日本消化器内視鏡学会雑誌
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資料
大腸カプセル内視鏡検査における進行大腸癌の診断能に関する前向き検討
太田 弓子山田 篤生小林 由佳新倉 量太新宝 隆行成田 明子吉田 俊太郎鈴木 伸三渡部 宏嗣平田 喜裕石原 聡一郎須並 英二渡邉 聡明小池 和彦
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電子付録

2018 年 60 巻 6 号 p. 1240-1248

詳細
要旨

【背景と目的】大腸カプセル内視鏡は大腸を検索する安全で有効な検査法である.しかしながら,大腸カプセル内視鏡検査における進行大腸癌の診断感度については十分に評価されていない.そのため本研究では,大腸カプセル内視鏡検査における進行大腸癌の診断感度を明らかとすることを目的とした.

【方法】通常大腸内視鏡検査で進行大腸癌と診断された患者に大腸カプセル内視鏡検査を行った.主要評価項目はPer-patient,Per-lesion解析での大腸カプセル内視鏡検査における進行大腸癌の診断感度とした.副次評価項目はper-lesion解析での大腸カプセル内視鏡検査における6mm以上と10mm以上,それぞれの大腸ポリープの診断感度と大腸カプセル内視鏡検査の安全性とした.

【結果】進行大腸癌20人,21病変のうち,17人17病変を大腸カプセル内視鏡検査で診断した.大腸カプセル内視鏡検査における進行大腸癌の診断感度はper-patient解析で85%(95%信頼区間62-97%),per-lesion解析で81%(95%信頼区間58-95%)であった.カプセル内視鏡が作動中に病変まで到達していた症例は,全例で進行大腸癌が診断された.進行大腸癌を診断できない要因として,大腸カプセル内視鏡検査の未完遂が有意な因子であった.重篤な検査の有害事象は認めなかった.

【結論】検査が未完遂である場合に大腸カプセル内視鏡検査における進行大腸癌の診断能は低い.大腸カプセル内視鏡検査による進行大腸癌の診断能の向上には,検査の完遂率を上げるための改良が必要である.

Ⅰ はじめに

大腸癌は世界の癌死亡の主要な原因の一つである 1.スクリーニング検査により大腸癌の死亡率が有意に減少したと報告されており,大腸癌に対するスクリーニング検査が広く行われるようになっている 2)~6

大腸カプセル内視鏡検査は,患者の鎮静や大腸への送気が不要で放射線曝露なく全大腸を観察することができ,痛みなく最小限の侵襲で行える新しい内視鏡技術である 7.大腸癌に対するスクリーニング検査として有用な検査の選択肢であると考えられている.第2世代の大腸カプセル内視鏡検査において6mm以上,また10mm以上の大腸ポリープに対する診断感度はそれぞれ84〜94%,88〜92%と報告されている 8)~11

臨床現場において,進行大腸癌は大腸ポリープより重要な病変であるが,大腸カプセル内視鏡検査における進行大腸癌の診断能を検討した研究は少なく,少数例の検討では,進行大腸癌の診断感度は75〜100%と報告されている 9),12)~14.さらに,大腸カプセル内視鏡検査で大腸癌が診断できなかった要因について検討を行っている研究はない.大腸癌を診断することを目的に大腸カプセル内視鏡検査を行うのであれば,大腸カプセル内視鏡検査の進行大腸癌に対する診断感度を検証することが重要である.

そこでわれわれは,通常の大腸内視鏡検査で診断された進行大腸癌の患者に対して大腸カプセル内視鏡検査を行い,その診断能を検証するためにパイロット研究を行った.

Ⅱ 方  法

研究デザイン

東京大学医学部附属病院において,通常の大腸内視鏡検査で診断された進行大腸癌の患者に対して順に大腸カプセル内視鏡検査を施行した.研究プロトコールはヘルシンキ宣言の要綱を満たし,倫理委員会の承認を得た.また本研究はUMIN臨床試験登録システム(UMIN-CTR)に登録した(UMIN 000012678).

