ETGBDは腹水や出血傾向などPTGBD適応外の症例でも施行可能であり,胆管結石の治療も同時にできるという長所がある一方で,胆嚢管を突破しなければならないため成功率が低く,またERCP後膵炎という重篤になりうる有害事象があることが問題である.そのため,基本的にはPTGBD適応外症例に対する代替療法としての位置づけである 14.経乳頭的アプローチでも,ドレナージだけでなく胆石治療も可能ではある.経口胆道鏡を胆嚢内に挿入し,電気水圧衝撃波結石破砕術(electrohydraulic lithotripsy : EHL)で胆嚢結石を破砕し除去する方法 22だが,胆嚢管が太い症例でのみ施行可能であり,煩雑であることからやはり一般的には行われていない.

1992年に超音波内視鏡(endoscopic ultrasound, EUS)を用いた仮性膵嚢胞ドレナージ 23がされて以降,胆管 24),25,膵管 26,腹腔内・骨盤内膿瘍 27等に対するEUS下の経消化管的ドレナージが次々と開発された.そして2007年にEUSを用いた経消化管的胆嚢ドレナージ(EUS-guided gallbladder drainage, EUS-GBD)が初めて報告され 28,以降胆嚢ドレナージに関する報告はEUS-GBDが主流となっていく.超音波ガイド下に穿刺するためPTGBDと同様の高い成功率を有しながら疼痛が少なく 29,内瘻が可能なためQOLが保たれる.よって,palliationに関する報告が中心であり,長期留置の成績も報告されてきている.また,出血のリスクや腹水の影響もPTGBDに比べると少ないとされ 29)~33,ETGBDのような膵炎のリスクもない.EUS-GBDはこのようにPTGBDとETGBDの長所を併せもち,短所を克服し,確実で低侵襲な方向に進化した手技である.現時点ではまだPTGBDの代替治療とされているが,PTGBDとの比較検討もされてきており 29),34)~38,今後第一選択の胆嚢ドレナージ法となっていくものと期待される.さらに,わが国では薬事未承認ではあるが,大口径で短く両端にflangeがついたlumen-apposing metal stent(LAMS)と呼ばれるステントを用いれば,胆嚢と消化管が強固に密着されるため,ステント内に内視鏡を挿入して胆石を除去することも可能である 39)~44.これは経皮や経乳頭ルートでの結石除去と違い,簡便かつ容易で患者の負担も少なく,胆嚢を温存する非手術療法でありながら,胆石性急性胆嚢炎の根本的治療となりうる可能性を持っている.

以上のように,現在は急性胆嚢炎に対する様々な治療法が選択可能であり,治療方針は胆嚢炎の重症度,患者の状態および併存疾患,病院側の事情(手技の経験や人員確保等)など様々な要素に基づいて決定することが必要である(Table 1 14.本稿では,急性胆嚢炎に対する内視鏡治療として,ETGBDおよびEUS-GBDについて,適応,方法,短期成績,長期成績,偶発症,PTGBDとの比較などについて最新のエビデンスに基づき解説する.なお,NOTESは内視鏡治療ではあるものの,外科的治療の範疇に入るものであるため,内視鏡医を対象とした本稿では扱わないこととした.

Table 1 

手術適応,胆嚢炎重症度に応じた治療法一覧(文献14より改変して引用).

Ⅱ 経乳頭的ドレナージ(ETGBD)

1)概論

ERCP関連手技の一つである.胆管深部挿管後に,ガイドワイヤーで胆嚢管開口部を探り,胆嚢管を突破し,胆嚢にステントまたは経鼻チューブを挿入する方法である.ERCPによる経乳頭的胆嚢挿管はKozarekらにより1984年に初めて報告され 45),46,一時期コレステロール胆石に対して経鼻チューブ留置下にmethyl tert-buthyl ether(MTBE)を注入する胆石溶解療法に用いられた 47)~50が,LCの普及に伴い行われなくなった.その後,胆嚢腫瘍に対する胆汁細胞診 51,擦過細胞診や管腔内超音波(intraductal ultrasonography, IDUS) 52,そして急性胆嚢炎 12),19),53)~60および症候性胆石症に対するドレナージ 21),61)~66に関する報告がされるようになった.ドレナージは経鼻チューブによる外瘻術 19に始まり,その後プラスチックステントによる内瘻術が報告された 53.Mirizzi症候群 56),59),67や胆嚢穿孔 68),69に対する非手術療法としても報告されている.

経乳頭的ドレナージの名称に関してはETGBD,ETGD,EGBDなどがあり,ガイドラインではEGBDとされている.しかし,EGBDは概念上EUS-GBDも含まれるため,本稿ではETGBDと呼ぶことにする.なお,ガイドラインでは,経乳頭的ドレナージのうち,外瘻をENGBD(endoscopic naso-gallbladder drainage),内瘻をEGBS(endoscopic gallbladder stenting)と呼称している.