試験参加者

2013年12月から2015年12月までの2年間に診断された進行大腸癌患者を本研究の参加候補とした.進行大腸癌は通常の大腸内視鏡検査において肉眼的に深達度が筋層以深に浸潤していると診断された大腸癌とした.またすべての病変は病理組織学的に腺癌と診断されたものとした.病変の肉眼型は通常大腸内視鏡検査で肉眼的にType 1〜4に分類した 15.20歳以上の患者を対象とし,内視鏡が通過しないような高度な大腸狭窄がある患者,あるいは過去に虫垂切除術以外の大腸切除術を受けたことがある患者,あるいは進行大腸癌に対する化学療法や大腸ステント留置術などの治療歴がある患者は除外した.また,潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患患者やペースメーカーなどの電子機器の植え込み後の患者,嚥下機能障害がある患者,心臓や肝臓,腎臓,肺に重篤な疾患を有する患者,大腸カプセル内視鏡検査で使用する薬剤へのアレルギーを有する患者,妊婦や授乳婦,さらに本研究への参加に不適切であるとわれわれが判断した患者をそれぞれ除外した.本研究に参加の前に文書で説明し同意を得た.

大腸カプセル内視鏡検査の方法と評価

大腸カプセル内視鏡検査はPillCam®COLON2(Covidien社,ダブリン,アイルランド)を使用した 16.大腸の前処置や大腸カプセル内視鏡検査の方法はTable S1(電子付録):出典Digestive Endoscopy 2017;29に記載の通りである.大腸の前処置は既報と同様の方法で行い 7)~9),17),18,検査前日は低残渣食とし,カプセルを内服する前にポリエチレングリコール溶液(PEG-ELS)を3L服用した.カプセルが小腸に到達したことを確認した後,最初のブースターとして等張性クエン酸マグネシウム溶液50g/900mlを内服し,最初のブースターを服用して2時間たってもカプセルが肛門から排泄されない場合に,2番目のブースターとしてPEG-ELS 1Lを内服してもらった.さらに2時間たってもカプセルの排泄がみられない場合には,3番目のブースターとして等張性クエン酸マグネシウム溶液50g/900mlを服用し,その後2時間してもカプセルの排泄がみられない場合に,ビサコジル坐薬10mgを挿肛した.作動中にカプセルが肛門から排泄された時か,排泄されずにカプセルの電池寿命で作動停止した時に,身体に装着したセンサーアレイとレコーダー機器を取り外した.カプセル作動中に肛門から排泄された場合に大腸カプセル内視鏡検査完遂と定義した.一連の検査は,入院で行い,鎮静や腸管への送気は行っていない.

本研究で大腸カプセル内視鏡検査の読影を行った消化器内科医3人は,解析の質を担保するため事前にハンズオンセミナーやe-learning(ELCCE) 19を受講した.3人のうち2人は,本研究に参加する以前に700件以上の小腸カプセル内視鏡検査の読影経験があり,残りの1人はカプセル内視鏡検査の読影経験がなかった.大腸カプセル内視鏡検査の読影は,通常の大腸内視鏡検査の詳細な検査所見を知らない状態で,それぞれの医師が独立して行い,RAPIDソフトウェア(version 8.0,コヴィディエン社)を用いて,毎秒8フレームのスピードで読影を行った.それぞれが独立して読影した後,不一致所見については3人で協議した上で最終の読影結果とした.

評価項目は,大腸カプセル内視鏡検査での進行大腸癌や大腸ポリープの診断の有無,大腸の洗浄度,大腸カプセル内視鏡検査の完遂の有無とした.それぞれの病変は,大きさ,存在部位,肉眼型を評価した.病変の大きさはRAPIDソフトウェアに搭載されている病変サイズ推定ツールを使用して計測した 13.病変の存在部位は,カプセル内視鏡が捉えた盲腸や肝彎曲,脾彎曲,直腸といったランドマークとRAPIDソフトウェア上に表示されるカプセルの軌跡に基づいて推定した 13.大腸は盲腸から上行結腸まで,横行結腸,下行結腸からS状結腸,直腸に分けた.また5mm以下の小さなポリープ,憩室,炎症や出血といった所見も記録したが,今回は解析対象としなかった.大腸カプセル内視鏡検査で推定した大きさと通常の大腸内視鏡検査で診断した大きさとの誤差が±50%である場合かつ大腸カプセル内視鏡検査で診断した存在部位と通常の大腸内視鏡検査で診断した部位が同一または隣接している場合に大腸カプセル内視鏡検査と通常の大腸内視鏡検査で同一病変とみなした 20

大腸洗浄度は近位大腸 (横行結腸より口側)と,遠位大腸(下行結腸より肛門側)に分け,それぞれの洗浄度を既報のバリデートされた4ポイントスケール(excellent,good,fair,poor) 7で評価した.本研究ではexcellentとgoodを十分な洗浄度,fairとpoorを不十分な洗浄度とした.