2)適応

ガイドラインでは,PTGBD適応外の症例,すなわち出血傾向のある症例(抗血栓薬内服中,末期肝硬変,血液透析中,血液疾患など),中等量以上の腹水貯留例,安全な穿刺経路が確保できない症例(遊走胆嚢やChilaiditi症候群など) 58に対してETGBDが推奨されている 13が,実際にはERCPの禁忌がなければすべての胆嚢炎に対してBTSとしてもpalliationとしても施行可能である(Table 1).重症胆嚢炎の場合には短時間に確実に施行できるPTGBDが望ましい 14と思われるが,中等症または重症例を対象とした報告もある 70),71.PTGBDの適応であってもETGBDがより望ましい状況としては,総胆管結石合併例,胆嚢癌疑診例(PTGBDでは播種の危険性がある),palliation症例である.特にpalliation症例では,QOL低下を伴うPTGBDよりもETGBDがふさわしいと言える.以上のようなprimary drainageだけでなく,一旦PTGBDが留置された後に内瘻化目的にETGBDに切り替えるconversion目的で行われる場合もある 63),72)~74

3)方法

ETGBDの方法の詳細は他稿 75に譲り,概略および困難例に対する既報上の工夫を述べる.胆管深部挿管後,胆管造影を行い,胆嚢管を描出するが,急性胆嚢炎では胆嚢管の閉塞や炎症性狭窄により胆嚢管が造影されない場合が少なくない.また,造影剤は胆汁より比重が大きいため,腹臥位でERCPを行う場合,胆嚢管が胆管の背側から分岐する症例では胆嚢管は描出されにくい.事前にMRCP(magnetic resonance cholangiopancreatography)やCT(computed tomography)の冠状断で胆嚢管の開口部および走行を確認しておくことが重要である.トルク性能の高い親水性ガイドワイヤーであるラジフォーカスガイドワイヤー(テルモ株式会社)の0.035インチ,先端アングル型を回転させながら総胆管内を上下させ,引っ掛かるところを探す 76.先端が胆嚢管開口部に入ったら,ガイドワイヤーを押す力は最小限にして,回転を使ってガイドワイヤーを胆嚢管内に挿入する.胆嚢管内にある程度入ったところで,ガイドワイヤーが撥ねないように適度な引きのテンションをかけつつ,カテーテルを胆嚢管に挿入する.適宜造影を行い胆嚢管の走行を確認しながら,ガイドワイヤーで胆嚢管内を突破し,胆嚢内にカテーテルを挿入する.その後,ガイドワイヤーをスティッフタイプに交換し,内瘻の場合は両端ピッグテール型プラスチックステント(7Fr),外瘻の場合は先端ピッグテール型経鼻チューブ(5~7Fr)を胆嚢内に留置する.

胆嚢管開口部を探れない場合,ガイドワイヤーを0.018~0.032インチの細径にする 58),75),77,balloon occlusion cholangiography 78や体位変換・Cアームの回転 77で胆嚢管を描出する,管腔内超音波検査(intraductal ultrasonography, IDUS)で胆嚢管開口部を確認する,胆道鏡 74やSpyGlass 63),79),80・SpyGlass DS 81),82(ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社),直接経口胆道鏡 83などを用いる,などの工夫が報告されている.

胆嚢管の分岐形態はバリエーションが多いが,多くは総胆管の右側から分岐する.胆嚢管が足側方向に向いていたり左側から分岐している場合は,通常のカテーテルよりもSwing Tip(オリンパス株式会社)や回転式Sphincterotome 12),58),75),77などの先端を湾曲させることができるカテーテルが有用である.

胆嚢管はらせん状の構造をしており,壁が薄いため,ガイドワイヤーの先端で容易に穿孔しうる 77.胆嚢管の通過においては,ガイドワイヤーの操作は十分慎重に行わなければならない.GWの先端を壁に押し当てて反転させループ状にし,胆嚢管を押し広げるように挿入するループテクニックが安全 84だが,胆嚢管が細い場合や胆嚢管に結石が嵌頓している場合は難しい.胆嚢管が細い場合は0.018インチのガイドワイヤーとマイクロカテーテルが有用という報告もある 83

PTGBDからのconversionの場合,ランデブー法で行うこともある.PTGBDのチューブからガイドワイヤーで胆嚢管を順行性に探り十二指腸に出し,内視鏡の先端から出した把持鉗子かスネアでガイドワイヤーを把持して鉗子口から出し,ガイドワイヤーにカテーテルをかぶせて胆嚢内に挿入する 72),73.その先は通常の場合と同様である.

4)治療成績,偶発症,長期予後(Table 23
Table 2 

急性胆嚢炎に対するETGBD(外瘻)の成績.

Table 3 

急性胆嚢炎/症候性胆石症に対するETGBD(内瘻)の成績.

(1)手技的成功率

報告の多くがcase report/seriesなどのretrospective studyであり,手技的成功率は64~100% 3),19)~22),53)~55),57)~65),67),69),74),78)~83),85)~87と幅がある.Itoiらの2010年のsystematic reviewにおけるこれらretrospective studyのpooled analysis 12では,手技的成功率は外瘻81%,内瘻96%となっている.しかし,全体の母数の記載がなく成功例のみを対象としたと考えられる文献を多く含む(特に内瘻)ため選択バイアスが存在し,実際はこれより低いと考えられる.近年prospective studyが行われるようになり,全部で5編 66),70),71),88),89(内瘻と外瘻の無作為化比較試験(randomized controlled trial, RCT)2編を含む)報告されている.手技的成功率は78%(外瘻) 70,79%(内瘻) 88,86%(RCT) 71,89%(RCT) 89,100%(内瘻) 66と80~90%前後である.また,RCTでは,外瘻と内瘻に手技的成功率の差はない 71),89.2017年にKhanらが10例以上の報告をまとめた最新のsystematic reviewおよびmeta-analysisを報告しており,手技的成功率は全体で83%(外瘻81%,内瘻85%)であった.

手技的成功に関与する因子についても検討されている.Retrospectiveな検討では不成功例で胆嚢短径が大きく,胆嚢壁肥厚が強い 85というものや,胆嚢炎の成因,重症度,胆嚢管の造影形態は成功率に相関しない 86などの報告がある.Prospectiveな検討 70では,胆嚢壁の肥厚(>7mm)と年齢が不成功の有意な因子であった.以上より,胆嚢壁の肥厚が強い症例では成功率が低い可能性がある.また,Prospective studyの中でも,症候性胆石症では急性胆嚢炎よりも手技的成功率が高い傾向にある.胆嚢炎発症後は胆石の嵌頓,胆嚢管の炎症性狭窄などから成功率が下がることが要因と思われる.さらに,learning curveの存在も指摘されている.ETGBDはERCPができれば誰でも施行可能ではあるが,胆嚢管を突破するには様々な障壁があり,成功率を高めるためには助手を含めた技量の向上と経験が不可欠である.実際に,retrospectiveではあるが最初の4年間とその後の5年間で成功率が50%から89%に上昇したという報告 59もある.

(2)臨床的成功率

Intention-to treat(ITT)解析での臨床的成功率は,前述のretrospective study  3),19)~22),53)~55),57)~65),67),69),74),78)~83),85)~87では外瘻62%~100%,内瘻64~100%と様々であるが,Itoiらのpooled analysis 12では外瘻75%,内瘻88%とおおむね手技的成功率から5~10%程度低い結果となっている.Prospective study 66),70),71),88),89でも,外瘻の臨床的成功率は71% 71,74% 70,86% 89,内瘻では78% 89,79% 88,83% 71,100% 66と全体で70~80%前後となっており,やはり手技的成功率より5~10%程度低い.Khanらの最新のmeta-analysisでは,per-protocol(PP)解析で,全体で93%(外瘻93%,内瘻95%)であり,留置が成功しても7%の臨床的不成功が存在することを示している 36.臨床的改善が得られない主な原因としては,外瘻ではチューブの逸脱や自己抜去,内瘻では胆汁が粘稠な場合や胆石充満などによりドレナージ不良となる場合が考えられる.特に急性胆嚢炎では,症候性胆石症よりも胆汁が膿性で粘稠である場合が多く,内瘻のドレナージ不良が危惧されるが,既報では内瘻の成績が外瘻に劣るということはない.これは,内瘻の既報の多くが症候性胆石症を主な対象としていることと無関係ではないかもしれない.しかし,急性胆嚢炎のみを対象としたRCTに限定しても,外瘻と内瘻で臨床的成功率に差は見られない 71),89ため,全体では外瘻と内瘻の有効性に差はないと考えて良いと思われる.ただ,7Frの内瘻と5Frの外瘻を比較したRCT 89では,有意差はないものの,内瘻から外瘻に切り替えて有効だった症例が2例あったとしている.明らかに胆汁が粘稠な場合や結石が充満している場合,胆嚢管の狭窄で5Frのチューブしか入らない場合などは,洗浄できる外瘻の方が確実であろう.一期的内瘻によるドレナージ不良を防ぐために,生理食塩水で胆嚢内を洗浄してからステントを留置する方法 83も報告されているが,ERCPのカテーテルでは内腔が細く,十分に洗浄できない.そこで,外瘻チューブを入れて,100~200mlの十分な生理食塩水で胆嚢内を洗浄してからチューブを一旦抜去し,適切な長さに切ってステントとして再挿入する“Hybrid方式”による一期的内瘻法 90も報告されており,PP解析での臨床的成功率は98%と良好な成績が示されている.