有害事象

有害事象は本研究を行っている間に生じた事象をすべて記録した.カプセルの滞留は,カプセルを内服後2週間たっても肛門から排泄されないものと定義した 21

評価項目

本研究の主要評価項目は,per-patient及びper-lesion解析における,通常の大腸内視鏡検査で診断された進行大腸癌に対する大腸カプセル内視鏡検査の診断感度とした.副次評価項目は,per-lesion解析における6mm以上と10mm以上の大腸ポリープに対する大腸カプセル内視鏡検査の診断感度,大腸カプセル内視鏡検査の完遂率,大腸の洗浄度,そして大腸カプセル内視鏡検査中あるいは検査後に生じた有害事象とした.

統計学的解析法

大腸カプセル内視鏡検査の診断感度は,大腸カプセル内視鏡検査を施行した患者あるいは病変のうち,大腸カプセル内視鏡検査で大腸癌と診断した患者あるいは病変の割合として計算した.また大腸カプセル内視鏡検査の診断感度については,検査の完遂の有無と大腸の洗浄度別でサブグループ解析を行った.読影した3名の消化器内科医の病変診断の一致率をFleiss’s kappa coefficientで算出し,kappa>0.8以上を良好な一致でとした.またp<0.05を統計学的有意とした.すべての統計解析はソフトウェアR inter-rater reliability package(ver. 3.2.2;R Development Core Team:http://www.r-project)を使用して行った.

Ⅲ 結  果

研究対象者

通常の大腸内視鏡検査で診断された進行大腸癌患者52人が本研究の参加者の候補となった.このうち,本研究への参加を拒否した13人,全身状態不良であった11人,大腸癌による高度な大腸狭窄があった7人,そして検査施行直前に同意を撤回した1人,計32人を除外した.最終的に20人の患者が本研究への参加に同意し,前向きに大腸カプセル内視鏡検査を施行した(Figure 1).

Figure 1 

本研究の流れ.

高度な大腸狭窄は大腸内視鏡が通過しない狭窄と定義した.

Table 1に20人の患者背景を示した.1人の患者が下行結腸とS状結腸それぞれに進行大腸癌を有していたため,本研究の解析対象は20人,21病変となった.男性が18人(90%),女性が2人(10%),年齢の中央値は70.5歳(範囲53〜81歳)であった.進行大腸癌の内視鏡的肉眼型はType 2が19病変(90%),Type 1が2病変であった.病変の存在部位は,盲腸から上行結腸に4病変(19%),横行結腸に3病変(14%),下行結腸からS状結腸に11病変(52%),直腸に3病変(14%)であった.通常の大腸内視鏡検査で診断した病変の大きさは中央値25mm(範囲10〜60mm)であった.通常の大腸内視鏡検査を施行してから大腸カプセル内視鏡検査施行までの期間は中央値19日(範囲2〜42日)であった.

Table 1 

患者背景(n=20).

大腸カプセル内視鏡検査の結果

Table S2(電子付録):出典Digestive Endoscopy 2017;29に大腸カプセル内視鏡検査の結果を示した.カプセルの大腸通過時間と全消化管通過時間の中央値はそれぞれ209分,412分であった.大腸の洗浄度が十分であった割合は近位大腸で65%,遠位大腸で58%であった.大腸カプセル内視鏡検査の完遂は15人で達成され,完遂率は75%であった.5症例(25%)はカプセルの内服から4-6時間以内にカプセルが排泄され,10症例(50%)では6-10時間以内に排泄された.残りの5症例(25%)は,カプセルの電池寿命前にカプセルが排泄されなかった.