(3)短期偶発症

手技に伴う有害事象としては,通常のERCP同様に,膵炎が最も頻度が高く重要である.内視鏡的乳頭切開術(endoscopic sphincterotomy, EST)を付加する場合は出血・穿孔などのリスクもある.その他,本手技に特異的な偶発症としては,胆嚢管損傷/穿孔があり,Prospectivestudy  66),70),71),88),89での発症率は0~11%である.胆嚢管穿孔にはガイドワイヤー単独によるものとカテーテルによるものがあるが,どちらの場合でも起きた場合には速やかに手技を終了し,胆嚢管分岐部より上流の胆管に外瘻チューブを留置することで対処可能である.最新のmeta-analysisでは偶発症発生率は全体で10%とされている 36

(4)長期予後

BTSの場合,手術までの期間が短い場合は主に外瘻が選択される 54),56)~58),70),71が,手術前に一旦退院となる場合は,外瘻チューブを抜去する必要がある.しかし手術待機中に胆嚢炎が再発する場合もある 70ため,内瘻に入れ替えてから退院する 68ことも行われる.ETGBD後の手術成績についての報告は少ないが,外瘻留置中のLCは,胆嚢管が認識しやすいため開腹移行率が低いという報告がある 57),58.また外瘻と内瘻のRCT 71では開腹移行率は共に0%であったとされており,少なくともETGBDが腹腔鏡手術に悪影響を及ぼすことはなさそうである.待機期間が長期になる場合は主に内瘻が用いられる.通常のBTSでは待機期間は長くて2~3カ月であり,内瘻のコントロールは良好である 74が,肝移植待機中の末期肝硬変患者では肝移植まで数年に渡る場合がある.既報では待機期間3年以内で胆嚢炎の再発は4~8% 21),61),62),66と低いが,後述するように胆嚢炎以外のステント関連の偶発症も数%に生じる.胆嚢炎の治療により肝予備能が改善するという報告もある 63が,定かではない.

Palliationでは,当初外瘻の報告もあったが,最近は長期間に渡り再発を予防するために内瘻の長期留置の報告が多い.外瘻の場合,胆嚢炎改善後にMTBEで結石破砕を行う方法 19),54が1990年代前半まで行われていたが,その後はあまり行われず,胆嚢炎改善後に単純に抜去するようになった 55),56),58),59),67),86.抜去後の長期予後に関しては,いくつかの論文 55),56),59),67),86で,数カ月~3年の観察期間で再発は見られなかったとされているが,すべて10例以下のretrospectiveな検討であり,正確な再発率は不明である.しかし,前述のようにPTGBD抜去後は30~40%前後胆嚢炎を再発する 15)~17とされているため,実際には再発のリスクはあると思われるが,理論上ETGBDはPTGBDよりも胆嚢管に迷入した結石を移動させる効果が期待されるため,PTGBD抜去後よりも再発のリスクは低いのかもしれない.内瘻の場合は,胆嚢炎改善後抜去したという報告はなく長期留置が行われるが,再発予防効果や安全性などはまだ十分な知見が得られていない.Retrospectiveな検討では,経過観察期間に幅があるが,胆嚢炎の再発率は0~66% 3),20),59),63)~65),74),78),83),86となっており,多くは5%以下とPTGBD抜去後と比べ低い.最新のmeta-analysisでは再発率は3%とされている 36.Prospectiveに長期予後を見た報告 88は1編のみであり,20例を中央値で20カ月間経過観察し,胆嚢炎の再発は認めなかったものの,4例(20%)に後期偶発症(ステント逸脱2,胆管炎1,胆道痛1)を認めた.無イベント生存期間中央値は25カ月であったため,少なくとも2年は抜去や定期交換をせず,wait-and-seeで良いのではないかと考察されている.内瘻長期留置の後期偶発症には,胆嚢炎再発だけでなくステント逸脱 20),59),78),88),91,胆管炎 20),60),61),88,胆管結石 61),62,肝膿瘍 74),83,胆管狭窄 63などステント関連の偶発症が報告されているが,胆管ステントの評価基準 92のように統一された基準が存在しないことが問題である.逸脱は,胆嚢炎再発のリスクだけでなく,膵炎 91や十二指腸潰瘍 63・穿孔 59),78の原因になりうる.Maekawaらは逸脱防止のためにステントをできるだけ底部まで入れることを主張している 83.またprospective studyを報告したLeeらはESTを付加すると逸脱のリスクが高まるとしている.胆管結石,胆管炎,肝膿瘍などの胆汁鬱滞に伴う偶発症は,理論上側孔が開いていないステントでは起こりうることであり,予防にはESTが有効との報告もあるが,比較試験はない.ETGBDの手技そのものにはESTは不要であり,ほとんどの報告では胆管結石がない場合はESTは行われていない.上述のLeeらは,ESTを付加しない場合ERCP後膵炎が有意に多く,また胆汁鬱滞による症状(胆管結石・胆管炎)が生じたが,ESTでステント逸脱が多かったため,ルーチンでのESTは不要であると主張している 88.Maekawaらは,胆汁鬱滞予防のためにはESTを付加するか,ステントに側孔を増設すべきだと主張している 83.Inoueらは側孔付きステントを用いた23例中1例,側孔なしステントを用いた10例中1例で胆管炎を発症し,側孔付きステントの可能性を示している.ESTや側孔付きステントが胆汁鬱滞による偶発症を低減する可能性はあるが,現時点では全例で積極的に行うべきとする根拠はなく,今後検証すべき課題と言える.

以上より,内瘻長期留置は胆嚢炎再発に関しては有効である可能性が高い.細径のステントにも関わらず胆管に対するプラスチックステントよりも良い理由としては,胆汁を胆嚢内に流入させず,結石嵌頓を予防し,ステント自体が閉塞しても周囲から胆汁が流れる“wick effect”で胆汁の流れを維持することと考えられている 20),61),74),88.しかし,ステントの本当の有用性を知るためにはステント関連の全有害事象をoutcomeとしてRCTで検証すべきである.現在のところRCTは行われていないが,胆石性胆嚢炎に対する内瘻維持(33例)とPTGBD抜去(29例)の長期予後を比較したretrospective study 20では,観察期間中央値16カ月で胆嚢炎再発率に関してはPTGBD抜去後(17%)に比し内瘻維持(0%)で有意に少なく,無再発生存期間も有意に良好という結果だったが,全胆道イベントではイベント発症率に有意差はなく(PTGBD抜去後24%,内瘻維持9%),無イベント生存期間も有意差を認めなかった.現時点で内瘻長期留置が全胆道イベントを減少させるか否かは不明だが,胆道イベントを発症しても多くの場合はステント交換で対処が可能であることから,長期留置が良いとする意見もある 20

(5)他のドレナージ法との比較

Itoiらはpropensity score matchingさせたPTGBD群とETGBD群を比較した多数例での多施設retrospective studyを報告しており,臨床的成功率・偶発症は両群で同等であったとしている 93.しかしこれは留置成功例を対象としたPP解析での比較であり,手技的成功率は考慮されていない.

Kediaらは内視鏡的胆嚢ドレナージ30例(ETGBD24例,EUS-GBD6例)とPTGBD43例をretrospectiveに比較しており,手技的成功率(100% vs 97.6%),臨床的成功率(ITT解析)(86.7% vs 97.6%)は同等だが,入院期間,臨床兆候改善までの期間,偶発症,治療回数,疼痛スコアは内視鏡的ドレナージですべて低値であったと報告している 34.またETGBDとPTGBDのサブグループ解析でも同様の結果であった.しかし,内視鏡的ドレナージはETGBDが第一選択で,不成功の場合にEUS-GBDを行ったとされているにも関わらず,ETGBDの手技的成功率も100%となっているなどデータに矛盾がある.

Khanらのmeta-analysisでは,内視鏡的胆嚢ドレナージ(ETGBDとEUS-GBDを含む)とPTGBDを比較しており,手技的成功率・臨床的成功率(PP解析)は両者同等で,偶発症は内視鏡的ドレナージで有意に少なかったとしている 36.またEUS-GBDはETGBDよりも手技的成功率が10%高く(93% vs 83%),臨床的成功率が4%高かった(97% vs 93%).プラスチックステントしか使えないETGBDと異なり,EUS-GBDは大口径のSEMSまたはLAMSの使用が中心であるため,臨床的成功率に差が出たと思われる.

以上を総括すると,ETGBDはPTGBD,EUS-GBDに比べ手技的成功率は低いが,留置後の臨床的効果は同等で,偶発症はPTGBDと同等か少なく,内瘻長期留置はPTGBD抜去よりも長期予後が良い可能性があると考えられる.

Ⅲ 経消化管的ドレナージ(EUS-GBD)

1)概論

コンベックス型EUSを用いて,十二指腸球部あるいは胃前庭部から胆嚢を穿刺し,ドレナージチューブを留置する方法である.2007年にBaronらが悪性胆道閉塞による胆嚢炎に対するpalliation目的に両端ピッグテール型プラスチックステントを用いた内瘻術を報告したのが始まりである 28.Baronらは既にこの時点で,悪性胆道閉塞に対するドレナージ目的としてのEUS-GBDや,瘻孔完成後に結石を除去する可能性などについて言及している.その後プラスチックステントによるcase reportが続き,2010年に8例のcase series 94が報告された.BTSとしてはLeeら 31,Kwanら 95が2007年に経鼻チューブによる外瘻術を報告,2012年にPTGBDとのRCT 29が報告され,PTGBDと同等の成績でかつ術後の疼痛が少なく,PTGBDに代わりうる方法であることを証明した.また,プラスチックステントと経鼻チューブの両者を用いた内外瘻も報告されている 95),96

プラスチックステント留置の前には,ステント径と同等あるいはそれ以上の瘻孔拡張が必要であり,そのため胆汁性腹膜炎のリスクがある.金属ステント(SEMSまたはLAMS)は,留置後にステントが拡張するため瘻孔を内側から圧迫して胆汁漏出を防ぎ,さらに口径が大きくドレナージ効率が良いというメリットがある 14.2011年のJangら 97によるSEMSを用いたEUS-GBDの初回報告以降,プラスチックステントの報告はなく,SEMSまたはLAMSの報告が相次いでいる.しかし金属ステントは胆汁漏出を避けるためにcoveredのものを用いるため,通常の胆管用のSEMSでは逸脱のリスクが問題となる.そのためflare 97)~99やfin 100をつけたSEMSや,SEMS内に両端ピッグテール型のステントを留置する方法 78),101),102が報告されている.さらに2012年のItoiら 103によるLAMSを用いたEUS-GBDの初回報告以降は,LAMSの報告が圧倒的に主流であり,そのほとんどがAXIOS(ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社)を用いたものである.AXIOSは留置に慣れが必要だが,消化管と胆嚢を強固に密着させる力を持ち胆汁性腹膜炎や逸脱のリスクが少なく,かつ大口径であるためドレナージ効率が良く,さらにステント内を通して内視鏡を挿入し胆嚢内で様々な内視鏡検査・治療が可能な理想的なステントである.直近では,デリバリーシステムの先端にelectrocautery tipを搭載し,穿刺・瘻孔拡張・ステント留置まで一度の穿刺で行えるAXIOS-EC(HOT AXIOS)が開発された.これはデバイス交換が不要なため胆汁性腹膜炎やガイドワイヤー逸脱のリスクを最低限にでき,また透視を使わずbedsideで施行可能というメリットもある 104),105