大腸カプセル内視鏡検査における進行大腸癌の診断感度

20人21病変のうち,17人17病変が大腸カプセル内視鏡検査で診断された(Figure 2).一方,3人4病変については大腸カプセル内視鏡検査で診断できなかった.大腸カプセル内視鏡検査で診断できた17人のうち15人(88%)は,大腸カプセル内視鏡検査が完遂(カプセルの電池が切れる前にカプセルの排泄があった)した症例であった.一方,診断できなかった3人は,全例とも大腸カプセル内視鏡検査が完遂していなかった.大腸カプセル内視鏡検査で診断できなかった進行大腸癌4病変はすべて,下行結腸からS状結腸までの遠位大腸にある病変であった.また,通常の大腸内視鏡検査による大きさはいずれも25mm以上の病変であった.内視鏡的肉眼型は3病変はType 2,残りの1病変はType 1であった.大腸カプセル内視鏡検査が完遂していない症例について,病変の詳細とカプセルの最終到達部位をTable 2にまとめた.カプセルの最終到達部位はいずれの症例も,病変より口側であった.

Figure 2 

進行大腸癌の大腸カプセル内視鏡像 (A,B) と通常の大腸内視鏡像(C,D)の比較.

症例1:盲腸にある25mm大のType 2病変 (A,C).

症例2:横行結腸にある15mm大のType 2病変 (B,D).

Table 2 

大腸カプセル内視鏡検査の未完遂症例における進行大腸癌の詳細とカプセルの最終到達部位.

Table 3に大腸カプセル内視鏡検査における進行大腸癌の診断感度を示した.進行大腸癌の診断感度はPer-patient解析で85%(95%信頼区間62-97%)であり,per-lesion解析で81%(95%信頼区間 58-95%)であった.進行大腸癌の部位別診断感度は,盲腸から上行結腸で100%,横行結腸で100%,下行結腸からS状結腸で64%,直腸で100%であった.大腸カプセル内視鏡検査の完遂の有無と大腸の洗浄度別にサブグループ解析をおこなった.検査が完遂している症例では進行大腸癌の診断感度は100%であるのに対して未完遂の症例では40%であり,検査が完遂した症例において診断感度が有意に高い(p=0.009).一方,大腸の洗浄度別の解析では洗浄度が十分な症例では進行大腸癌の診断感度88%,不十分な症例では83%(p=1.00)と有意差は認めなかった.Table 4は,大腸カプセル内視鏡検査で診断できた病変と診断できなかった病変の比較である.大腸カプセル内視鏡検査において進行大腸癌が診断できない唯一の要因は,検査の未完遂であった(p=0.003).

Table 3 

大腸カプセル内視鏡検査における進行大腸癌の診断感度.

Table 4 

大腸カプセル内視鏡検査で診断できた病変と診断できなかった病変の比較.

3名の消化器内科医のうち,2名は大腸カプセル内視鏡検査で17病変すべてを診断したが,残りの1名は小腸カプセル内視鏡の読影経験のある医師であったが,上行結腸にある15mm大のType 2病変を診断できなかった.3名の消化器内科医の大腸カプセル内視鏡検査における進行大腸癌の診断の一致率はkappa値0.90と良好な一致であった.

大腸カプセル内視鏡検査における大腸ポリープの診断感度

解析対象20人において,通常の大腸内視鏡検査で6mm以上および10mm以上の大腸ポリープはそれぞれ36病変,14病変が診断された.一方,大腸カプセル内視鏡検査では6mm以上の大腸ポリープを26病変,10mm以上の大腸ポリープ13病変を診断した.Per-lesion解析における大腸カプセル内視鏡検査の大腸ポリープの診断感度は6mm以上のポリープで72%(95%信頼区間55-86%),10mm以上のポリープで93%(95%信頼区間66-100%)であった.大腸カプセル内視鏡検査で診断できなかった10mm以上のポリープ1病変は直腸にあり,カプセルの電池寿命前にカプセルが直腸まで到達していなかった.3名の消化器内科医の大腸カプセル内視鏡検査における大腸ポリープの診断の一致率は,6mm以上のポリープ,10mm以上のポリープでkappa値がそれぞれ0.87,1.0であり良好な一致であった.

有害事象

本研究で重篤な有害事象は発生しなかった.大腸カプセル内視鏡検査の前処置中に軽度の悪心を1人に認め,腸管洗浄液を十分服用できなかった.また検査後に原因不明であるが一過性の血小板減少を1人に認めた.いずれの有害事象も,治療は要さずに回復した.カプセルの滞留は認めなかった.