EUS-GBD後の結石除去に関しては,2010年にKamataらが初めて報告した 39.プラスチックステントによるEUS-GBD後に胆嚢炎再発した症例に対し,10mm径のcovered SEMSに交換し生食で還流したところ結石が排出された1例を報告している.LAMS登場後は,結石除去だけでなく,生検,特殊光観察,ポリペクトミーなどほとんどすべての内視鏡診断・治療が可能になった 40)~44),103),106)~108

2)適応

すべての胆嚢炎が適応になるが,基本的には(特にBTSでは)PTGBDの代替治療と考えられている.BTSとしては,経鼻チューブによる外瘻とPTGBDのRCT 29で非劣性が証明されたが,その後の追試はなく,短期間の留置であればPTGBDのデメリットもさほど問題とはならないため,通常は簡便なPTGBDが選択される.またこのRCTでは手術までの期間が5日間と瘻孔が完成していない時期での手術であり,瘻孔形成後,特に大きな瘻孔ができるLAMSがBTSとしてふさわしいかどうかは明らかではない 109.基本的にはBTSには外瘻,palliation目的には内瘻と考えられている 33.BTSとしてのEUS-GBDはPTGBD困難例が主な対象であるが,実際にはその場合にはETGBDを行う施設がほとんどであると思われる.

ETGBDの項で述べたように,palliationでは内瘻化のメリットがあることから内視鏡的ドレナージの良い適応である.内視鏡的ドレナージの中でも,EUS-GBDは当初はETGBD不成功例や胆管内SEMS留置後などETGBD不能症例に行うべきという主張が多かった 32),78),110が,報告例が増え,またLAMSの登場により,成功率が高く膵炎のないEUS-GBDを第一選択として行う方針も許容されてきている.その他のメリットとして,肝臓を経由しないため出血のリスクが少なく,出血傾向や抗血栓薬使用中の患者でもPTGBDより安全に施行でき 30),38,また肝表に腹水貯留がある場合でも可能 32であることが挙げられる.これらの特性はLAMSでさらに強調される.前述のAXIOS-ECでは,PT-INRが3以上や抗凝固薬使用中の患者でも偶発症なく留置できたという報告がある 111

ETGBD同様に,外瘻チューブ抜去のためのPTGBDからのconversionも報告されている 42),112),113が,胆嚢の緊満感がない一方で胆嚢壁が固く肥厚しているため,手技的には難しい 96

また最近では胆嚢炎に限らず,悪性胆道閉塞に対するドレナージとして,ERCPやEUS下胆管ドレナージ不能例での報告も散見される 99),114)~116

3)方法

手順は,①コンベックス型EUSスコープを用いて前庭部または球部から胆嚢を穿刺,②胆汁を吸引し培養に提出,③造影剤を注入し透視下に胆嚢を確認,④ガイドワイヤーを胆嚢内に挿入,④瘻孔拡張,⑦ステントまたは経鼻チューブ挿入,である.手技の詳細については拙稿を参照されたい 96.穿刺部位に関しては,球部から穿刺すると胆嚢頸部,前庭部から穿刺すると体部になることが多い 32),33.体部より頸部の方が胆嚢の動きが少なく,前庭部より球部の方が胆嚢に近いため,球部から胆嚢頸部を穿刺するのが胆汁性腹膜炎やステント逸脱のリスクが少なく第一選択 28),78),117),118である.しかしBTS目的の場合は,胆嚢管や総胆管周囲の癒着を避ける意味で体部穿刺の方が良い 31),96

4)治療成績,偶発症,長期予後(Table 47
Table 4 

急性胆嚢炎/症候性胆石症に対するEUS-GBD(外瘻)の成績.

Table 5 

急性胆嚢炎/症候性胆石症に対するEUS-GBD(PS)の成績.

Table 6 

急性胆嚢炎/症候性胆石症に対するEUS-GBD(SEMS)の成績.

Table 7 

急性胆嚢炎/症候性胆石症に対するEUS-GBD(LAMS)の成績.