Ⅳ 考  察

本研究により,大腸カプセル内視鏡検査における進行大腸癌の診断感度がper-patient解析で85%(95%信頼区間62-97%),per-lesion解析で81%(95%信頼区間 58-95%)であることが明らかとなった.既報では,大腸カプセル内視鏡検査における大腸癌の診断感度は75-100%と報告されている 9),12)~14.しかし,いずれの報告も大腸癌の症例数が5人未満と非常に少数例での検討であった.それに対し本研究では,進行大腸癌20人での検討を行っており,大腸カプセル内視鏡検査における進行大腸癌の診断感度の正確な評価ができた.

本研究では,大腸カプセル内視鏡検査が未完遂であった3人4病変の進行大腸癌の診断ができなかった.4病変はすべて遠位大腸(下行結腸からS状結腸まで)に存在していた.これらの症例では,カプセルの最終到達部位は病変を越えてなく,病変を診断できなかった原因は,カプセルが病変を通過したのにもかかわらず撮像できなかったのではなく,カプセルが病変まで到達できていなかったためと考えられた.一方,大腸カプセル内視鏡検査が完遂した15人はすべての進行大腸癌を診断できた.本研究により,大腸カプセル内視鏡検査を完遂することが進行大腸癌,特に遠位大腸にある進行大腸癌の診断において重要であることが示された.そのため,大腸カプセル内視鏡検査の完遂率を改善させることが,進行大腸癌の診断感度を上げることにつながるかもしれない.大腸カプセル内視鏡検査が完遂するかどうかは,大腸の前処置やブースター 18),22,カプセル内視鏡の作動時間 23が影響している可能性がある.リン酸ナトリウム溶液がよくブースターとして使用されているが 7)~9),17),18,有害事象として急性リン酸腎症が報告されている 24.本邦ではリン酸ナトリウム溶液が保険承認されておらず,本研究ではその代替として等張性クエン酸マグネシウム製剤をブースターとして使用した 25.しかし,本研究の大腸カプセル内視鏡検査の完遂率は低かった.最近,ガストログラフィン® 26やSUPREP® 13をブースターとして使用している研究で高い完遂率が報告されており,さらなる検討が必要である.

大腸カプセル内視鏡検査の読影を行った3人の消化器内科医のうち1人は,研究前に小腸のカプセル内視鏡検査の読影歴がなかった.しかし,3人の読影結果の一致率は良好であった.このことから,小腸カプセル内視鏡検査の読影経験の有無に関わらず,ハンズオンセミナーあるいはELCCE 19によるe-learningを受講した消化器科医師であれば大腸カプセル内視鏡検査の読影は可能であることが示唆された.

本研究にはいくつかの研究の限界がある.第一に,本研究への参加を拒否した症例が多く症例数が少なかったことである.すでに通常の大腸内視鏡検査で進行大腸癌と診断されている患者を対象にしているため,本研究に参加する利点がなく参加を拒否した症例が多くなかったかもしれない.第二に,進行大腸癌と診断されている患者を対象にしているため特異度を算出することができなかった.また,本研究の結果はスクリーニング対象には外挿することができない.第三に,本研究では大腸カプセル内視鏡検査の読影医は通常の大腸内視鏡検査の詳細な検査結果を知らされていないが,進行大腸癌症例であることは知っており,大腸カプセル内視鏡検査の診断感度に影響したかもしれない.第四に,癌による高度狭窄症例を除外しているため,大腸カプセル内視鏡検査の安全性が過小評価されていた可能性がある.臨床では,大腸狭窄の程度を大腸カプセル内視鏡検査前に事前に予想することは困難である.大腸に高度狭窄があることを疑わせる症状を訴える患者には,大腸カプセル内視鏡検査は施行しない方がいいだろう.

結論:検査が未完遂である場合に,大腸カプセル内視鏡検査における進行大腸癌の診断能は低い.大腸カプセル内視鏡検査における進行大腸癌の診断能向上のためには,ブースターを含めた大腸カプセル内視鏡検査法の改良により検査の完遂率を上げることが必要である.

謝辞

すべての患者および共同研究者に謝意を示す.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:本研究では,コビディエンジャパン株式会社よりカプセル内視鏡を提供され,研究資金は文部科学省科学研究費補助金(No.26460962)を使用した.これらの団体による研究デザイン,プロトコール作成,データ収集・解析,論文作成および発表への介入はない.本論文の全共著者に表明するべき利益相反はない.

文 献
 
© 2018 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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