(1)手技的・臨床的成功率

2016年のAnderloniらのreview 119(外瘻を除く166例)では,手技的成功率96%,臨床的成功率93%(ITT解析)と非常に良好である.ステント種類別の手技的/臨床的成功率はプラスチックステント100%/100%,SEMS 98.6%/94.4%,LAMS 91.5%/90.1%とLAMSでやや低い傾向であった.Khanらの10例以上の報告を対象とした最新のmeta-analysis(外瘻含む)では,手技的成功率93%,臨床的成功率97%(PP解析)であった 36

手技的不成功の理由は,結石充満のためガイドワイヤー挿入不能,手技中のガイドワイヤー逸脱,胆嚢壁肥厚のため拡張不能,ステント留置時のコントロールミス 120),121などである.AXIOSは理想的なステントだが留置技術の習得にはlearning curveがあり 122,完全胃内リリース 40,distal flangeの腹腔内リリース 109,proximal flangeの腹腔内リリース 112,proximal flangeのリリース不良 105などが報告されている.腹腔内リリースは胆汁性腹膜炎のリスクとなるが,ガイドワイヤーが確保されていれば,LAMS内にSEMSを追加留置することでリカバリー可能である 38),122.AXIOS-ECはガイドワイヤーを留置せず穿刺から留置まで一期的に行えるが,留置不成功の場合はリカバリー不能というリスクがあるため,よほど容易な症例でない限りは通常の19G針で穿刺し,ガイドワイヤー留置後にデリバリーシステムを挿入した方が安全である 105.10例以下のcase reportを除いたLAMS181例(全例AXIOS)のmeta-analysisでは,手技的成功率95%,臨床的成功率93%,偶発症17%と報告されている 123

(2)短期偶発症

前述のAnderloniらのreview 119では,偶発症は20/166(20%)であり,ステント別では,プラスチックステント18.2%,SEMS 12.3%,LAMS 9.9%とLAMSで低い傾向にあった.LAMSは留置技術には慣れが必要だが,一旦留置に成功すれば最も安全なステントと言えるだろう.Khanらのmeta-analysisでは偶発症は13%であった 36

偶発症には腹腔内気腫,胆汁性腹膜炎,ステント逸脱,出血などがあるが,胆汁性腹膜炎は外瘻とプラスチックステントのみで報告されている.LAMSはステント展開が困難な場合があり,胃穿孔で緊急手術になった例 105やdistal flangeの腹腔内リリースに伴う腹膜炎による死亡例も報告されている 37

(3)長期予後

外瘻抜去後の長期観察の報告はない.プラスチックステントの長期観察の報告は少ないが,8例のprospective studyでは中央値6カ月間観察し,胆嚢炎再発はないものの,逸脱を1例に認めたとしている 94.SEMSに関しては,Choiらは63例の長期予後を見たretrospective studyにおいて,中央値9カ月の観察期間で胆嚢炎再発を2/56(4%)(食物残渣によるステント閉塞,ステント断裂),無症候性のステント逸脱を4%に認め,留置後3年間の無イベント率は86%であり 98,抜去や定期的な交換はせず長期留置が望ましいと報告している.食物残渣によるSEMS閉塞や逸脱予防のために,プラスチックステントをSEMS内に留置する方法 32),78),102や,1カ月後にSEMSをプラスチックステントに交換する方法 124が報告されているが,いずれも少数例であり長期予後は不明である.SEMSでは胆石の完全除去は難しく,また胆嚢が萎縮するためプラスチックステントへの交換も難しく(成功率25%) 124,基本的には継続留置が望ましいようである.

LAMSに関してはどうだろうか.当初は長期留置の報告のみであったが,その後抜去に関する報告もされている.動物実験では,AXIOS留置後4-5週間で完全な瘻孔が形成され,安全に抜去可能であった 122),125.しかしWalterらの多施設30例のprospective studyでは,3カ月後に抜去を試みた17例中3例でtissue overgrowthにより消化管側のflangeが埋没(buried stentと呼ばれる)し,うち2例で抜去不能であった 122.同研究では,平均10カ月の観察期間でステント閉塞による胆嚢炎再発率は2/27(7%)と低く,palliation目的では抜去しないで良いだろうとしている.Dollhopfらの多施設75例のretrospective studyでは,平均7カ月の観察期間で胆嚢炎再発は4%,逸脱などのイベントを含めると8%であった 105.またIraniらの多施設45例のretrospective studyでは中央値7カ月の観察期間で再発率は7% 38であり,抜去のメリットが明らかでない以上は長期継続留置が良いとしている.LAMSを中心とした最新のmeta-analysisでも再発率は4%と低く 36,再発予防のためには長期留置で良いと思われる.しかしLAMS最大の長所は結石除去が可能なことであり,その点に焦点を当て長期予後を検討した研究もある.Itoiらは,留置2週間後にLAMSを通して胆嚢に内視鏡を挿入し結石除去を行い,ステントを安全に抜去できた1例を報告している 108.Geらは,LAMS留置1-2週間後に内視鏡的に結石除去を行いステントを抜去した7例中6例で抜去後24時間以内に瘻孔は完全閉鎖し,3-20カ月の経過観察では結石再発は見られなかったと報告している 43.Chanらは,LAMS留置1-3カ月後にルーチンで内視鏡的結石除去を行い,25例中22例(88%)で完全除去が可能で,LAMSを抜去したと報告している 44.彼らは,胆嚢を温存した結石除去については結石再発の可能性があるが,「経皮的胆嚢結石除去後10年間の結石再発は41%だが有症状は2%のみで,最終的に胆嚢摘出を必要としたのは7.5%であった」という既報があることから,LAMS長期留置の安全性が不明である以上,積極的に結石除去+ステント抜去とすべきと主張している 44.実際,AXIOSの長期留置にはburied stent 38),122),126や食物残渣の逆流 38),44),127などの問題点が指摘されている(前庭部からの穿刺で起きやすいと考えられている 44),122).

以上より,EUS-GBDによる内瘻は長期継続留置が基本だが,これまでにEUS-GBD後3年以上経過をみた報告は1編もなく,本当に長期留置が安全なのかは不明である.また,胆嚢炎急性期には手術不能と判断されても,その後状態が回復し手術可能になる症例もあることから,安易に長期留置とすべきではないという意見もある 127.LAMSに関しては今後完全結石除去後に抜去するという方向になっていく可能性があるが,buried stentを回避するためには,抜去は3カ月後以内が良いと思われる.さらに,このLAMS一時的留置による胆嚢結石除去は,手術不能胆嚢炎患者だけでなく,手術可能患者や症候性胆石症全般に対する根本的治療となる可能性を秘めているが,胆嚢腫大や周囲への癒着がない状況でのLAMS留置のエビデンスはほとんどなく,現時点では安易に施行すべきではない 44

5)他のドレナージ法との比較

前述のように,外瘻に関してはPTGBDとのRCTが1編ある.Jangらは,2012年に主にBTS目的でEUS-GBD(外瘻)30例とPTGBD 29例のRCTを報告し,手技的成功率(97% vs 97%),臨床的成功率(PP解析)(100% vs 96%),偶発症(7% vs 3%),手術時の腹腔鏡から開腹への移行率(9% vs 12%)は同等で,ドレナージ後の疼痛スコアは有意にEUS-GBDで低かったとしている 29

最近では,palliation目的でのEUS-GBDとPTGBDの長期予後を比較した報告が多い.基本的にEUS-GBDは長期継続留置であるが,PTGBDは抜去症例も含むため,長期予後に関しては再発率の比較ではなく,re-intervention率(tube抜去も1回と数える)で比較している.

TybergらはEUS-GBD42例(LAMS,SEMS,プラスチックステント含む)とPTGBD113例の多施設共同retrospective studyを報告している.手技的成功率(95% vs 99%),臨床的成功率(95% vs 86%),偶発症(21% vs 21%),再入院率(14% vs 24%)は同等だが,胆嚢炎再発やtube逸脱等に対するre-interventionの回数(10% vs 24%)がEUS-GBDで有意に少なかったと報告している.

Choiらは悪性胆嚢管閉塞による胆嚢炎患者に対するEUS-GBD(SEMS)とPTGBDのretrospective studyを行い,手技的・臨床的成功率は同等で,EUS-GBDで入院期間が短く,re-interventionが少なく,全コストが低かったと報告している 128

Iraniらは,EUS-GBD(LAMSのみ)45例とPTGBD45例の多施設retrospective studyを報告している.手技的成功率(98% vs 100%),臨床的成功率(96% vs 91%)は同等,偶発症(11% vs 32%)は有意差はないもののEUS-GBD群で低い傾向にあり,疼痛スコア・入院期間・一人当たりのre-interventionの平均回数(0.2 vs 2.5)は有意にEUS-GBD群で低かったと報告している.

TeohらのEUS-GBD59例と年齢,性,ASAスコアをmatchさせたPTGBD59例の多施設retrospective studyでは,手技的成功率(97% vs 100%),臨床的成功率(90% vs 95%),30日以内の偶発症率(29% vs 17%)は同等であったが,全体での偶発症率(32% vs 75%),予期せぬ再入院率(7% vs 71%)は有意にEUS-GBDで低かったとされている 37

以上より,EUS-GBDはPTGBDと比べ成功率は同等,偶発症は同等か少なく,長期予後は良好と考えられる.現在,手術不能胆嚢炎患者に対するAXIOS-ECとPTGBDのRCTが進行中である(ClinicalTrials.gov identifier : NCT02212717).2年間での偶発症,re-intervention,死亡をprimary outcomeとしており,長期予後を見据えた胆嚢炎の治療戦略の指針となると期待されている.

Ⅳ 終わりに

胆嚢炎に対する内視鏡治療について,消化器内科医として知っておくべき最新のエビデンスを紹介した.手術不能患者に対する治療法としては長らくPTGBDが主役の座にあり,内視鏡治療はETGBDの成功率の低さからあくまで脇役に過ぎなかった.しかしEUS-GBDの登場後10年にして,手術不能患者に対するストラテジーは世界的に大きく変わりつつある.にも関わらず,わが国では一部の施設を除きほとんど行われていないのが現状である.本稿が,ETGBD,EUS-GBDの特性を理解し,低侵襲で効果の高い内視鏡治療を実現する一助となれば望外の喜びである.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
© 2018 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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